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太平洋戦争 総括のための切り口 私案

 広島・長崎の体験記を読む、特攻隊員を描いた映画を見る。手記や作品を通じて 1人の体験を垣間見るだけでも、その衝撃と悲しさに心の中が真っ黒になり、しばらくの間、思考が止まる。太平洋戦争において、それら個々に降りかかった大きすぎる不幸は、世界規模で言えば数千万という数の人に降りかかっていたとすると、頭の中でその総量をイメージすることさえもできない。

 広島・長崎、特攻隊員のことは主に日本の側が被った不幸であったり損失であったりするわけであるが、このような計り知れない負の要素でさえも、太平洋戦争全体の中では一つの局面ということになってしまう。これらの局面に対して、当時の日本(軍)による真珠湾攻撃、アジア、そしてあまり語られないオーストラリア等での軍事活動、攻撃など、全く異なる局面がある。

 太平洋戦争に関する論評や著作は、このように対象があまりにも広くて深いため、一つの局面を解説、描写するだけでも大仕事だが、総括には全局面を押さえる必要がある。局面毎に見えてくる国や戦争の姿や印象が大きく異なり、一つの局面を把握することによって他の局面を類推することもできない。戦争の評価については、個人の信条や立場により、局面の選択から偏りがちになる。逆に、インプットされた情報がどの局面によるものが多いか少ない(無い)かで、左派や右派のような信条が出来上がりもする。さらに、戦前戦中は内政によって、戦後はGHQ によって全体の思潮が恣意的に動かされてきたことは、現在に至るまで国としてこの戦争を総括できていない原因の一部であるに違いない。

【太平洋戦争の総括のための切り口】

①戦前戦中の世界情勢
②植民地支配
③国家存亡
④戦前・戦時下の内政・言論統制
⑤戦前・戦時下の世相・世論
⑥戦闘
⑦損失と利得
⑧戦後処理
⑨GHQ主導の民間情報教育局などによる言論統制
⑩他国にもたらした損失と利得
⑪現在の日本と世界に残した影響

 自身を振り返ると、小学校低学年時に「はだしのゲン」を読み、「⑥戦闘手段」や「⑦損失・・」の部分に意識と関心が占められたところから始まる。その後、⑩⑪に関しては隣国に与えたマイナスな影響や誤った行為・手段に関する情報や見解に多く触れる。その一方で20代後半、仕事で海外に出るようになってからは、特に中南米、中東、アフリカ、東南アジアの多くの人の日本への支持と共感に触れ、「⑩他国にもたらした損益」「⑪・・世界に残した影響」について異なる印象が加わった。盲目の人達が象に触れ、ある人は枝、他の人は扇、壁、パイプのようだと言ったというインドの故事があるが、太平洋戦争の総まとめについてはこの故事の通りにならないことの方が難しい。

 私が個人的にしている太平洋戦争の総括は、自分自身がどこから来て、今どこに居て、これからどこに行くのか、子供たちに何を残すのかを考えることに他ならない。これまで、上に羅列した、個々の局面を通じて太平洋戦争を理解しようとしていて手応えが得られず、全ての局面を深く把握し評価することでしか総括をできないと気づき、私の太平洋戦争総括はようやくそのスタートラインに立った。

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