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【庭の藝術 01】 樹の''静域''にいざなう彫刻


作品名:インサイダー 作:アントニー・ゴームリー 所在地:霧島アートの森


10年近く前に鹿児島県霧島を訪れ、この作品と出会った時、
背筋が冷える怖さを感じた。
木立に溶け込む立姿が、何かの化身のようで、畏怖を感じたのか。
その怖さの本質はわからないまま、居心地の悪さを感じつつ、その場を去った。

最近になって読んだ、本作の作家アントニー・ゴームリーのインタビュー。
その中で語られた、言葉を聞いて、腑に落ちた。

「彫刻は、''時間の中''に存在する。そして、別空間にいざなう」

霧島でみた作品、ゴームリーの''インサイダー''は文字通り樹の時間軸の中に人を誘い込む怖さがあったのではないか。

きっと人は、樹のように深く時間とつながる、静的な世界には耐えられない。そんな樹の長い年月の静寂を想起させるから、この作品は「怖い」のだと思う。

この怖さは自然の木立の中に、たたずむだけでは感じ得ない。
作家の言葉通り、媒介となる彫刻の存在感があってこそ引き出された感覚なのだろう。そしてこの感覚はきっと、人を人たらしめるものであり、
自然との感覚を改めて結び直す、結び目となる。

このような藝術を通してつながり得る、
自然と人を結ぶ作品や場づくりを、
「庭の藝術」と題して、今後こちらで綴ってみたいと思う。


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