見出し画像

灯油を買いに行ってニヤニヤしてるけっこうあやしいオトコ

石油ストーブをがんがん焚いてる。
今日はマイナス2℃から始まって、
日中は4℃までいくらしい。
ここのところ毎日、ブラスマイナスの境目あたりを行ったり来たりしている気温。

わたしにしたら寒いんだけど、釜石市民にしたら寒いのかどうなのか。
銭湯「鶴の湯」の番台のおばちゃんは
「去年は暖かかった」
というから、今年は普通に寒いんだろう。
10年近く住んでる友人は、
「だいたいこれがピークの寒さ」
ということは、これ以上寒くはならないが、
例年より寒さが長く続く、とも捉えられる。

初めてストーブを買った。
東京にいたころは、床暖房があったので、
暖かくはなかったけど、寒くもなかった。
仕事中はひざ掛けぐらいで大丈夫だった。

雪が降るほどになると、毛布を羽織った。
指先が出る手袋をして、ひざ掛けと毛布と、
あとは風呂を追い焚きして入っていた。

エアコンで部屋を暖めるというのは、
電気をものすごく消費するわりには、それほど効果もなく、
すごく罪悪感に似たものを感じたので、
エアコンはあまり使わなかった。
とはいえ、大学の教室ではエアコンつけてるから、
ただ自分のフトコロ事情だけなのかもしれない。
(風呂と床暖房はガスだった)

石油ストーブにするかガスストーブにするか、
それともエアコンにするか。
部屋についていたエアコンが最新型なので、
熱効率がすごくいいらしい。

だから、10月の終わりごろからエアコンを使い始めて、
地元ネイティブの友だちhamaはエアコンじゃそのうち絶対にムリになるから
石油ストーブかファンヒーター買えといっていたので、
あれこれネットで見ていて、
トヨトミのレインボーというストーブがキレイでよさそうだったので、
11月には買っておいたけど、箱を開けずにそのままにしていた。

それでこの寒さだから、ついに使うことにした。

ホームセンターで灯油用のポリタンク買って、
ガソリンスタンドに灯油を買いに行った。

灯油も買うのは初めて。
だけど、売ったことはあった。
実家がガソリンスタンドだったから。

ガソリンスタンドは30日と31日は忙しかった。
給油と洗車で、そこそこ広い敷地はクルマでいっぱいになった。
マシンでやればいいのに、クルマを手で洗う人がたくさんいた。
ホースでボディに水をかけ、洗剤をつけたブラシでタイヤを洗い、
雑巾で丁寧に水気を拭き取る。
わざわざ拭き取らなくてもエンジンかけて走っていれば、
水滴なんて吹き飛んでしまうのに、
クルマをまるでかわいがっているように手を動かしていた。

ガソリンスタンドの敷地の端っこに灯油の売り場があって、
30日と31日は、そこでわたしと兄と妹が灯油番をしていた。
接客からお金のやり取りまで、完全に任されていた。
灯油売りは、暮れの子どもたちの重要な役割だった。

近所のオトナたちが、クルマかチャリかネコ(一輪押し車)かで買いに来て、
チャリはなぜかポリタンクじゃなくて灯油缶。
荷台に乗っけたまま入れろ、というパターンが多かった。

差し出されたポリタンクに18リットル、きっちりと入れ、
フタをして、お金をもらって、おつりを上げて、
「ありがとうございました」と頭を下げる。
「ありがとね」
ねぎらいと感謝の言葉をかけられるのが、
子どもながらに誇らしかった。

だから、寒くても灯油当番はキライではなかった。
けど、トラックも洗車に来て、泥をたくさん落としていくので、
あとからその泥を掃除しなきゃいけない。
だから、トラックが入ってくるとすごくイヤだった。

トラックなんてこの世からなくなればいいのに、
と恨んでいたけど、
トラックをたくさん使っている会社が傾くと、
実家のガソリンスタンドも傾いて、倒れてしまった。

望み通り、目の前のトラックはなくなったけど、
育ててくれたガソリンスタンドもなくなった。

釜石に来て、ポリタンクに灯油を入れながら、
寒いんだけど、小さいころのことを思い出したりして、
なんかむしょーにうれしくなっていた。