なんでMリーガーは鳴かなすぎ、天鳳民は鳴きすぎなの?

久しぶりの新規note投稿です。約半年ぶりでしょうか。

今回はタイトルにあるような、自分が前々から疑問に思っていたことについての考察をします。

色々な考え方があるはずなので、賛同も自由、反論も自由です。あくまでこういう考え方があるんだな、という参考程度に止めて下さい。

それでは行きます。


1:Mリーガー vs 天鳳民 の副露率データ


ここでは、Mリーグ・天鳳共に副露率の定義として「副露した局数÷全局数」を採用し、以下その前提で進めて行きます。

例えば

東南戦 流局・連荘無しで

東1局:2副露
東3局:1副露
南2局:1副露
南4局:2副露

であったプレイヤーの副露率は、4局/8局=50%となります。(計6副露/8局=75% とはしません。)


まずは以下のデータをご覧ください。これはMリーグにおける、2018&2019二年間通算の、レギュラーシーズンの全選手副露データになります。


※( 算出の基礎となるデータは、「Mリーグ成績速報(非公式)(@mleague_results)」さんより提供。許可済。)


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参考1 Mリーグ レギュラーシーズン2年間通算データ


次に、天鳳の各段位における副露率のデータです。(こちらは公式に公開されています。右から4列目です。)


画像2

参考2 天鳳各種データ


この二つを比較すると、副露率に非常に差があることが分かります。まず平均で見ると、Mリーガ―は2年間通算で20.9%天鳳プレイヤー(七段以上)は34.9%と、14%も開きがあります。また天鳳はどの段位でも副露率35%付近ある他方、Mリーグで一番鳴いている園田選手の副露率でも34.2%と、やっと天鳳の平均くらいです。天鳳に関しては東風戦のデータも取り入れているため若干高めに出ていますが、それを考慮しても10%以上の無視できない差があることが分かります

一体これらの違いはどこから生じるのか?以下私見を述べて行きます。


2:背景考察


麻雀は複雑なゲームなので、これが直接的な原因だ!と簡潔に結論付けるのは容易ではありません。したがって今回は、理由として考えられるものを幾つか挙げてみました。タイトルの横にマークがありますが、「〇」はかなり影響を及ぼしていそう、「△」は少し関係するかな、くらいの基準でつけてます。これら一つ一つについて検証して行きます。


2-1:麻雀観の違い(〇)


ここでいう麻雀観とは、各々がこれまでの経験則から判断した打牌の集合のことを指します。麻雀はある打牌が正解ということを証明することは不可能なので、各々がこれまで得た知識や実戦経験から判断し、最適と考えた打牌をしています。例えばMリーガーは、競技麻雀で長年戦ってきた経験が染みついて、面前で高く美しく仕上げるのが最強である、という麻雀観を持っている選手は多いです。他方天鳳は比較的選手人口が若く、主戦場はフリー雀荘等の赤アリ速攻麻雀で、ネマタ本や堀内本の影響を受けた鳴き多用のデジタル雀士の層が厚いです。どちらが正解不正解とかではなく、各々が打牌の際に参考にする自分の経験則が、育ってきた環境や普段打つフィールドの違いによりMリーガーと天鳳プレイヤーでは全く異なっていて、それが鳴き判断にも影響しているという考え方です。例えば、長年一発裏赤無しルールの最前線で活躍してきた雀士にとってみれば、鳴いて赤を集めたり手を安くしてかわし手を多用することに過剰に違和感を覚えるだろうし、最近のデジタル麻雀の戦術本に傾倒し、普段から赤ありスピード麻雀を打っている雀士は、重く構えすぎてアガリ逃しになることを過剰に損と考えるでしょう。何が一番得かを証明出来ない以上、人間は経験則に頼るしかないため、経験則から生じるバイアスの影響を強く受けます。そしてこのバイアスが、Mリーグでは適切な副露率よりも低く押し下げてしまっている、逆に天鳳では押し上げてしまっている可能性もあります。


2-2:多数派の優越(〇)


基本的に面前派と副露派が3対1に割れた卓になった場合、少数派が割を食う展開になりやすいです。例えば面前派が一人ぼっちになると、速度についていけずアガリ逃しのジリ貧になりやすく、逆に副露派が一人ぼっちになると、安手で重いリーチと勝負させられる局面が増えたり大物手からの捲られのケースが増えたりします。以上のような後々不利になる展開を避けるため、面前派が鳴いて速度をつけに来る、副露派が鳴きを我慢して面前立直を強く見る、という調整は十分考えられるでしょう。2-1で挙げたように、Mリーグでは最初の段階で面前多用が得と考えている選手が多いので、鳴き派劣勢からのスタートになります。すると鳴き派もマイノリティの不利益を被らないよう後々のことを考えて鳴かない寄りになる局面が増え、全体的に副露率が抑えられる現象が働いている可能性があります。


2-3:ルールの違い(〇)


Mリーグルールは素点制かつ、トップに多くのポイントが入るのが特徴です。つまり無理をしてでもトップを狙いに行く場合が増えます。そのため面前で手を作り、リーチをして一発・裏等の抽選を受けて高打点をアガりに行く局面が多くなります。一方天鳳ルールはラスを回避するのが最優先になるため、他家に高い手をアガらせないよう速度重視の手組みになる傾向が強いです。

最も顕著なのはオーラスでしょう。Mリーグでは順位ウマがあるため、オーラスは何着に居ようが極端な点差で無ければ基本的に上の着順を狙うように打ちます。そのため高打点の手組み・一発裏の抽選を受けるよう、より鳴かない傾向が強まります。一方天鳳ルールではオーラス程よく鳴くように感じます。Mリーグなら連対を狙うけれど、天鳳ならラス回避優先で3着確定の安い鳴きをするMリーグなら無理してトップを目指すけれど、天鳳なら2着でも十分なので妥協して鳴いて早上がりを目指す、等鳴き判断の違いが顕著に出る局面です。他にも、天鳳はトップアガり止め可なのでトップ目が鳴いて積極的に流しに行くケースが増える、逆に自分の着順を守るため敢えてトップ目にアガらせるようアシストするケースが増える、等も挙げられるでしょう。Mリーグは着順取り天鳳は着順維持のゲームであるため打点と速度に対する意識が異なり、副露率に差が生まれている、ということが言えます。


2-4:絞りの文化(〇)


以前、多井プロのyoutubeに鈴木たろうプロがゲスト出演して対談した際、「Mリーグは過剰に牌を絞る傾向がある」と話しているのを聞きました。事実、Mリーガ―はドラを切ることに抵抗がある選手が多く、全体的に字牌を抱える傾向にあります。鳴かない選手ほど、同時に鳴かせないも意識しているような気がします。

画像3
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これは私が役牌バックのドラポンをしたとある対局です。これがMリーグだった場合、同卓する選手によってはドラ9sは取り敢えずチートイやら何やらに使えるかもしれないしトップ目だから最後まで切らない、もし切ってポンされた場合、何だか分からないラス目の親に役をつけさせたくないから役牌は全絞り、となる可能性もあります。一方天鳳では不確定な物は読んでも分からない、序盤なんだし取り敢えず自分の手を進めるべき、という風潮が強く、ドラも役牌も早切りされる傾向が高まります。どちらが正解とかではなく、あくまで考えの違いです。たまたまこの局面がそうだった、いやいやMリーガーでも9sや中切る選手は居るよ、という意見もあると思いますが、それでも全体的にドラと役牌はMリーグでは重めに扱われると感じます。そしてドラと役牌は鳴きのキー牌であり、絞る人が多ければ多いほど鳴きの発生頻度も低下するため、それらが場に打たれやすいフィールドかどうか、は副露率に直接影響を及ぼしていると言えるでしょう。


2-5:条件戦の有無(△)


Mリーグはレギュラーシーズン終盤のような、時期によっては条件戦の様相を見せることがあります。この時特定のチームに絞りを考えたり、放銃しないよう堅く打つため、全体的に場が重めになっているように感じました。特にここ2シーズン共に、鳴きを多用するドリブンズ・パイレーツの両チームがボーダー上に居り、絞られる等して自由に打たせてもらえない立場でした。他方天鳳は、不特定多数との長期ベースで考えるため条件とかそんなの関係ありません。(昇段戦・降段戦で僅かに生じるかもですが) 以上の事柄も、副露率に僅かに影響するのかなあと思いました。


2-6:リア麻・ネト麻特有の仕様(△)


天鳳はご丁寧に鳴ける牌を全て機械が判定し、ボタンをポップさせてくれます。そのため準備してなくても「あ、これそういえば鳴けるし鳴いとくか」のアドリブ鳴きをしたことがある人も少なくは無いのではないでしょうか。ネット麻雀は、システム面のアシストがあるせいで鳴きの敷居が低くなっているようにも感じます。

他方Mリーグの牌を触る麻雀では、コシや理牌で鳴きの際に思わぬ情報漏れが出る可能性があります。推測ですが、それらを拾うことに長けていて(O井さんとか)、防御の為にあまり下手な鳴きを控えるようにしている選手も居るかもしれません。以上のような仕様の違いも、僅かに影響していると感じます。


2-7:エンタメとしての矜持(△)


人間は不確定なものに心を揺さぶられる傾向にあります。だから麻雀も鳴いて形も打点も確定しているよりは、リーチして一発でバチコンツモったり裏がモロ乗りした方が盛り上がりやすいです。もちろん勝敗最優先だと思いますが、Mリーガーの中にはこうした魅せる麻雀の意識が強いせいで面前に傾いている選手も多いのではないでしょうか。事実、魅せる麻雀をどのチームよりも意識している「雷電の麻雀は面白いんです」でお馴染みの雷電の3人は、圧倒的に副露率が低いですよね。

ただ、麻雀オタクからしてみると園田さんの「何でそれ鳴くの!?」みたいな麻雀も見てて面白いので、そんなに面前に拘らなくてもいいんじゃないかなあというのが私の感想です。



3:まとめ ー「神の副露率」について


いかがだったでしょうか。

これからMリーグを観戦する際には、結果云々だけでなく、どうして鳴き(スルー)なのかという選手の副露判断に注目しても面白いかもしれません。

最後に、これらの事実を踏まえた神の副露率についての考察をします。

「神の副露率」とは、全ての局面の鳴く/鳴かないの判断の正解を考えた時、それぞれについて全て正解を選んだ場合の副露率を指します。その都度一番得になる鳴き判断を知っている麻雀の神様が居た場合、何%に落ち着くのかという概念です。以下が私の意見になります。


・ルールと面子傾向を固定した場合の「神の副露率」は存在する可能性が高い。

・ルールと面子傾向が片方でも違う二つのフィールドを比較した場合、両者の「神の副露率」は違って当然で、同一視するのは不毛。

・Mリーグに限って言うと、天鳳と比べれば「神の副露率」は低いと推測される。但しそれでも、選手が2-1のような経験則のバイアスにかかって、僅かに鳴くべき牌をスルーしている傾向にはある。


じゃあ実際Mリーグの神の副露率は何%なんだよ??という話について。

これに関しては数値検証が出来ないため、あくまで私の個人の感覚ですが、ルールと対戦相手の性質が天鳳と全く異なる以上、天鳳プレイヤーの体感からするとかなり低めになるように思えます。それでも鳴かなすぎでは?という局面も多いので、以上を考慮すると


Mリーグ平均副露率:Pm (=21%)
鳳凰卓平均副露率:Pt (=32~33% 東風戦の影響を考慮)

Mリーグ最適副露率(神の副露率):Pm*

とおいた場合に

Pm < < Pm* < < < < Pt

くらいの関係となり、大体24%~25%くらいに落ち着くかな?というのが私個人の感覚です。当然「鳴き・スルーどちらも正解」のような局面も多数存在するため、一点というよりある範囲内に収まる、という結論になります。


ここまで長々と読んで下さり、ありがとうございました。あくまで私の考えなので、こういう理由もあるのでは?とか色々ありましたら教えて下さい。

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