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【1日目】ハトに餌をやる人のカンジョウ(カンジョウのトリセツ)

 みなさんこんにちは。リリジャス・クリエイターの日南本倶生です。

 この本はシリーズの二冊目にあたる本です。前巻の内容を踏まえて、より深いモトの話を皆さんにお届けします。
 この本では、僕たちの「人間関係」において、モトがどのように動いているのかを中心に、ニンゲンの「カンジョウ」の秘密にせまっていきたいと思います。

 もしまだ前巻をお読みでない方は、巻頭の付録『【モトの話①:入門編】の内容』をぜひお読みください。また、前巻をお読みになった方も、復習に丁度いい内容になっているはずなので、本書をお読みになる前に付録でざっとモトについてふり返ってみてくださいね。

 ではいよいよ、モトと人間関係の話をさらに深堀りしていきましょう。

◆カンジョウは『ココロの命令』だ

 そもそも「人間関係」とはなんでしたっけ? そう、その本質は

モトのやり取り

でしたよね。僕たちは結局この「モトのやり取り」をするために、他人と何らかの関係を持ちたがるものなんです。

 理由はたった一つ。「モトあつめ」をしなさい、というココロの欲求と、その命令です。

 ココロというものは、常に「モトあつめ」をしたがっています。
 これは、実はココロというものの「存在意義」に関わる問題で、したがって「どうしてココロはモトあつめをしたがるのか?」という、至極もっともな疑問の答えは「エキスパート編」まで待っていただかないといけない、高度なお話になります……ですからすみませんが、こういうことにもちゃんと「言葉で説明できる答え」がありますので、今はちょっとガマンしてください……。

 ともかく今は「ココロは常にモトを集めたがっている器官だ」ぐらいに思ってください。実際問題、僕たちは常に「モトあつめ」をしていますので、ここだけは間違いないはずです。

 そして、人間の「感情」というものは、この

モトあつめのための命令

でしたね。ココロが「そういう気分で行動することで、モトを集めなさい」という命令として出してくるのが、感情というものでした。

 人間にはいろいろな感情がありますが、たとえば「怒り」なんていう厄介なものも「大きな声や暴力で、周囲の人の注意を引く」ために、ココロが出してくる感情なんでしたよね。他者の注意を引くと、こちらにモトが入ってくるんでした。こうして「モトあつめをしなさい」という「命令」を、ココロが出しているんですよ、それが「感情」なんですよ、という話でしたね。思い出してください。

◆最も単純なモトのやり取り『動物と人間』

 では今回からは、僕たちや周りの人々の日常の行動で、どのようにモトが動いて、誰のモトが増えているのか、そういうことを具体的に見ていきましょう。

 第1日目は

「ハトの餌やりをやめられない人」

です。

 そもそも……動物に餌をやる、という行為は、なかなか楽しいものだと思うのですが、どうですか?
 実際に、動物園にある「ふれあいコーナー」などで、動物の餌やり体験ができる場所がたくさんありますが、こういうコーナーはいつも大人気ですよね。ご自身も、餌やり体験をしたことがある方は多いのではないかと思います。僕も大好きです。楽しいですもんね。

 これを「金銭的」な面で考えてみると……実は、餌やりをする僕らが

一方的に損をしている

に過ぎないんです。だって、入場料とは別にお金を払ってわざわざ餌を買って、それを手間を掛けて動物に食べさせているんですから。
 本来なら、お客さんから得た入場料の収入で、飼育員さんが餌をやるのが筋なんですよ。それをわざわざ、お客さんである僕らがやっているわけです。こんな損な話、ないですよね……

 でも、やっちゃうでしょ? 楽しいからですよね。

 ではどうして、僕たちが一方的に「損する」だけの動物の餌やりは「楽しい」のでしょうか? 実はこれは、モトの知識があるとすんなり理解できます。

 その理由は……「動物からモトをもらえるから」なんです。

 動物たちにも当然「ココロ」があります。このココロも、もちろんモトでできています。そして、人間のココロと同じように、モトの量の増減に応じて、感情を出してきます。
 そんな動物たちですが、彼らは人間よりも野生に近い存在ですので、食べ物に対する執着心がとても強いのです。ですから、食べ物を与えようとする僕たちに、ものすごい勢いで「注目する」のです。

 注目されると、どうなるんでしたか? そう、相手の心からモトが飛んでくるんでしたね。すなわち

 動物に餌をやると、人間のモトがドバドバ増える

んです! だから、ココロのモトが増えたことを「好き嫌いゲージ」が検知して、針がグイグイっと「好き」寄りに動いて、結果として僕たちに
「楽しい!!!」
という気持ちがわき起こります。

 実は僕たちが動物の餌やり体験をしている裏で、ココロはこういうふうにモトを「やりとり」しているんです。

 付け加えると、動物たちの方は、餌がもらえることで「満足感」「安心感」が得られますので、自分のココロでモトが増えていく「二番目のモトあつめ」を自動的に行います。ですから、動物ふれあいコーナーにいると人間も動物も、まあまあ幸せな気持ちになるはずです。
 ここで、人間が意地悪して、見せびらかした餌をどうぶつにおあずけすると、動物たちはイライラします。モトが一方的に減るからです。

 とまあ、こういう「仕組み」でもって、僕たちの感情は動いているわけです。そこには必ず(いいですか、必ずです)

『モトのやり取り』

がある、ということが言えます。

◆ハトの餌やりが「やめられない人」のカンジョウ

 この「極端な例」が、今回のテーマ「ハトの餌やりをやめられない人」です。

 ハトの餌やりは、場所によっては禁止されていますよね。都市の条例によって禁止されている場所もあります。
 でも、ついついやってしまうこと、ありませんか?

 極端な人になると、周囲に止められているにも関わらず、箱いっぱいのパンくずを公園のハトたちに毎日どんどんばらまいているような例も、テレビで報道されたりします。ここまで行くと、迷惑行為として告発されることもありますが、本人は自分の意志でやめることをしません。

 実はここでも、さきほどの「メカニズム」が働いています。ハトからモトが入ってくることで「気持ちよく」なっているのです。

 さらに、公園のハトたちというのは、一羽ではなくたくさんいますよね。数が多いので、より多くのモトがココロに入ってきます。ハト一羽一羽のモトの量は人間に比べると少ないはずですが、数が多いので「気持ちよさ」もそれなりに増えていきます(モトには「個数」があるんでしたね)。
 こういうわけで、条例や周囲の迷惑を考えず、餌やりを続けてしまう人が出てきてしまうわけです。

 野良猫の餌やりも、だいたい同じ理屈で行われます。ただ、野良猫の場合は「姿が見えない」こともありますよね。餌を設置して立ち去ったら、翌日「食べ終えた跡」が見つかる、という具合です。
 こういう場合も、餌をあげた人は「気持ちよく」なります。それは、自分のアタマの中に「餌を食べて満足している野良猫」を想像して、そこからモトを得ているから……なんですけど、こういうのも「二番目のモトあつめ」のひとつなんです。自分自身で増やしているんですからね。

 人間というものはアタマが発達していますので、自分の「想像したもの」に対してモトを飛ばしたり、そこからモトを受け取った「気分になる」ことがあります。後にくわしく取り上げますが、手紙や電話で楽しい気持ちや嬉しい気持ちになるときも、こういう仕組みが働きます。

 ともかくそういう「仕組み」でもって、野良猫の餌やりが「気持ちいい」と感じる人が出てくるわけです。

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 というわけで、この本の最初に取り上げる「関係」はこういった

餌をあげる → 注目される → モトが増える

という「一番単純な」モトあつめの仕組みです。心当たり、ありませんか?

 このやり方のモトあつめは、人間同士でもよく行われます。たとえば、誰かにご飯を作ってあげたりおすそ分けをすると、いい気分になることありますよね。あれもそうなんですよ。動物の餌やり体験と同じ仕組みで、モトあつめをしているんです。

 では、二日目以降もこんな感じで「日常でよく目にする場面」でのモトあつめを観察していきましょう。

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「ニンゲンのトリセツ」著者、リリジャス・クリエイター。京都でちまちま生きているぶよんぶよんのオジサンです。新作の原稿を転載中、長編小説連載中。みんなの投げ銭まってるぜ!(笑)