天鳳至上主義

「天鳳」というのは、オンライン対戦麻雀サイトの名称である。
ネット上で気軽に麻雀の対人戦を楽しめて、勝敗によって段位やレートが上下する、麻雀対戦だけに特化しており操作性は極めてシンプルで、麻雀ガチ勢からの評判が高い。高段位者には有名プロや強豪アマチュアも多く、天鳳で良い成績を残すことは実力評価にも繋がる風潮がある。

自分は麻雀始めたての頃、周りに麻雀をする相手が居ず、フリー雀荘に入る勇気も無かったため、この「天鳳」で麻雀を覚えた。おそらく対戦数はリアルで牌を握った回数より圧倒的に多い。だから自分の中で麻雀と言ったら天鳳で、僕私仲間のセット麻雀では強いんですよ~とか、フリー雀荘では負け知らずですよ~、というのはあんまり響かず、天鳳○段です!と言われるとおお~っと感心してしまう歪んだ価値観が根付いている。

これは麻雀を始めた頃からだけど、麻雀の強い/弱いというのを何らかの方法で定量的に表したい、という欲求が物凄くあって、それは最高位戦に入会してから更に強くなった。
病気すぎて打った麻雀の成績は全部つけてるし、暇さえあれば統計データやシミュレーション結果を眺めている、何なら自分でシミュレーションしたりもする。

あの人はレベル100の打ち手で、この人はレベル80の打ち手で~というのを知らないと気が済まない。でないと自分の雀力が成長してるのか、目標をどこに定めれば良いのか分からなくなってしまうからだ。

天鳳はネット麻雀故に打数が稼ぎやすく、段位やレートその他の数値的指標が充実しているため、そんな欲求と非常に相性が良い。特に安定段位(※)という指標は天鳳発祥のものであり、実力評価の一つの方法として未だ根強く使われている。詳しくは難しい話になるので省くが、この安定段位というのは打数が多いほど信頼度の高いものとされる。麻雀は長く打てば打つほど、トータルで見た時に本来の実力に近い成績が出るからだ。
つまり天鳳は何千…何万…と言った膨大な半荘数を打ち、その長期的な成績を競い合うゲームなのである。

※安定段位:現在の成績から割り出した、天鳳に於いて理論上何段相当の実力があるかを表す指標。

そして、その天鳳の調子がずっとよろしくない。メインの垢は七段140/2800ptで、いつ鳳凰卓(※)で打つ権利が無くなってもおかしくないし、ちょっとイヤになってサブ垢で特上卓(※)打ち出したんだけどなんかこれも勝てない。

※特上卓・鳳凰卓:天鳳で打てる卓の名称。天鳳は段位やレートによって卓分けが行われている。

だからここ最近、例えば何か他の麻雀で勝ったとしても、うーん俺は天鳳で安定段位○○のクソ雑魚だしな……結局短期だし1000半荘やんないと分かんないよな……とか思うようになってあんま嬉しくなくなってしまった。
麻雀は1000半荘単位で打たないと何も分からない、という強い信念を持ち続けて、いざ天鳳を1000半荘単位で打って自分のダメさをハッキリと突き付けられた結果、麻雀そのものが嫌になり始めてたのだ。

しかし例えばリーグ戦やタイトル戦を1000半荘出来る訳では無いし、結局そこでは勝った者が全てである。この前の最高位戦Classic本選とかは自分的にかなり上出来の内容で、あらゆる逆風に耐えて5回戦ラス無しで抜け最終戦を打つ権利を獲得。トップ条件まで持って行けた。しかし最終戦、東発にあっさり8000オールを引かれる。一発裏無しルールではほぼコールドゲーム、そのまま敗退となった。

ここでもし1000半荘打てたら……安定段位が……って言い出すのは全くもって何の意味も無い。天鳳は1000半荘単位で安定段位を競うゲームで、最高位戦Classicは5半荘(6半荘)打って通過順位に入るゲーム、というただそれだけの事実がそこにある。当然後者の方が分散、包み隠さずに言ってしまえば幸不幸の要素が大きくなる。自分は周りより強かったかもしれないし、弱かったかもしれない。勝ってたとして、天鳳でボコボコに負けてるという事実は別に何の意味も無いし、勝ったことを堂々と誇れば良い。しかしこの前のClassic本選は負けた。それ以上でも、それ以下でもない。

強い奴が勝利条件を満たす確率が大きい、というのは短期も長期も全く同じ。だから出来ることはひたすら勉強して通過確率を0.1%でも上げることだけ。実力を検証したいからまず1000半荘単位で打ってから~なんて時間は全く無いし、現状ヘタクソな腕のまま自分の拘りで何千時間を無駄打ちに充てるより、座学や密度の濃い半荘を打つことに充てた方が絶対自分のためになる。これは鬼打ちが正義の天鳳でも言えるはず。

そもそも人間の一生程度では麻雀の上振れ下振れを克服することは出来ない、だから何千何万半荘打とうが死ぬまで自分が誰より強かったか弱かったかなんか判明しない競技なのである。ハッキリ言って、麻雀の強さを数字で表すなんて無理な話なのである。

成績を気にしすぎて一喜一憂することには何の意味も無く、ただ知識を積み重ねて0.0000…1%ずつでも日々勝率を上げる、あとは良い結果出るよう神にお祈りする。人間が出来るのはここまで。

そもそも麻雀って楽しいんだから、友達と、同期と、公式戦で、フリーで、天鳳で…あらゆる場で打つ1半荘1半荘を良い思い出にする気持ちで打たないと損だよね、数千単位で並んでる乱数の一つなんて思い出したら麻雀面白くない。強くなるのも大事だけど、まずは自分が好きで楽しくてやってるというのを忘れないようにしないとな~と最近思いました。

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