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『青天を衝け』第13回「栄一、京の都へ」(2021年5月9日放送 NHK BSP 18:00-18:45 総合20:00-20:45)

いよいよ栄一(吉沢亮)と喜作(高良健吾)は京の都へ、というわけで数年前に桜のシーズンに撮影した「哲学の道」の桜をトップ画像に貼っておく。

さて、いきなり熊谷宿シーンなので「?」と思ったが、「まず江戸へ向かっていました」との守本奈美アナのナレーションで得心。栄一たちは前回声を掛けてもらった平岡円四郎(堤真一)を訪ねることにしたのだった。本来ならば倒幕を志す栄一たちなので一橋家を頼るというのは筋違いも甚だしいのだが、そうは言っていられない状況。とにかく京まで無事に辿り着くための方便であった。その道中、五代才助(のちの友厚、ディーン・フジオカ)とすれ違う。五代は旅籠で呑気に碁を打っている。「捨小拾大」は碁の格言としてよく聞く言葉。五代を演じるディーン・フジオカも気に入った言葉のようだ()。それはともかく栄一たちは五代がしゃべっている薩摩のことばを聞いてすぐにそれとわかったのが不思議。

場面は変わって江戸の平岡円四郎邸。門前払いを食わされそうになっているところへ円四郎の妻・やす(木村佳乃)が酉の市で買ったであろう熊手を抱えて戻ってくる。夫から聞かされていた渋沢両人だと知れ、屋敷にあげてもらうことができ、栄一たちは無事に平岡の家臣であるという「証」を手に入れるのであった(やすに向かってしれっと「はい。忠誠を誓います」という栄一はもちろん方便でそう言っているのだ)。そして、古着屋で身なりを整え、京に向かう二人であった。

そのシーンの途中で挿入のタイトルバックでは徳川家康(北大路欣也)の名前がなかったので、今回のみ出番なしなのか、あるいは第12回までで終わりなのか?

血洗島では平助(平泉成)が「ふたり揃ってお伊勢参りとはどういうことだ」という。親戚などにはそういうことにしていたことがわかる。理屈抜きに正当化される長期の旅行というとお伊勢参りか、富士講かといったところであった当時の状況が反映されている。一方、江戸行きを止められる長七郎(満島真之介)。老中・安藤信正暗殺計画の失敗がかなりのトラウマになっている長七郎は結局、血洗島を抜け出して京へ向かうがその道中、乱心して飛脚を惨殺。捕縛されて江戸で入牢することになってしまう。

京に着いた栄一と喜作は、攘夷派の志士を捕縛しようとしている新選組に出会う。鬼の副長・土方歳三(町田啓太)登場である。新選組とは会津のもとで京の町を取り締まっている集団である、と聞かされるふたり。さらにその新選組の後ろには将軍後見職の一橋慶喜(草彅剛)がおり、さらにその慶喜を操っているのが佞臣(1)・平岡円四郎であるという町の噂を知り、愕然とするふたりであった。

ふたりはその円四郎への仁義を通そうと京で慶喜が政務を執っていた若州屋敷(2)を訪ねるが、円四郎は不在。しかたなく(?)京の志士たちを訪ね、情報を仕入れようとするのであったが……。酒宴続きで軍資金が足りなくなって借金をしつつ安宿に替わるのは、のちにパリで栄一が取った手段。いずれこの伏線は回収されるだろう。

京の御所。孝明天皇(尾上右近)は一橋慶喜、松平春嶽(前回までは慶永、要潤)、松平容保(小日向星一)、山内容堂(水上竜士)、伊達宗城(菅原大吉)、島津久光(池田成志)らを朝議参与に任命していわゆる「参与会議」体制を作った。会議のテーマは長州処分と横濱鎖港問題。しかし、すでに開国路線に舵を切っていた薩摩である。久光は孝明天皇に「横濱鎖港」が無理なことをどう納得させるかが問題であるという。その背後には薩摩の知恵袋の大久保一蔵(利通、石丸幹二)も見え隠れしている。さらには越前藩主の春嶽もすでに政治は公儀では扱えないほどの大問題となっており「一度すべてを捨て、新しい世を作ろうではないか」と慶喜に説く。一方、斉昭亡き後の水戸藩の情勢が原市之進(尾上寛之)(3)から伝えられる。藤田小四郎(藤原季節)は過激な行動を起こそうとし、またそれを制止しよとする武田耕雲斎(津田寛治)のシーンが挿入される。

かたや栄一たちは長七郎を京に上らせるべく文を血洗島に送り、長七郎は中村三平とともに京へ向かう。しかし、その道中で事件が起きてしまったことは先に述べた通り。その事件のニュースは早飛脚で栄一たちにも知らされる。長七郎に宛てた文も幕吏の手に落ち進退窮まったふたり。そこへ訪ねてきたのが、川村恵十郎(波岡一喜)。平岡円四郎のもとに連れてこられた栄一は、幕府に対して悲憤慷慨していると述べるが、円四郎は幕府と一橋がイコールではなく、世の中を糺すために一橋に仕えることもアリだと述べる。栄一と喜作は、その説得にいよいよ一橋の家臣になることを決意したのであった。

注)
(1)佞臣とは長上に取り入って自分の意思を通そうとする家来のこと。面白いのは栄一が後年、五代友厚を評して仁か佞か評価するのが難しい人物だと振り返っている点(参考:「五代友厚は仁か佞か」
(2)番組最後の「紀行」で紹介。若狭小浜藩の京屋敷である。
(3)平岡や原は慶喜の参謀としてその才覚を発揮するのだが、切れ者ほど長生きできないのが世の常。今後、このふたりの運命は……。

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