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【AND WOOL】が取り組んでいる「雇用創出プロジェクト」について

こんにちは、ファッションデザイナーの村松啓市です。私の運営する2つのブランド【muuc:ムーク】【AND WOOL:アンドウール】、そしてその他のさまざまな活動をいつも応援してくださっている皆様、本当にありがとうございます。

今日は、私がブランドの運営と並行して取り組んでいる「雇用創出プロジェクト」についてご紹介したいと思います。

■在宅ワークを必要としている人

【AND WOOL】では、製品製造の一部を「内職」という形で、在宅ワークを必要としている人たちに発注する仕組みを作っています。

具体的に「在宅ワークを必要としている人」というのは、何らかの事情があって外に働きに行きづらい方たちのことです。例えば、幼いお子さんがいる主婦の方、定年を迎え自分のペースで働きたい方、病気や障害と付き合いながら働きたい方などです。

このような方たちの中には、プロにも負けないような編み物の腕をもっている方も少なくありません。編み物の技術や知識をもっていて活かしたい人が、在宅ワークを必要としている人たちの中にたくさん眠っていると、私は考えています。そんな方たちに、優秀な「編み手職人」として仕事を手伝っていただきたいと思いました。

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静岡の田舎で活動する、私たちのような小さなブランドが、どうしてこのような活動をするのか尋ねられたり理解してもらえなかったりすることもよくあります。この活動の背景には、ファッションアパレルが抱えている「職人不足・後継者不足」の問題があります。

年々、技術の高い職人の数は減少し、思うような服作りができなくなってきています。技術力のある職人を育てるには時間もかかり、この「職人不足・後継者不足」の問題は、ファッション業界において非常に深刻な問題になっています。

私たちは社会貢献や人助けのためだけにこの活動を続けているのではなく、自分たち自身のためにやっています。これからも皆様に愛していただけるような上質な製品を提供できるブランドであるためには、必要不可欠な活動だと考えています。

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■製品クオリティを落とさない仕組み

外部の方に制作に入ってもらうことは、仕上がりの製品クオリティに影響するのではないか、ということを心配されるお客様もいらっしゃるかもしれません。

私たちは、ニットやファッションの専門知識を使い「どのようなデザインにすれば」また「どのような作業工程にすれば」仕上がりに影響しない部分の単純作業が製造過程の中から抜き出すことができるか、ゼロから考えてその仕組みもゼロから作っています。【AND WOOL】では、素材や製造過程のすべてを把握できる環境にしているので、そのような仕組みを実現することができています。

具体的には、「手編み機のレバーを左右に動かすだけ」といったプロがやっても素人がやっても仕上がりに影響しない単純作業を在宅ワーカーさんにはお願いし、編み上がった製品の仕上げ作業は、専門技術をもったプロのスタッフが担当しています。

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■適正価格で「雇用創出」を行うために

在宅ワークでできる単純作業というと、「内職」=「低賃金労働」というのが一般的なイメージだと思いますが、私たちは仕組みをしっかり作ることで、製品製造に関わってくれた方たちに適正価格の報酬を支払うことを実現しています。

それが可能になる理由の1つが、【AND WOOL】のニット製品が高級品であることです。私たちのニットは、1つ1つ手仕事によって仕上げることで、大変高品質なものになっています。その分、手間がかかり大量生産することはできませんが、オートメーションの機械では作ることができない、空気をたっぷりと含みやわらかくふんわりとした、他にはない上質な製品が完成します。これらを適正な価格で販売することで、手を動かして作業してくださっている方たちにも、適正な報酬を支払うことができるのです。

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さらに、製品を購入してくださったお客様にも、「価格以上の価値を感じていただきたい」という思いがあるので、極端に高額な価格設定にしたりはしていません。ですが、逆に安売りもしていないのです。すべての人にとって幸せな状況を作るために一番重要なことは、すべてを「適正価格」にすることだと考えています。

一般的な「内職」が「低賃金労働」になってしまう理由は、その商品が価格競争にさらされて安価な値付けをしなければならなくなるからです。そのしわ寄せは末端で作業する現場の作り手が負うことになります。無理な安売りをする必要がない製品を作り、その製造過程の中に在宅ワークを必要とする人たちに発注できる仕事を入れ込むという「仕組み作り」が大切だと思っています。

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■就労継続支援B型事業所へのお仕事発注

【AND WOOL】では、在宅ワークの「雇用創出」と並行して、「就労継続支援B型事業所」へのお仕事発注も積極的に行っています。現在は、静岡県内の3つの事業所と協力してこの取り組みを進めています。大変ありがたいことに新聞などのメディアでも取り上げていただき、それを見て「お仕事をやらせてもらえませんか?」というお問合わせをいただくことも増えています。

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就労継続支援B型事業所には、製品の仕上がりに影響しない単純作業の部分をお願いしていますが、人によってはすでにかなりの技術を身につけられている方もいらっしゃいます。そのような方には、単純に「手編み機」のレバーを左右に動かすだけではなく、模様を編み込むような作業もお願いしています。

例えばこちらの動画は、事業所の中でも技術の高い作業者の方が、1つ1つ目を拾ってケーブル模様を編み込んでいる様子です。大変手間のかかる作業ですが、このように手作業でやることで模様がふっくらと浮かび上がり非常にやわらかいニットに仕上げることができます。オートメーションの機械では、糸を十分に引き上げられないので、どうしても模様がペタッと平面的になってしまいます。

このような「他にはない製品」を作るためには、人の手が不可欠なのです。

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■雇用創出の活動を裏方として支えてくれる人たち

最後にもう1つお伝えしたいことがあります。「雇用創出」の活動は現在、多くの人の支えがあって実現しています。

日々技術を磨きながら最終工程の仕上げ作業を担ってくれているニット職人さんたちがいなければ、高品質な製品のクオリティを守ることができません。また、【AND WOOL】のオンラインサロンに参加して、遠方(静岡県外)から製品製造をサポートしてくれているサロンメンバーもいます。さらには、アトリエがある静岡県島田市周辺の地域の皆さん、農家さん、職人さん、クリエイターさんなど、活動に共感してご協力くださっている方々がたくさんいます。

人を育てながら、ビジネスとしても成立するように「雇用創出」の仕組みを回すためには、時間も労力もかかり、ブランドのスタッフだけではここまで活動を広げることはできなかったと思います。皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。プロジェクトにご支援ご協力くださっている方々も含めた「みんな」が幸せになれる仕組みを作ることが、皆様への恩返しになると私は考えています。

ニット職人さんとオンラインサロンの詳細については、村松啓市が運営するWebマガジン「AND MAGAZINE.JP」でもご紹介しています。ぜひこちらも合わせてご覧ください。

▶︎上質な製品と雇用創出の活動を裏方として支えてくれるニット職人さんたち–【AND WOOL】の雇用創出プロジェクト–

▶︎遠方の人にも「ものづくり」に参加してもらえる仕組みを作りたい–【AND WOOL】オンラインサロン活動紹介–

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「いいものを作る→適正価格で販売する→適正価格を作り手に支払う」という、ものづくりをする上では非常に当たり前のことが、実は一番難しいことになってしまっている現状があります。それを実現できる仕組み作りを行い、この活動を広げていくことに、今後も取り組んで参ります。

これからも【AND WOOL】の活動を見守っていてください。どうぞよろしくお願い致します。



いつもありがとうございます。活動を、もっと多くの方に知っていただきたいと思っています。いただいたサポートは、それを「伝える」このnoteページを充実させるために使わせていただきます。これからもどうぞよろしくお願いします。