種田山頭火を巡る(其中庵編)
前回の山口県防府市編からの続きです。
前回はこちら↓
●種田酒造場跡へゆきます
山頭火の生家跡より西へ約10km、種田酒造跡地に行くため、防府駅より1駅先の大道駅へ電車で向かいました。
大道駅の前に中高一貫の私立校・高川学園があるので、学生さん達と一緒に電車を降り、ここから約30分ほど歩きます(めちゃ遠かった!)。
果てしなく感じる道をひたすら歩きます。
私立の中学を主席で卒業した山頭火は、23歳の時に早稲田大学を神経衰弱のため(実家の経済状況が悪化したこともあり)中退し、故郷に戻り実家で療養します。
26歳の時に父(竹次郎)が種田家の再建を賭け、現・防府市大道にあった酒造を買い取り、種田酒造場を開業しました。
しかし山頭火35歳の時、種田酒造場は2年続けて酒造の酒が腐敗、倒産します。
借金に追われ父・竹次郎は行方不明、山頭火は俳友を頼り妻と子を連れ熊本へ向かうことになります。一家離散です。
”酔うてこほろぎと寝ていたよ”
そんな絶望的な状況にあった場所にしては、酒好きな山頭火らしい、のんびりした句の句碑がありました。
●朗読は↓
種田酒造向かいの個人宅前の句碑、伊予青石(愛媛県産の緑泥片岩)に山頭火の自筆の揮毫です(宮崎〜鹿児島間で野宿した時の日記から)。
●新山口駅
さてさて、いよいよ山頭火の生家跡より西へ20kmほど、大道駅より2駅ほど離れた新山口駅へ向かいます。新山口駅から約20分ほど歩くと、51歳の山頭火が庵を結んだ場所があるんです。
新山口駅から北口に進みたいのですが、反対の南口に山頭火の句碑があるので、まずは南口へ寄り道します。
ありましたありました!晴天をゆく旅人・山頭火の姿がありました!!
山口中央ライオンズクラブが建立された立派な碑です。この像の前でしばらく写真を撮ってたりして過ごしていると、地元のおじいちゃんに「これは、なんて書いてあるのですか?」と、話しかけられました(笑)。
僭越ながら”まったく雲がない笠をぬぎ”だとお教えさせてもらいました。
こちらも揮毫は山頭火自筆です。
朗読は↓
ちなみに北口の壁面にも山頭火の説明のようなものがありました。
●朗読しました(笑)↓
●其中庵(ごちゅうあん)
さあ!!いよいよ!!
とてつもなく行きたかった場所!其中庵へいざゆかん!!
にゃーーーーー!!!
其中庵です!!
テンションあがります!!
35歳で一家離散した山頭火。それからは熊本で古書店(雅楽多)を経営したり、東京で額縁の行商をしたりしながらも句作を続けます。
しかし、重なる不遇オブ不遇。そして神経衰弱。妻とも離縁。自殺未遂、出家、行乞(僧侶が乞食をして歩くこと)。山口、四国、九州を旅して歩く。
そして51歳、故郷の防府市の近くに”其中庵(ごちゅうあん)”を結びました。
其中一人と書かれた横長の扁額(へんがく)も見られました。
こちらの書は、なんと荻原井泉水(おぎわらせいせんすい)が書いたっぽいです。さすがにレプリカでしょうけど。
其中庵、とてもとても素敵な場所でした。
朗読は↓
道の途中の案内板に書かれた”誰も来ない茶の花がちります”を朗読させてもらいました。
●湯田温泉/風来居を探して
其中庵をゆっくり散策したあとは、新山口駅に戻り、そこから電車で6駅ほど先の湯田温泉へ向かいました。
其中庵で過ごすこと6年(といっても旅ばかりの生活は変わらず)、57歳の山頭火は老朽化した其中庵を捨て、懇意にしていた中原中也の弟たちの若い文学青年グループが探してくれた湯田温泉の四畳半の一軒家に移り住むことになります。
そしてそこを”風来居(ふうらいきょ)”と名付けるのですが、残念ながらその跡地は見つけることはできませんでした。
当時の山頭火と交流があった人を知る地元の方にお話を聞けたのですが、どうやら戦時の大変な時代に、酒を飲んで酔ってばかりいる山頭火をよく思っていない人も多くいたようでした。
酔った山頭火は友人達に句を書いて渡すことも多かったようですが、その友人たちはみな破って捨ててたらしいよ、なんて話もうかがいました。もったいない、、、。
山頭火お気に入りの温泉”千人湯”があったあたりに山頭火通りがありました。
湯田温泉にはなんといっても中原中也記念館がありますから、そちらにも寄り道させてもらい、街にある6箇所の足湯(無料)で足を温めながら句碑を探しました。
湯田温泉駅から、中原中也記念館を越え、しばらく歩いた場所にひとつ、句碑がありました。
”〇〇も〇〇も湧いてあふれる湯”
え、これ、街なかに堂々と刻んでいいのですか!?って思うようなストレートな言葉の開放的な句でした!!
こ、、、これは我が朗読団の若い女性達に、読んでとお願いすることはできませんね(笑)
温泉地ならではの飾らない句碑でした。
個人的には大好きな句です!!
●高田公園に句碑ありました
井上馨の旧邸のあった場所、高田公園(元・井上公園)に山頭火の句碑がありました。
”ほろほろ酔うて木の葉ふる”
揮毫は山頭火の自筆、大山澄太さんら友人達によって建立された安山岩の句碑です。
●朗読は↓
種田山頭火を巡る旅、これにておしまいです。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございます!!