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失敗から学ぶ(学生は未熟者でいい!)

大瀬「三か月前に始めたこのブログ、今回で25回目になります。結構なペースで進んでいますね。最近「毎回読んでいるよー」と言ってくれる人たちが増えてきました。「謎に包まれていたAAEEのベールがようやく剥がされた」と笑いながら感想を言ってくれる人もいます」

これまでは、朝楓を含めて学生アシスタントも僕も、交流活動やイベントの開催に向けた準備や参加者へのケアに忙しかったからね。活動について発信していなかったわけではないけど、発信スタイルがフォーマルすぎて、なかなか一般の人に読んでもらえなかった。年度末の報告書は100ページを超えたこともあるし、去年二人で書いたAAEEの学生主体の国際学生交流に関する論文だって気軽に読めるものではない。文字数35000字超え(笑)。その意味でこのブログを始めたのはよかったね。このブログの場合、「読者数を稼ぐ」みたいなプレッシャーなく、何の制約もなく自由に話し合えるスタイルがいいね。

大瀬 「今までに見た事ないスタイルとの声も聞きますね(笑)。それである人から、「AAEEの面白エピソードをたまに書いてほしい」というリクエストが来ました。その人曰く、「ブログにもたまに休憩が必要だよ。真面目な話ばかりだと、読み手も疲れてくる。」とのことです。読者からのリクエストと言うのはありがたいので、ぜひ挑戦してみませんか。面白エピソード特集。」

面白エピソードは数え切れないほどあるよ。いくらでも話題はあるけどね。でも、AAEEは「『交流』を通じた学び」の団体でしょ。面白エピソードもほぼすべて「交流シーン」から生まれてくる。登場人物が特定されてしまうので、残念ながら不特定多数の方々が目にするブログのような場所では慎重にしないといけない。「旅の恥は掻き捨て」って言うしね。でも、今思い付いた話をリクエストにお答えして一つだけするね。
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2013年に、関西のある学生団体のネパール支援活動をコーディネートしてあげた時のこと。ちなみに現地の学生との交流話ではないよ。

彼らはあるボランティア団体に所属していて、ネパールで活動したいけど具体案がないので助けてほしいと言ってきたんだ。そこで支援先を紹介した。その村には電気・水道・ガスが通っていない。女性や子供たちが毎日、明け方に山を下って川に生活用水を汲みにいく。早朝に往復3時間。僕は二度一緒に体験させてもらったけど、とにかく辛い。往復3時間歩くだけでも大変なのに、重たい水タンクを持ちながらの山登り。そこで村の人たちの要望を聞いた上で、村から20分くらい下ったところに山水を引いて「水タンク」を設置するプロジェクトを提案した。

大瀬 「何ですかそのお話は!初耳です。」

その団体のすごいところはね、支援するお金はすべて自分たちのアルバイトで稼ぎ出すんだ。支援に必要な金額が分かるや否や、参加メンバーで必死にアルバイトを重ねて資金を捻出する。渡航費も合わせるとバカにならない金額を稼ぎ出して、一番安い交通手段で現地にたどり着く。そしてただ黙々と作業して、ミッションを達成させて帰国する。その心意気を気に入ってサポートする事にしたんだ。

大瀬 「先生も現地まで同行されたんですか。」

僕はその時ネパールに住んでいたから同行したけど、実際に支援計画を立てたのは当時高校一年で、ネパールで好き放題していた長男。経緯は彼の当時のブログを読むのが一番。
ブログのリンク↓
http://yoshikinepal.blogspot.com/2013/03/blog-post.html

支援活動最終日に村で結婚式があってね。14歳と12歳の若さという衝撃の結婚式であったことは別の機会に回すとして、そのパーティーに誘われた日本からの参加学生はお酒をご馳走になったんだ。僕は別団体の活動をボランティアで手伝っているだけだから、彼らの行動は自己責任。ひたすら黙って眺めていたら、「ロキシーマオラ、マオラ」って叫びながら一人の学生が飲み過ぎて暴れ始めた。「酒ももっと持って来い!」という意味なんだけど、どうやら飲みながら村の人に習ったらしい。日本の仲間たちだけでは抑えることができず、現地の人々も笑いながら彼を抑え込んだ。しまいには病人搬送ようの竹でできた担架に彼を縛り付けてホームスティ先まで送り届けられた。
彼が暴れている様子を見て僕は怒ってしまった。笑いながら彼を抑えつけている日本学生たちをみて、「笑いごとじゃない!」と怒鳴った。何を言ったかは正直あまり覚えていないけど、とにかくリーダーを呼びつけて叱りつけた。その日の夜にリーダーたちが僕のところに深刻な顔で謝罪に訪れたのはよく覚えている。

大瀬 「約4年弱先生と活動を共にしていますが、関先生が怒った姿など見たことありません。笑っているとおっしゃっていましたが、相当な修羅場だったのでしょうね。」

翌朝、その村を発つ前に村の人々総出でお別れ会を開いてくれた。しかし僕はまだ腹の虫がおさまらない。前日のことがまったく記憶にない彼は、お別れの歌のギター演奏をのうのうとしていた。腹が立った僕は突然彼のもとを訪れ、「お前が昨日どれだけの愚行を働いたかわかっているのか。村の人がどれだけの手間暇をかけて地酒を作っているかわかっているのか。お前が無駄に消費した酒代を今すぐ村の人に返せ!」と怒鳴った。すぐ横では、僕の日本語を息子が村の方々にネパール語に通訳していた。
事情がわからない彼は、僕の怒鳴り声を「キョトン」と聞いていて、僕が話し終わると不機嫌そうに返してきた。「いくら払えばいいんですか。」「5000ルピーだ!(5000円程度)」と思い付いた適当な額を答えた。村では大金だよ。すると彼はバッグの中から5000円を出してこれでいいですかと村の人に渡そうとした。村の人は「そんな金はいらない」と大騒動になった(笑)。結局そのお金がどうなったかわからないが、そのまま現地を出発した。

大瀬 「お話聞いていても先生が怒っている姿を想像し難いですが、なんだか凄まじい展開ですね。その後は一体どうなってしまったのですか?」

ジープが出発して15分。二日酔いの彼は吐いた。そして数時間後の休憩所。小さな食堂のようなところで朝食を取った。朝食後、さあ出発しようという時にになって彼が静かにトイレに向かい再び吐いたんだ、そこで小さな事件が発生した。説明が難しいのだけど、彼が一度吐いて次に吐くまでのしばらくの静寂時間、そこの従業員がそのトイレを間違って外からロックしてしまったんだ。吐き終わった彼は外に出ようと思っても出ることができない。
僕がこっそり様子を見に行ったらすごい光景が目に入ってきた。

大瀬 「すごい光景、、、気になる一方で続きを聞くのが怖くなってきました。」

屋根のないトイレの壁を必死によじ登り、脱出を図っていたんだ。僕の視野には彼の首から上だけが目に入ってきた。これは後から聞いたのだけど、彼は自分だけ置き去りにされることを本気で恐れて無我夢中だったそうだ(笑)。それを見た僕は、「ざまあみろ」と思い、助けに行くどころか、彼を無視して車に戻った。

大瀬 「まさか、本気で置いていったのですか。腹の虫が治らなかったと言えども、さすがにそれは酷すぎませんか。」

ジープ2台に分乗していたのだけど、僕がさりげなく「出発前に点呼取った方がいいんじゃない?」と言った気がする。それで彼がいないことに気が付き、何らかの形で彼は救出されて無事戻ってきた。当然のことながら、僕は知らん顔。そして、そのままプログラム終了。
彼は最後、深刻そうな顔で僕に言い残していった。「僕の良さを関さんにわかってもらえなかった。」

大瀬 「まさかのそれで終わりですか。話を聞く限りでは、その人に悪気はなかったような気がするのですが。お酒の飲み過ぎは良くないですが、ちょっとかわいそうな気がします。」

ここで終わるような話ならわざわざここで話していないよ(笑)。この話には続きがある。時は数年過ぎて彼が大学を卒業する年度になった。突然彼から連絡が来たんだ。「あの時以来、いつかリベンジしようと心に決めて自己成長に努めて参りました。今回、ネパールで自分がリーダーとなって支援活動をしたいので、もし可能であればご協力いただけませんか」と。
「喜んで協力する」と即答したよ。それで、村に人々に連絡したら大喜び。数年前のあの騒動のおかげで彼は「ミスター、ロキシーマオラマオラ」として有名人となっていた。「学生生活の集大成」と気合い満々の彼が下見と称して、プログラム開始前から一人で村に入ると、なんと、かつてないほどの大歓迎をされたんだ。遅れて到着した僕は驚いたね。彼とは数年前にネパールで残酷に突き放して以来の再会だよ。彼はネパール語で村人たちと楽しそうに会話をしながら働いていたんだ。見違えていたよ、随分と成長した。そして・・・彼の素晴らしいリーダーシップで、その村の中に新たな「水タンク」を見事に完成させた。村人と日本からの学生の「美しい国際協力のカタチ」がそこにはあった。

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大瀬 「感動的なお話ですね。「ミスター、ロキシーマオラマオラ」と呼ばれているのはインパクトがありますが、ネパールの人々の心の温かさはもちろん、最初にネパールを訪れた時はまだ未熟だった彼が、あの時の経験と先生から受けた態度をバネに成長を遂げられたんですね。」

僕自身の学生時代を振り返ってもそうなのだけど、僕は基本、学生って「未熟」だと思っている。そしてその「未熟さ」が良いところなのだと思う。そう言われると学生のみんなは面白くないかもしれないけど、考えてみて。豪快に失敗できるのって授業料を払っている学生の時だけだと思うよ。一度社会に出て、給料をもらい始めたら責任が伴うから失敗できない。子育てだって失敗できないでしょ。だから、学生の間は失敗を恐れて行動しないより、失敗を恐れずに経験を積んだ方がいい。失敗から学べる事は本当にたくさんあるからね。
AAEEは、失敗する辛さを共有したり、そこから這い上がる人を応援したり、最後には失敗自体を笑い合って語れる、そんな空間であってほしいと思っている。

大瀬 「この話、全く休憩記事ではないですね。まさにAAEEの一番大事なところをついていますね。失敗を恐れずに挑戦していく。この精神は私自身もAAEEを通して大きく学んでいる事です。もちろんリスクヘッジをやらないわけではないですが、できない理由を考えるのではなく、挑戦し続ける精神こそが学生自身の成長、そしてAAEEの成長にも繋がっていると感じます。団体が大きくなっていっても、この考え方は忘れずにいきたいですね。」

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