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ムネさっくとの出会い 〜刈野名義の作品メモ①

今回脚本を担当します刈野です。先輩方に囲まれて、いつもド緊張で稽古場にいます。みなさんどうぞよろしくおねがいします。今日は私が初めてムネさっくと出会った馴れ初めの話をします。

あれは一昨年、僕が祖母が大事に干していた干し柿を勝手に食べてしまったせいで、山に行って渋柿を取ってくるようにいわれたときのことでした。祖母は子供の頃にひもじい思いをしたことがあったので、子供や孫にはそういう思いをさせたくないと、食べ物についてはとってもおおらかな人でした。あと、よく干してました。干し芋、切り干し大根、鯵の干物、梅干し、色んなものを干していたのですが、干し柿だけは絶対に孫はおろか、子供にも食べさせないほど、干し柿狂いでした。
そんな祖母の干し柿を勝手に食べたのですからさあ大変、怒り狂った祖母は「今すぐ干し柿用の渋柿を取ってくるんだ、さもないと昨日罠にかかったイノシシをぼたん鍋にするから今日は早く帰っておいで」と山姥ギャルのような形相で僕に言いました。

しぶしぶ、僕は港町からてくてく歩いて裏山に柿を取りに行きました。その時です。草むらからゴソゴソと物音がします。祖父から獣と出会ったときは先手必勝と教えられていた僕は、「今から干柿を取りに裏山に行く、ついてくるならきび団子をつかわそう、イエスと言わなければ3秒後にこの辺り一帯は血の雨が降るだろう」と言いました。本当はとても怖かったですが、盛りメイクをした山姥ギャルの祖母もまあまあ怖かったので、僕は勇気を出して言いました。

すると、草むらから二人の若者が飛び出してきました。片方はサッカーボールを、片方はM-1のDVDを持っていました。それが野生のムネさっくとの初めての出会いでした。僕たちは焚き火が許されている近くのキャンプ上に場所を移し、とろ火にかけたぼたん鍋を突きながら、今度はちゃんとこれまでの自分の生い立ちと、今から干柿を作るために裏山に行って渋柿を取ってこなくてはいけないことを告げました。

二人は、演劇をやっているそうでした。僕は演劇といえばピーター・ブルックくらいしか知らなかったのと、最近出たケイティ・ミッチェルの演出術くらいしか読んだことがなかったので、二人の話をとても興味深く聞きました。二人が柿に興味がないことがわかったので先を急ごうとすると、
「お前に干柿が作れるか」と聞かれました。
「わからぬ、ただ柿を食うことはできる」と答えました。

こうして、僕はきびだんごをもらいながら、二人の今回の公演の脚本を書かせてもらうことになりました。あのとき祖母の作った干柿を勝手に食べたことで生まれた縁です。人生どこで何があるかわからないな、と思いました。

こんな温度の演劇を作っています。よかったら14日から16日までぽんプラザホールにお越しください!

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