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恋の歌集を戦意高揚に使うトンチンカン

『英語で味わう万葉集』を読み始めた。

著者のピーター・J・マクミランさんはアイルランドの出身の日本文学研究者。『百人一首』や『伊勢物語』などを英訳して、「令和」が万葉集由来だということで、万葉集に興味を持った。

英訳がすごい、らしい。
だけどそれはちょっと置いておいて、
万葉集について、「へ〜〜」と思うことがそこかしこに書いてあった。
(まだ読んでる途中だけど)

万葉集は原文ではぜんぶ漢字で書いてある。当て字、いわゆる「万葉仮名」。
なぜかというと、ひらがなとカタカナができる前だったから。
だから、ホントはなんて書いてあるか、わからない。
だから、研究が続いている。
最初は951(天暦5)年、二番目の勅撰和歌集『後勅和歌集』の選者たちが、
天皇の命を受けて解読し始めた。

それ以来、ずっと研究されてきて、
その研究の成果が爆発的に広がったのが、江戸時代。
貨幣経済が浸透して出版文化が生まれて、
印刷技術が発達して、本が売れるようになってからのこと。

明治政府は、国民統合の道具として『万葉集』をつかった。
『古今和歌集』や『新古今和歌集』などの貴族的歌人の歌を集めたものではなく、
「天皇から庶民までのすべての人々の和歌を収めた、素朴な、ありのままの日本人の心を伝える歌集」
という事実の一面をフレームアップして利用した。

そして、第二次大戦のときには、国威発揚、戦意高揚のために使われた。
大伴家持の長歌「海ゆかば」である。この歌にメロディを付けて軍歌にし、
『万葉集』を忠君愛国、滅私奉公のイメージと結びつけた。

トンチンカンだ。
実際のところ、『万葉集』の多数を占めるのは恋の歌(相聞歌)だ、
というところがおもしろい。

とりあえず、「はじめに」と「結びにかえて」で万葉集についての基礎知識をさーっとおさらいして、本文に入ってみると、けっこうこれはまた発見がある。

たとえば……(つづく)