レフリーはハタチ、選手はフェア
レフリーは大学生だった。
釜石シーウェイブスと三菱重工相模原ダイナボアーズとの公式戦、
レフリーは古瀬健樹(ふるせかつき)さん。
早稲田大学の2年生で、先月20歳になったばかり。
これがどんだけ破格かというと、
選手たちは全員レフリーの古瀬さんより年上、
古瀬さんの年齢と同じだけラグビーのキャリアがある選手たちもいるし、
ニュージーランド代表の選手もいれば、
スーパーリーグという世界トップレベルのリーグでプレーしてきた選手たちもいる。
わたしなら、ビビりまくる。
しかも、古瀬さんのプレイヤーとしてのキャリアは中学生のときだけ。
高校に入ったら授業がぎっしり詰まっていて、
そのときにプレイヤーからレフリーへと道を変えている。
プレイヤーとしてのキャリアはゼロ。
トップチーム、世界レベルの選手たちがプレイするゲームでのレフリー。
わたしなら、ビビりまくる。
古瀬さんは、すでに高校生のときからレフリーとしての評価が高く、
ラグビー日本協会の若手育成キャンプにも参加し、
17歳で全国大会決勝の前座の東西対抗試合でレフリーを勤め、
19歳で近鉄と栗田工業の試合のレフリーも勤めている。
すばらしい素質があり、将来を嘱望されている超若手レフリーなのだ、
ていうのをwebで調べるとわかった。
ところで。
ラグビーはレフリーで、野球はアンパイア。
レスリング、ボクシング、サッカー、バスケットボールもレフリーで、
バレーボール、テニス、バトミントン、卓球もアンパイア。
Refereeの語源は「reter」(言及する、委ねる)
Umpireはフランス語由来で、「un equal」(「同等じゃない立場の人)
http://mijitan.com/referee-umpire
https://eigogen.com/word/umpire/
選手たちから判断を委ねられた人がレフリーで、
選手たちよりちょっと上の人がアンパイア。
プレイする選手たちといっしょに動いてジャッジするのがレフリーで、
一箇所で動かないのがアンパイア。
時間で区切られた試合をするスポーツがレフリーで、
一定の回数のなかでの点の取り合いスポーツがアンパイア、
という説もある。
http://mijitan.com/referee-umpire
それはそれとして。
ラグビーのレフリーの特徴は、
選手たちとコミュニケーションをとりながら、ゲームを進めていくこと。
ラグビーはルールが細かく複雑で、
もちろん選手たちもルールは覚えているんだけど、
ちょっと早めに走り出したり、手を使ってはいけない場面で手を使ったりしたくなる。
「したくなる」選手をちゃんと見てて、
「オフサイドだよ!下がって!」
と叫んだり、
「大丈夫!オッケー!」
と、反則ではないからプレーを続けて、という。
反則をしてしまった選手に、なぜ反則だったのかを説明したり、
両チームのキャプテンを呼び出して、フェアなゲームをするように注意をしたりもする。
ルールで決められていることを守らせるための、コミュニケーション。
その一方で、あまりにルールに厳しくするとラグビーのエンターテインメント性がなくなるので、
スレスレなんだけど反則寄り、というプレーは、
そこでホイッスルを吹いてゲームを止めてしまうより続けてしまえ!
という判断をするのが上手なレフリング。
(古瀬さんもスローフォワードにかなり甘かった)
ほか、スクラムなんてルールにないかけひきのかたまり。
プロップとフッカーにしかわからないような、やりとりをしている。
実際、スクラムが落ちたときなんて、どっちが落としたか、
本人同士にしかわからないようなときでも、
自分の主観でジャッジしないといけない。
それがきっとできていた20歳のレフリーは、
どえらくすごいな〜! と思った。
けど、選手たちはもっとジェントルマンだったのではないのかな?
ビジネスの世界ではどうだろうか。
キャリア10年15年、有名大学出身者たちが、
プロジェクトで新入社員のジャッジやアイディアを尊重するだろうか。
プレイヤーたちがジェントルマンであり、
エルダーシップ(eldership 経験者のお作法)を持っていなければ、
ゲームが成り立たないのがラグビーというスポーツ。
そうなんだよな〜、ハタチのレフリーもすばらしいけど、
選手たちももっとほめられていいんじゃないのか、
ということを、
エライ点差をつけられて負けているシーウェイブスのゲームを観ながら思っていたりした。
しかし! 負けてもフェアな試合だった。