敏子おばちゃん

タイトルみて「いや誰やねん」と思ったよね。
すみません。

敏子おばちゃんは親戚のおばさん。
関係性でいうと、うちの父ちゃんのいとこだったかな??
父ちゃんより12歳年上。
そして敏子おばちゃんの旦那は父ちゃんと同じ会社で働いてたし、家も近かったから何となく近い存在のおばちゃん。

自分の息子が3歳の時に、
悪い事したから閉め出しや!!っていって、フルチンで外にだしたら息子に
「せめてパンツだけでもください」
って言われて、
「じゃかましいわ!やらん!!!」
って放置したらフルチンのまま三輪車で隣の市まで行き保護され、警察にめちゃくちゃ怒られた敏子おばちゃん。

今やったら児相やで。笑

とにかく明るくて、敏子おばちゃんがいるところはスポットライトがさしてるような感じ。
あとめちゃくちゃ喋る。
どのくらいかと言うと、上沼恵美子が芸人にならなかった世界線みたいな感じ。

私が中学生くらいの頃の話。
めちゃくちゃ元気で明るくてみんなから爆笑をかっさらうような、そんな敏子おばちゃんが癌で倒れてしまった。

父ちゃんとオカンと3人で入院してるおばちゃんに会いに行った。
事前に看護師さんから
「病気の関係で、話が噛み合わないとか、記憶が無くなってたりとかがあるんですが適当に話を合わせてください。」
と言われ、ああ、そんなことになってしまったんだ。と思った。

敏子おばちゃん、辛いやろうな。
落ち込んでるやろな。
そう思いながら病室に入った。

「あー!来てくれたん!ありがとう!誰かわからんけど!!まだ生きてるで!!!!」

メンタルがバケモンだった。

話を聞いたところ、同じ病室の癌の患者さんで、「癌が大きくて手術で取れない」と言われてる人がいたらしい。
それが、敏子おばちゃんと同じ病室になってから、笑いすぎて癌小さくなって手術で取って退院したと。

ほんまかいな。笑

敏子おばちゃんは、私達をみて、
オカンと私を指さし、
「この2人は覚えてるわ!」
そして父ちゃんを指さし、
「せやけどお前だけは忘れた!!!」

と言い放った。
めちゃくちゃ笑った。
ギャグなんかマジなんかわからんのよ。

ベッドの傍には本棚があって、そこに沢山の本が置いてあった。

私の母
「本いっぱいあるんやなあ。暇にならんくてええなあ。」

敏子おばちゃん
「そうそうそう、これでな、病気の事とか勉強してんねん。ここにあるの全部癌のやつや。」

といって、癌について書かれた本を一冊手に取り、中身を確認しながら「うん、癌のやつや。」と独り言を言って本棚にしまった。

そして、私の母が
「これもそうなん??」

といって、本棚の中に唯一あった犬の図鑑を指さした。

すると敏子おばちゃんは真面目な顔で、
「そうそうそう、これもな、癌のやつや。」

といい犬の図鑑を手に取り、中身を確認しながら「うん、癌のやつや。」と独り言を言って本棚にしまおうとした時、

私の母
「どれが好きなん?」


全員がオカンに「何言うてんねんこいつ」と思った瞬間だった。

そしたら敏子おばちゃん真面目な顔して
「あー。チャウチャウやなー。」
って言った。

病室がすごい空気になった。
まじ一生忘れない。


それから退院して、そのあとはあんまり会う事はなかった。
体調も良くなかっただろうし、特に会う用事も無かった。

コロナ禍になる前に、お爺ちゃんが亡くなった。
お爺ちゃんのお葬式は小規模の家族葬だった。
私も大阪に帰ってお爺ちゃんのお葬式に行った。

控室でお茶飲んでたら、扉がバンッと開いた

「まだ生きてるで!」

敏子おばちゃんだった。

私の事はわからない。

父ちゃんに向かって
「えぇ?!あんた娘おったん?!!!」
って言った後に、

「おまえやる事やっとったんやな」

ってデカい声で言ってた。気まずいわ。

マシンガントークは止まらない、とにかく明るくてみんなを笑わせる敏子おばちゃんは健在だった。

それが敏子おばちゃんに会った最後だった。

1/31に74歳で亡くなったと父ちゃんから連絡が来た。
面白いおばちゃんだったな。
あんなにみんなを笑わせたんだから天国で表彰されてると思う。
おやすみなさい。

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