半沢直樹 アルルカンと道化師
大阪西支店に異動してきた半沢直樹は融資課長としての職務に追われながら2ヶ月が過ぎようとしていた。
ある日、担当していた美術出版社である仙波工藝社から融資の依頼を受ける。
だが、この仙波工藝社には大手IT企業であるジャッカルの田沼社長から東京中央銀行が買収提案を受けており、天敵である業務統括部の部長宝田から融資を拒絶し、買収提案を受け入れるよう圧力をかけられた。
半沢は買収されることを快く思っていない仙波工藝社の友之社長の意思を尊重して、融資稟議を通す方法を模索するがあの手この手で融資を拒まれることになる。
糸口を見つけるために仙波工藝社の歴史を探る過程で、すでにこの世にはいない天才画家、仁科譲の意外な過去にたどり着く。
そこには儚い人生を送った2人の若者が生き抜いた物語が存在し、仁科譲を援助し続けた田沼社長の隠された思惑が見え隠れしていた。
なんとか田沼社長からの買収提案をはねつけ、仙波工藝社への融資を達成したものの、買収を阻害した張本人というレッテルを貼られ、宝田から地方の子会社に出向させられるピンチに立たされる。
頭取が参加する全店会議の場で、半沢は宝田に対して起死回生の一手を喰らわせるのだが、果たしてその一手とは。
半沢直樹シリーズの最新作として発表された今作は、池井戸潤らしいミステリー要素がありながらも銀行という巨大組織に立ち向かう半沢直樹の姿が描かれている。
これまでの半沢直樹シリーズからすると、少しパンチが弱い気はするのだが、そういう展開になるのかと感心させられる構成は見事だ。
今作は初回の西大阪スチール事件の前に発生した話として刊行されたわけだが、個人的には「銀翼のイカロス」のあとの半沢直樹に興味があったので、そちらの続きを書いてほしかったなと少し残念に思えた。
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