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WEEK2-4 誰でもわかる税金 ユアユニで生涯、学びの道を!MUP3学期

こんにちは「師子吼する」です。前回の講座「WEEK2-3 誰でも分わかる税金 学びの道を!MUP3学期」の続きです。

■現金主義と発生主義

簿記の記録方法が「発生主義」と「現金主義」と別れていると述べたが、現金主義は金銭の動きだけを記録するので発生主義に比べてとても簡単であるが、一定の期間ごとの正確な損益を把握することが難しい。青色申告で10万円の控除を受ける場合は、基本的に発生主義の簡易簿記で記録するが、一昨年の事業所得と不動産所得の合計が300万円以下で、「現金主義による所得計算の特例を受けることの届出書」を基本的に適用を受けようとする年の3月15日までに届け出るという条件を満たせば、帳簿ではもっとも簡単な現金主義での簡易簿記で10万円の控除を受けることができる。だが、55万円・65万円の控除を受けるつもりであれば、発生主義の複式簿記しか認められていない。事業を大きくするつもりで最初から現金主義だと実際に大きくなったときに面倒なことになるため、事業が小さいうちから発生主義で帳簿に記録した方がよいといわれる。もちろん10万円の控除は簡易簿記ではなく複式簿記でもかまわない。ただ複雑な発生主義で複式簿記を行って青色申告をしても事業の収入が小さいと、現金主義の簡易簿記と特別控除のメリットがほとんど変わらない場合もある。しかし余裕があるのなら、あえて簿記の勉強をして、簡易簿記でなく、最初から複式簿記で帳簿を記録したほうがよい。その方が会計の知識がつき、経営にも役立つ。ただ現金主義の複式簿記だと、中途半端で行う意味がないので最初から発生主義の複式簿記で行うべきである。複式簿記については最近では様々な会計ソフトが出てきていて、とくに弥生・freee・マネーフォワードの3社が有名どころである。会計ソストは簿記の知識がなくても、複式簿記を作成することもできるものもあるが、簿記の知識があれば会計ソフトを使いこなすことができて、経営の役にも立つ。
白色申告では現金主義が認められておらず、発生主義の簡易簿記しかない。白色申告には青色申告のような特別控除や損失申告のような優遇がない代わりに、2013年までの前々年分または前年分の所得の合計が300万円を超えない場合、帳簿への記録と保管は義務づけられていなかった。これが白色申告の一番のメリットだった。ところが2014年1月に発生主義の簡易簿記で帳簿への記録と5年の保管が義務づけられ、青色申告の10万円の控除と手間が変わらなくなった。そのうえ優遇もないため、現在では白色申告を選ぶメリットはないともいわれる。

これら申告の決まりをまとめると
●青色申告 
控除10万円:発生主義・簡易簿記か複式簿記
あるいは現金主義・簡易簿記(条件付)
控除55万円:発生主義・複式簿記
控除65万円:発生主義・複式簿記・e-tax利用・電子帳簿保存

●白色申告:発生主義:簡易簿記

となる。

■青色申告の「青色」

青色申告はなぜ「青色」なのか、1945年、第二次世界大戦に敗北した日本では戦災被害が甚大で、生産設備は破壊され、国土が荒廃し凶作にも見舞われ食糧などの物資も不足する。しかも敗戦後は消費財需要が拡大し、1946年から1948年にかけて物価が急激に上昇するインフレも起こり、日本経済はさらに大混乱となり、徴税機構も機能不全に陥った。当時、アメリカ陸軍のダグラス・マッカーサー元帥が指揮を執る連合国軍による日本占領機関GHQ
(General Headquarters of the Supreme Commander for the Allied Powers:連合国軍最高司令官総司令部)は、抜本的な税制改革が日本経済を安定させる方策の1つと考え、卓越した税の専門家でありコロンビア大学の教授であったカール・シャウプ博士を団長とする日本税制施設団を結成し、1949年5月にアメリカから呼び寄せた。使節団は約4か月かけて日本各地を精力的に視察。あらゆる階層の日本人たちから税についての聞き取り調査も行った。シャウプ博士は日本人は色にこだわると考え、きちんと帳簿を記録して申告し納税する人、適当に帳簿を記録して申告し納税する人とを分けるために、確定申告書も色分けすれば便利ではないかと思いついていたようで、視察中に博士がある日本人から「日本人の多くは青色の印象がよい。」と聞いたことが青色申告書ができたきっかけとなったといわれる。
こうして使節団は1949年8月と1950年9月に「シャウプ使節団日本税制報告書」という報告書に調査結果をまとめて公表した。この報告書は「シャウプ勧告」とも呼ばれ、そのほとんどが1950年度の日本税制に採用された。その後、多くの改定が行われ報告書の基本路線が薄くはなったが、現在までの日本税制の基礎となっている。

■会社員の給与所得控除

会社から給料だけをもらう会社員の場合、「給与収入」と「給与所得」とう言葉があり似ているが意味が違う、給与収入は給与や賞与の支給額のことである。住宅手当などの課税される手当、賞与を現金ではなく自社製品でもらうような現物給与も含む。会社から見舞金など課税されない手当もあるが、これは「給与収入」には入らない、課税されない手当を給与収入に含めたものは「総支給額」というが、後で説明する。なおここで説明している「総支給額」「給与収入」「給与所得」「課税所得」という言葉はすべて1年間の収入を元にしたものである。

給与所得控除とは所得税の計算時に、給与収入から引ける控除であり、給与のある人しか認められない。個人事業主で事業所得のある人は収入から必要経費を引くことができる。給与をもらう会社員は必要経費などないように思えるが、仕事用のスーツや靴、筆記用具、営業のために身だしなみを整えるお金は自己負担だろう。また会社員にまで必要経費の申告を強いれば、会社も税務署も事務処理が膨大になってしまう。なので会社員も収入を得るための必要経費として、一定の金額を給与所得控除として設けて収入から差し引けるよう、公平にしたのである。年度によって給与収入に対する控除率に若干変わる場合もあるが2022年現在では給与所得控除は以下で計算する。

●給与収入額                       ●給与所得控除額      
162万5000円以下    :55万円
162万5001円〜180万円  :収入金額×40%-10万円
180万1円〜360万円           :収入金額×30%+8万円
360万1円〜660万円           :収入金額×20%+44万円
660万1円〜850万円           :収入金額×10%+110万円
850万1円 〜                        :195万円(上限)

引用:国税庁 No.1410 給与所得控除

こうして給与収入から給与所得控除を引いたものが「給与所得」となる。「特定支出控除」というものも引く場合があるが、後で説明する。
給与収入が660万円未満の場合、上記の計算でわかるのは給与所得控除額のおおよその金額である。660万円未満の場合で、正確な金額は、国税庁の給与等の収入金額が660万円未満の場合には、以下の表にかかわらず、所得税法別表第五(年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表)(e-Govへリンク)から給与収入に対応した正確な給与所得を計算できる。

出典:国税庁「令和 年分 給与所得の源泉徴収票

源泉徴収という言葉を聞いたことがあると思うが、これは給与収入からあらかじめ毎月、概算の税金や保険料を天引きし、会社が従業員の代わりに納税する仕組みである。
年末調整では本人給与所得控除を計算したり、記入したりすることはない。給与所得控除は、会社が支払った給与や賞与の額をもとに計算して、上記のような源泉徴収票、反映する仕組みで、源泉徴収票には「給与所得控除後の金額」が記載される。あと「給与所得控除」と年末調整で手続する基礎控除や生命保険料控除などの「所得控除」は名前は似ているが別物である。
源泉徴収は概算の納税である。そのため、前にも述べたが、税務署はその年の所得額が確定した時点で、会社が計算した給与所得控除と申請された所得控除も踏まえて再計算し、正しい税額を決める。その際、正しい金額とこれまで概算で徴取した金額を比較し、従業員が払い過ぎた分は還付で会社を通して1月に支払われる12月分の給料に足され、不足の場合は天引きされるのが年末調整である。会社は年末調整の計算が完了したら、給与所得控除・所得控除が反映された源泉徴収票を従業員に発行する。

この続きは「WEEK2-5 誰でもわかる税金 ユアユニで生涯、学びの道を!MUP3学期」で解説します。


お読みいただき、ありがとうございました。

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