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失敗を迂回しない人生を(黒川伊保子「英雄の書」のすすめ)

ここのところ、起きぬけの楽しみは黒川伊保子さんの本を読むことだ。
黒川さんは「妻のトリセツ」を代表するトリセツシリーズの著者であり、
言わずとしれた人工知能の研究者であり、その理論をもとに男の子を育て上げた母でもある。

何を隠そう、私は第一子の出産後、黒川さんの代表作のひとつ「母脳」に感化され、この4年間は「子どもの脳を育てる」という意識で子どもに接してきた。(夫に「また黒川さんか…」と呆れられるほど)
私が黒川さんの数々の著書の中で一番好きな言葉は
「脳は失敗することで進化する」というもので、これまで子どもの失敗は積極的に許容してきたつもりだ。(自分の失敗も)

たとえば今日読んだ「英雄の書」では1章ぶんまるまる「失敗」の効果について書かれている。(失敗の効果については、黒川さんの著書にはたいていどこかに書かれている)

脳は体験によって進化している。
失敗すれば、失敗に使われた脳の関連回路に電気信号が流れにくくなり、失敗する前より失敗しにくい脳に変わるのだ。
逆に成功すれば、成功に使われた関連回路に電気信号が流れやすくなる。中でも、さまざまなかたちの成功に使われる本質的な回路は、使われる回数が多いので、特に優先順位が高くなる。これこそが物事の本質を見抜く洞察力の回路にほかならない。(中略)
成功体験を劇的に増やし、大切な回路に何度も信号を流して「本質の回路」に昇華させるためには、その前に、十分に、ムダな回路を切り捨てておく必要がある。
その無駄な回路を捨てる、成功への基本エクササイズこそが「失敗」なのだ。

「英雄の書」 第一章 失敗の章 より

つまり優秀な脳というのは「優先順位がはっきりしている」と言うことだ。

優先順位がしっかりついている脳は、つかみがよくて、勘がいい。だから、運がいいのである。自分の運を落とす相手の手を取ることもないし、自分の運を落とす道を選ぶこともない。

「英雄の書」 第一章 失敗の章 より

そしてさらに脳を進化させるためには「睡眠」が欠かせない。

起きている間、脳波、認知や思考や、その結果の出力に忙しくて、新しい知識の整合性を確かめ、回路に定着させる暇などないからだ。
しかし、脳の持ち主が眠ると、意識領域の信号が沈静化し、表立った仕事がなくなる。そうなると、やっと脳は手が空いて、新しい知へと触手を伸ばすのだ。
具体的には、起きている間の体験を何度も再生して、そこから知識や知恵を切り出す。過去の知識と引き比べて精査し、知識ベース全体の質も見直す。古い知識と統合して抽象化し、センスも作り出す。

「英雄の書」 第一章 失敗の章 より

加えて食事のことも書かれているのだが、体験(特に失敗)、睡眠、食事が脳にとっての三種の神器ということがわかる。彼女の著書を読めば、失敗への恐れは楽しみに変わり、家族の失敗を許容しない理由もなくなる。睡眠をないがしろにする習慣も自然に手放せるのではないだろうか。

「英雄の書」に限らないのだが、黒川さんの著書には脳科学の視点から、孤独に戦う戦士たちへのエールがちりばめられている。
24時間365日を必死に戦っているあなたもぜひ手に取ってもらいたい。
たいていの著書は内容もシンプル、本自体も軽く、脳には負担のなく読める内容でありながら、あなたに一粒の勇気の種を撒いてくれるはずだから。

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