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オバカウイルスATCV-1/南山宏・ちょっと不思議な話

「ムー」誌上で最長の連載「ちょっと不思議な話」をウェブでもご紹介。今回は2015年3月号、第371回目の内容です。

文=南山宏

オバカウィルス

 人の脳にとりついて頭を悪くする〝オバカウィルス〟を発見?
 米ジョンズ・ホプキンズ大医学部の感染症専門家ロバート・ヨルケン教授率いるチームが、昨年11月、〈米科学アカデミー紀要〉第111巻45号に研究発表した。
 オバカウィルスの正式名はATCV-1。人間の脳内にいること自体は、数年前に解剖学者が突き止めたが、当時はそれが脳の活動にどう影響するのかも、生体組織への侵入が保菌者の死亡以前か以後なのかもわからなかった。
 だが、ヨルケン教授チームは別の研究の途中で偶然、このATCV-1が一部の健康人の喉に存在することを発見。データベースを探して、もともとは湖沼や河川に生えている緑藻類がよく冒される病原菌ということを突き止めた。
 そこでこのウィルスに感染した緑藻と感染していない緑藻を、2グループのマウスにそれぞれ食べさせ、一連のテストにかけたところ、感染マウスのほうが非感染マウスより、迷路の脱出時間が10パーセントほど余計にかかり、新らしい物体を探し出すのに20パーセントほど余分な時間を要した。
 これは感染マウスの注意力と記憶力が、非感染マウスのそれより劣化したことを意味するという。
 さらに人間を対象に調べると、健康な被験者92人中、43パーセントの40人がATCV-1の保菌者と判明。保菌者・非保菌者の両グループを、視覚処理における精度と速度、注意力の持続時間を計測するテストにかけたところ、保菌者は非保菌者より平均点数が7~9点下回り、認識機能が約10パーセント低下したことがわかった。
 ただし、この脳の働きの劣化には、性別・年収・学歴・人種・誕生地・喫煙習慣との関連性がまったく見られないことも判明した。
 現段階では、オバカウィルスが人間の脳機能を鈍らせる詳細なメカニズムは不明だが、動物の大脳中で記憶や理解や位置認識を司る海馬の遺伝子の活動を変化させることまでは解明できたそうだ。


怪しげな飲み方

 インド・ムンバイの市警察は、2013年9月半ば、レストラン経営者ヴィジャヴ・パティル氏を〝いかにも怪しげな飲み方〟でお茶を飲んでいたとして逮捕した。
 パティル氏の容疑は、犯罪をいまにも犯そうとする疑いがある者はあらかじめ予防拘禁できる、という法令に基づくものだった。
 だが、ムンバイ高等裁判所のガウタム・パーテル判事は、次のように言明して、市警察の当事者に本件を取り下げるよう命じた。
「〝いかにも怪しげな〟飲み方というのがいかなる飲み方を指すのか、当方には理解不能である」


初心者の幸運(ビギナーズ・ラック)

 ひと山当てようと悪あがきして一生を棒に振る人がいれば、宝探しを始めたとたん、文字通りに宝の山を掘り当てる人もいる。
〈デイリーメール〉紙1昨年6月6日付によれば、英ハートフォードシャー州バーカムステッドのウェズリー・キャリントン氏は、初めて買った金属探知器で、初めて宝探しを開始してわずか20分後、3度目の金属探知音が鳴り、深さ約20センチの地中から、最初の古代ローマ金貨が見つかったのだ。
 後日判明するが、イギリス南部がローマ帝国の属州ブリタニアだった1600年前の純金貨幣で、表面にラテン文字と武人像が刻まれ、〝ソリドゥス金貨〟と総称されるピッカピカの逸品だった。
 以後も同じローマ金貨が次から次に出てきたが、55個見つけたところで日が暮れてしまったので、やむなく掘るのをやめたという。
 キャリントン氏の話では、You Tubeで宝探しの動画を見て興味を覚え、最寄りの販売店で初心者用の安い金属探知器を購入すると、最寄りの森林地に出かけた。
 氏が店主に発見物を見せるや大騒ぎになり、専門家が現場に急行して、さらに104個発見した。
 現段階でも総価値は最低10万ポンド(約1830万円)以上あるが、実際にはキャリントン氏は法にのっとって、森林地を所有する地主と折半しなければならない。


あほ(ナッツ)リターン

 2013年4月7日早朝、ニュージーランドのオークランドを飛び立ち、オーストラリアのシドニーに向かっていたカンタス航空機が、出発1時間半後、あわててオークランド空港まで引き返した。
 機内の頭上ロッカーの中に不審物が発見され、「すわ時限爆弾?」と乗客乗員がパニックに陥ったためにとられた緊急処置だった。
 だが、ニュージーランド警察の捜査は〝大山鳴動、ネズミ1匹〟的な情けない結果に終わった。
〝不審物〟のように見えたのは、機体構造物の部材の一部が露出しているだけだったのである。


リクガメ生還

 ブラジル・リオデジャネイロのレオネル・アルメイダ宅の改築工事中に、開けっ放しの玄関ドアからペットの雌ガメ、マヌエラが逃げ出したのは1982年のこと。
 マヌエラを可愛がっていた子供たちはむろん、家族総出で近所中を探し回ったものの、マヌエラはとうとう見つからなかった。
 31年後の1月、一家の主人レオネルが他界したあと、成人した息子レアンドロと娘レニータは、父親が生前、古い家電機器をかき集めて保管し、家族の出入りを禁じて鍵をかけていた部屋を、初めてこじ開けて保管物を片づけた。
 だが、おんぼろレコードプレイヤーが入った紙箱を、レアンドロがゴミ捨て場に置いて帰ろうとすると、隣人から声をかけられた。
「あんた、カメまでいっしょに捨てるつもりなのかい?」
 レニータは大喜びで説明する。
「機械好きな父は、古い電化製品を何でも拾ってきたわ。壊れたテレビでも部品をほかのテレビの修繕に使えるからってね。でも、私たちだって足を踏み入れなかったのに、マヌエラはどうやってあそこに入り込んだのかしら? 何を食べて30年以上も生きられたのかしら? ほんと信じられない!」
 地元の獣医師ジェファーソン・ピレス氏によれば、マヌエラのようなアカアシリクガメは、食べなくても3年は生きられるという。
 また家電製品の布や紙の部分を囓ったり、床板に巣くうシロアリを餌にした可能性もあるそうだ。


(月刊ムー2015年3月号掲載)

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