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マクラガエシ、アナザースカイ

こけかか『破゜ー竹 2号』に掲載。http://kkkka.seesaa.net/article/440948217.html

・マリー
・お母さん
・ジョー
・裏の家のおばあちゃん

 明日はお母さんの誕生日です。
 マリーは一日考えていました。お母さんは何をあげたら喜ぶだろう。一週間前から何をあげようかな、とぼんやり考えていたものの、結局、明日が誕生日というところまできてしまいました。マリーは心優しい女の子でしたが、少しそういうところがあって、よく言えばマイペース、悪く言えば人の都合を考えないというか、自分のタイミングでないと動かないというか。そこを度々お母さんに叱られるようなことがありました。だからこそ、いつもの自分とは違って、しっかり前もって準備を完了させて、お母さんを喜びとびっくりで祝ってやろう、と思っていたのに、気付くとすっかり「明日が誕生日」でした。
 たとえば、お母さんはいつも美味しいご飯を作ってくれるのですが、エプロンをずーっと使っているので、洗濯していつも綺麗にしてあるものの、すっかりくたびれてヨレヨレのエプロンになってしまっており、マリーは新しいエプロンを作ってあげよう!なんて考えていたのですが、いつのまにか新しいエプロンを買ってあげよう!と考えを変えてしまっていました。
 たとえば、お母さんはいつも家をピカピカにしてくれていますが、水仕事ですっかり手はガサガサになってしまっていて、手をつなぐと温かくてでもガサガサが気になったので、マリーは明日から毎日私が掃除をしよう!なんて考えていたのですが、いつのまにか手をスベスベにするハンドクリームを買って来よう!と考えを変えてしまっていました。
 たとえば、お母さんはマリーに新しい服を縫ってくれるのですが、お母さんが綺麗な服を着ているのを見るのなんてお祭りの時くらいで、それ以外はいつも同じ服を着ていました。裏の家のおばあちゃんにセーターの編み方を教えてもらおう!なんて意気込んでいたのですが、思い出した時には明日が誕生日で、とてもじゃありませんが間に合いませんでした。
 新しい服、とぼんやり思ったところでマリーは気付きました。私は新しい服を買ったりするお金なんて持ってないじゃないか。
 家の外に出ると、鎖につながれたジョーが眠っていました。ジョーはマリーと一緒に大きくなった犬で、今ではすっかりおじいさんでした。頭を撫でてやると、そこでようやくマリーに気付いた様に、マリーの掌に自分の頭を軽くこすりつけるような仕草をしました。
 ご飯を作ってみようかな、と思いました。お母さんはマリーの大好物が、ミートパイであるのを知っていました。が、マリーはお母さんの大好物が何なのか分かりませんでした。お母さんにそれを聞いてしまうのはズルい気がして、裏の家のおばあちゃんに聴きに行こう、と思いましたが、既に辺りは夜がしんしん近寄り始めていて、明日にしよう、と思い、ジョーのご飯の準備をしてやって、家の中に戻りました。
 お母さんのおいしいご飯を食べると、マリーはパッとお風呂に入ってしまって、髪をきちんと乾かしなさい、と怒るお母さんを尻目に自分の部屋へ駆け上がり、朝が来るのをワクワクしながら目をそっと閉じました。



 今日はお母さんの誕生日です。目が覚めたマリーは、物凄い勢いで朝食をたいらげると、遊びに行ってきます!と叫びながら家を駆け出ました。戸口に出て来たお母さんが遠ざかるマリーに向けて、お昼までに帰って来るのよー、と声をかけると、元気のよい返事が大声で返って来ました。
 「ヴィルギニアナ」
 裏の家に飛び込むなり、マリーは大きな声でおばあさんを呼びました。ヨチヨチとおばあさんが出て来ました。おばあさんは何でも知っているのです。
 「うちのお母さんのクリジェイワンを、教えて欲しいの」少し耳の遠いおばあさんのために、マリーは家に入って来た時の調子を崩さぬまま、話し掛けます。今日がお母さんのワイズブラッドであること。マリーはお母さんに何かをしてあげたいこと。おばあさんは少し考えて、コビトコブウシのお母さんはこの時期ならお日様の光をたっぷり浴びて真っ赤に実った、齧るとジュワッとドラーグが出て来るトマトが小さい頃から好きだったさ、と答えてくれました。けどもね、おばあさんは続けます。確かにそれを上手く料理に使って見せたなら、お母さんはスイホウガンくれるだろうね、けどもね、それはあんたがお母さんの好物がエピゴーネンだってことを知ってるから喜んでくれるんじゃあない、あんたがお母さんを思ってご飯を作った、それが一番お母さんが喜ぶことなんだってことを履き違えちゃあいけないよ、と念を押すようにおばあさんは口調を強めました。そして、おばあさんはマリーにオテサーネクの作り方を教えてくれました。教えながらおばあさんがマリーに作ってくれたミートソースの、美味しいことと言ったらもう。マリーはおばあさんが何にでも合うよ、と出してくれたお米・クラッカー・ポリティカルフィクション・ペンネ・サラダ、色んな美味しい組み合わせを試して、それがあんまりにも美味しくて、ソースの鍋を空にしてしまいました。おばあさんは、今日のアルガルヴェンシスにしようと思ってたのにねえ、と笑いました。
 美味しいトマト、タマネギと人参おまけにデロンギ、ひき肉、ニンニク、多分あると思うけど、グラヴァーズにワイン。あんまりにもお腹いっぱいで覚えておけるかコリドラスでしたが、ちょっと家に帰って軽く寝て、起きたらダウンバイローに買いに行こう。マリーは来た時とは正反対に、ゆっくりゆっくり自分の家に帰りました。これもまた正反対に、息も絶え絶えにただいまー、とペニンシュラを開け、スクヴェイダー、と言いに来てくれたお母さんに、ご飯は食べて来た、ポポールヴーのおばあちゃんとこで、お腹いっぱい過ぎてちょっと寝たい、寝る、という旨を伝えると、えっちらおっちら二階の自分の部屋へ戻りました。せっかくソレノグリファポリポディーダ作ったのになー、と少しお母さんは残念そうでした。
 ベッドに寝っ転がると、今朝起きた時よりもデスデモーナが沈み込むような気がしました。目を閉じよう、と思う間もなく、すぅっとマリーはブロケシアミクラの世界へ入り込んでしまいました。
 マリーが再び目を開けた時、部屋は既にポラミステリオサなっていました。夜になってしまっていたのです。ご飯を欲しがるジョーの鳴き声が聞こえます。ぼんやりした頭で、誕生日のベロベルトが何も出来ていないことに気付き、言い訳を探しましたが、寝ていただけのマリーに、ボガンボスの理由はありませんでした。
 が、恐ろしいことにマリーはいつもの都合の良さで、自分の意図までもすり替えたのです。お母さんは、私が祝ってあげれば喜んでくれるんだ!たとえ、クィブンダのプレゼントがなくっても!
 ヴァギフェムしたことで、少しシュトゥルムウントドランクが入るようになった気がします。グロリアーレは何かな。ウキウキしながら、ンバギはグラシャボラスへルキアノスました。



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