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私の大腸がん体験記12-退院Andしぼう

 手術6日目、点滴が外され、かなり身軽になった。明日は退院の日、今日は特に何もすることなく過ごす。せっかくなので病院内を散策してみよう!一人、エレベーターに乗り、ロビー近くのコンビニへ、一階のエントランスでは相変わらず多くの患者さんで混雑している。中には私と同じ状況でシリアスな状況に追い込まれている方もいるハズだ。自分だけではない(仲間がいる)と思うと気持ちが少し楽になる。

 正直、コンビニへ来ても、欲しいものはない。大腸がんが発覚してから一番欲しいものは”健康”であり、家族と過ごす時間だと気づいた。物欲はすっかり無くなった。若いころから、昭和の人間らしく流行りものに乗った。多趣味で熱しやすく冷めやすい過去の自分を思うと後悔することばかり。DCブランドのたまにしか着ない高いスーツを買ったり、無理して新車の車を買ったり、釣り道具等々。本当に大事な事に気づいていなかったようだ。

 病室に戻ると妻が下の娘を連れて病室にやってきた。一番下の娘が明日の退院を喜んでいる。退院したらイオンで買い物をして、鎌倉パスタでランチをする約束をする。子供たちには私の病気発覚でかわいそうなくらい心配をかけた。特に一番下の娘はさびしさから毎晩泣いていたと後で聞いた。退院したら可能な限り子供たちと一緒に過ごす時間をもつことにする!

 娘と病院内を散策する。ナースステーションで顔見知りの看護師さんたちに声を掛けられる。

看護師:「お父さんと一緒に歩きの訓練ね!いっぱい歩かせてね!」
娘:「うん!」
看護師:「言っても歩いてくれなかったのよ」
娘:「わかった!歩かせる!」
私:「・・・・・・」
看護師:「どんどん歩くと腸が動くからね~」
軽くディスられます。
体を真っ直ぐにして歩けるようになり、再度病院内のコンビニへ娘におまけつきのお菓子を買ってあげる。寂しい思いをさせた引け目から甘くなってしまう。病院内の図書館、食堂を回り、天気が良いので外の空気も吸いに木が生い茂った日陰の場所を歩く。風が気持ちいい。精神衛生上とてもよい。

 汗だくになりながら病室に戻りベットにゴロリ。今日は大分歩いた。妻と娘が帰った後、表現が悪いが、死んだように眠った。しかし.…少々頑張りすぎたようだ。夜になり熱が出てきた。夕方の検温でなんと38℃、夜中には40℃という始末。明日退院だというのにナースステーションを中心に上を下への大騒ぎとなった。せっかく外した点滴も再導入された。どうも病院はなんとしても退院してほしいようだった。

 結局、主治医の先生も駆けつけ、夜中いくつかの薬を投与され熱は明け方に下がった。半ば無理やりの退院だ。楽しみにしていたイオンでのランチも中止。家に直帰となる。家で寝ているとTシャツが濡れているのに気づく。Tシャツをめくると傷口からちょっと黄色っぽい透明な液がどろどろと流れている。痛みは全くないがその液体はガーセのキャパを越えて止まる気配がない。妻が病院に電話をかけると来るように言われる。

救急外来から病院の処置室へ入るとすぐに主治医の先生がニコニコしながら入ってきた。
私:「先生、この液体なんですか?」
主治医:「脂肪です。」
私:「脂肪なんですか?」
主治医:「脂肪が傷口から流れたんです。」
とニコニコしながら傷口を観察しながら処置しています。
主治医:「はい、終わりましたよー」

つづく





 

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