好きな本の話/papa told me

榛野なな恵先生の大大ロングセラー。
(連載開始が1979年だそう…信じられん…)
漫画も小説も大好きなは母の本棚のコレクションのひとつだった。
私にとっては情操教育に組み込まれていると言っても過言ではないくらい、だいすきで何度も読んだ。

大人びた思考を持つ小学生の女の子的場知世と、その父親である作家の的場信吉。この2人の父子家庭が、自由で創造的な家庭を目指す日々の光景を描いた基本的に1話完結スタイルの物語である。
(Wikipedia参照)

大人顔負けの鋭さを持つ知世ちゃんと、そんな知世ちゃんに時に振り回されながらも暖かく包み込む「おとーさん」の物語だ。基本的に1話完結、波乱万丈のストーリーではないが、ひとつひとつの物語が素朴で暖かく、缶入りのクッキーアソートのような作品。

知世ちゃんのファッションがどれもものすごく可愛い。(気になったらぜひpapa told meで画像検索してほしい…)

この作品のすごい所は、作中の価値観に古さを感じるどころか、却って今一番大切なものを教えてくれるように感じることだ。
価値観がアップデートされて、ある意味タブーが増えたような時代の変化を経ても、褪せることなく一層輝きを増しているのは、ちょっと、かなり凄い。

父子家庭だから躾が行き届かないと難癖付けられた信吉氏が、静かに返した次の言葉がこの物語の本質なんだと思う。

「確かに我々には大きく欠けた部分がありますが、それゆえに見えてくるものもあるんですよ。
この世界がどんな形に作られているのか、自分がどこに置かれて生きているのか。」
episode14 ワイルドストロベリー

信吉氏の妹の百合子ちゃんや、編集者の北原さんといった、ひとりで生きる女性たち。
機能不全の家庭で逃げ場のないまま育った上級生の乾くん。
両親が離婚した浅野さん。
子役として周囲の期待に押しつぶされる少女。
いじめの傍観者となったことを死ぬほど悔いている少年。
時代の変化に迎合せずに「古臭い」と非難される老人。

登場する人物は、老若男女全方位、みんなどこかに傷を抱えている。その誰しもに寄り添い肯定するから、どうしたってこの作品は優しい。
生きづらいさを感じているひと、救われたい人にぜひ読んで欲しい。

「自分を大切にし、他者を大切にする」それはとてもシンプルでとても難しい。
知世ちゃんのようになりたかったと思う反面、知世ちゃんならそんな自分をも肯定してくれるような気がして、何となく救われてしまうのだ。、

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?