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食べることは生きること

「乳しぼり体験とトラクターで大草原周遊コース」
ということで、弟子屈の渡辺体験牧場にいってきた。

トラクターに客車が3連でつながっていて、
そこに乗って牧場を周遊する。

あ〜、広いなあ〜、北海道だな〜。
と思っていたら、規模的にはそうでもないらしい。
乳牛60頭ほどを放牧。

「だからまだ、うちはいいほうなんです」
跡取り息子のシュウヘイさんはいう。

牛も従業員も少ない家族経営。
これが大規模だと……?

「いま飼料代が上がっているんです」
円安とウクライナ戦争で、
輸入する牛のエサの値段が上がっている。
放牧しているから、牧場の草を食べさせながら、
人工飼料もつかっている。

「しかも、乳量制限がかかっているから、
出荷する量も限られているんです」
新型コロナで学校給食が減った。
小学校が休校になったり、給食からお弁当に代わったり、
牛乳の消費量が減るから、供給量も減らさないといけない。

「ということは、収入の上限が決まっていて、
支出がどんどん上がっていくわけです」

1頭から20~30リットルの乳をしぼる。
1日で1500リットルほどとれて、
3000リットルになったら出荷する。

トラクターに乗って大草原を周遊したあとは、
乳しぼり体験。

牛舎でやるとばかり思っていたら、
ちゃんと体験用の施設が用意されていた。

削蹄用の鉄の枠にはめられた「シロ」(この牛の名前)。
社長のワタナベさんの話を聞きながら、
当たり前のことに気がつく。

牛も妊娠しないとお乳を出せない。
ヒトと同じ。
赤ちゃんを育てるために、乳を生み出す。

ということは……。
また当たり前のことに気がつく。

本来なら牛の赤ちゃんが飲まなきゃいけないものを、
わたしたちが飲んでしまっているのだ。
ああ、申し訳ない。

牛は生まれて18ヶ月後に最初の人工授精が行われ、
1回の妊娠・出産で300日近くお乳を出し続け、
出産後40日ぐらいでまた人工授精し、
またお乳を出して、
5~6年でその役目を終えて、肉になる。

赤ちゃんの命の源を取り上げて飲み、
その身体も食べてしまう。

ああ業が深いなあ、と思う一方、
家畜はそれが役割なのだからこれでいいのだ、とも思い直す。
家畜はペットではない。

だからこそ、幸せな生き方、過ごし方をさせなければいけない、
という「アニマルウェルフェア」が重要になってくる。
直訳すれば、動物福祉。
ウシやブタやニワトリや、それらの生命をもらって、私たちは生きている。
わたしたちが幸せであるならば、
家畜たちも幸せであるように。
という意味の「アニマルウェルフェア」。

5年しか生かさない生命をもらいながら、
90年生きようとする私たち。

お乳をしぼりながら、そんなことを考えていた。

http://animalwelfare.jp/info/whatis_aw/

thanks to 渡辺周平さん、渡辺体験牧場