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大瀬:先生、お久しぶりです。2024年もどうぞよろしくお願いいたします。2020年、世界中でコロナが大流行してから気がつけば 3年。2023年は久しぶりに、VJEP、ベトナムで国際学生交流プログラムを開催することができましたね。
先生もAAEEでの活動はもちろんのこと、海外渡航の多い一年になったのではないでしょうか。

関:そうだね。年末も、12月22日から1月1日までバングラデシュのダッカに滞在し、バングラデシュ・日本国際交流プログラムであるBJEP2023 (Bangladesh Japan Exchange Projectを開催していた。

大瀬:BJEPといえば、2020年、まさにコロナ禍をきっかけにオンライン開催で始まったプログラムですね。そういえば昨年も先生はバングラデシュを訪問していましたが、あれは今年のBJEPの準備だったのですか。

関:まさにそうなんだ。国際学生交流プログラムを開催する前には必ず下見をするようにしているから。去年の段階で現地の人々に取ってコロナは過去のものになっていた。日本は他のどの国と比べてもコロナ対策を厳しくしていたから、若者たちは世界に遅れてしまって可哀そうだったね。

大瀬:何はともあれ、実際に日本から学生がバングラデシュに行き、BJEPとして開催できたのはとても感慨深いですね。

関:2012年にバングラデシュの人々と「バングラデシュで国際交流プログラムを絶対にやりましょう!」と決意し、2015年初開催を目標に進めていたんだけど、
現地で発生したISによる国際テロを契機に治安が悪化し、さらにその後新型コロナウイルスのパンデミックもあり、なかなか現地開催を実現することができずにいた。実に11年もの時を経て、ようやく念願のバングラデシュでの国際交流プログラムを開催できたことは、AAEEにとっても大きな一歩になったよ。

大瀬:今回開催されたBJEP2023はどのようなプログラムだったんですか。

関:プログラムの特徴を一言で表すなら、「心と心が繋がる」ことに専念したプログラムと言える。滞在期間に様々な活動に取り組んだけど、目標は一貫していた。

大瀬:「心の交流」はAAEEの取り組みでは一貫していますけど、参加者にとってはあいまいでわかりにくかったのではないですか。

関:わかりにくい、というよりも「難易度の高い」プログラムだということを参加者には伝えていた。というか、参加を決めたメンバーと事前にやり取りをしてみて、この学生たちは難易度の高いプログラムに耐えうると判断した。何が難しいかというと、「レールが敷かれているか敷かれていないか」の微妙な所を歩くということなんだ。具体的に言うと、日々の活動内容は一応決まっているのだけど、参加者の雰囲気やその場の乗りで活動内容が臨機応変に変化していく。普段からレールに沿って生きることが常態化している人は頭が大混乱してしまうようなプログラムと言える。

大瀬:まさに先生が大学で担当する「異文化コミュニケーション」の授業の実践版のような展開ですね。

関:バングラデシュのメンバーは2020年からAAEEで活動しているので、AAEEの活動目的をよく理解している。だから、プログラムが予定通りにいかないことを見越した上でフレクシビリティに飛んだ旅程を作ってくれた。そして実際に始まってみると予定は変更しまくり(笑)。形式を重視する人から見たら無茶苦茶なプログラムに映ったに違いない。しかし、今回のプログラムの目標はさっきも言ったけど「心と心が繋がる」こと。もう少し詳しく言えば「両国の学生が互いの視点を取り入れながら共に思考を深め成長していく」こと。この観点では常にブレなかったと確信している。たぶん参加学生が得た学びの多くがこの目標に関連していると思うよ。

大瀬:なるほど。間もなく参加報告書が提出されますが、読むのが楽しみになってきました。ところで今回のバングラデシュのメンバーは2020年から共に活動しているとのことですが、少し説明していただけますか。

関:突然なのだけど、バングラデシュと聞くとどんなイメージがある?

大瀬:私はバングラデシュを訪れたことがありませんが、国としてのイメージは後発開発途上国ですかね。(2020年にはじめて開催したオンラインプログラムも通信トラブルがオンラインプログラムでの大きな障害となっていましたね。)

関:彼らが生まれた環境は私たちと比べて決して恵まれていたとは言えないだろう。さらに彼らは貧困家庭に育ちながらも必死に努力して国のトップ大学に合格し、入学後も驚くほど劣悪な環境の寮(10畳程度の部屋に20名以上)で暮らしながらも超優秀な成績で学部生活を終えた学生たち。この3年間、彼らとはオンラインで日常的に話し合っていたけど、彼らのハングリーさは凄くて、目の前にある点のような小さな可能性でも何とかものにしようとくらいついてくる。そういうことを小さな頃から実践している人たちであることがよくわかった。

大瀬:ニュースや学校の授業では後発発展途上国というと「貧困」ばかりに目が行きがちですよね。でも、実際にそこに暮らす人たちは与えられた環境下で一生懸命生きている。私が大学1年生の時に参加したネパールでのプログラム(Mero Sathi Project)でもそのことを強く感じ、現地の学生たちの姿勢に大きな刺激を受けました。

関:確かに、バングラデシュという国は日本と比べたら明らかに発展途上の国で、自国はこのままではダメだと危機感をもっている人が少なくない。若者たちもそうだ。ただ、そのフラストレーションが人々の力になっているとも言える。とても元気なんだよ。日本の若者たちに比べて。彼らを見ていると、日本の学生たちはある意味満たされてしまって「もうこれで十分」って思っている人が多いなぁって思ってしまう。

大瀬:あまりにも満たされてしまうと、モチベーションが上がらなくなってしまうというのはよく言われることですよね。

関:もう一つすごいなぁと思うのは、彼らが精神世界をとても大事にして生きていること。特に、自分と自分以外の人々(神、家族、友人など)との関係性や絆を何よりも大切に考えている。このような人々の生きる社会はとても暖かく見えるんだ。たぶん、バングラデシュの人たちに僕のこの見解を伝えると、「その通り!」と言ってくれると思うよ。僕は彼らの生きる社会をとても羨ましいと思うし、だからこそ日本に暮らす若者にも見てほしいんだ。

大瀬:私も、ネパールやベトナムで同じようなことを感じてハッとさせられました。彼らは学力や語学力だけでなく、想像力や柔軟性、対話力といった、生きていく上で必要なスキル、AAEEの交流メソッドでも出てくるような多文化共生力を既に十分に身につけているような・・・。

関:まさにそうなんだ。

大瀬:ところで、先生のインスタをずっと見ていましたが、随分と楽しそうにしていましたね。

関:それね。超楽しかったから。で、楽しみながらも超重要なことに気が付いた。このような大きな気付きは数年に一度しかない。これに気付いただけでも満足している。

大瀬:新たな大発見ですか・・・。

関:何よりも自分の感情を解き放つことが大事!最近の僕はそれができていなかった・・・

大瀬:バングラデシュでは自分の感情を解き放っていたということですか。

関:そう。繰り返しになるけど、「心の繋がり」をテーマにしていたでしょ。だから僕自身もそれを目指して学生と一緒になって活動したんだ。歌ったり踊ったりを含めて。そしたらいつの間にか、気が付けば、心が繋がり出す感覚を覚え始めたんだ。感覚を言語化するのは難しいけど、分かりやすく言えば年齢差、性差、国籍、宗教など気にならない、まさにダイバーシティを受け入れている感覚だね。とても幸せだった。
それでね。ここからが大きな気付きなのだけど、最近の国際交流活動を行う際に「プログラムを上手くいかせる」という技術的な部分に目が向いてしまっていたんだ。国際交流プログラムをもう50回近く運営しているでしょ。それなりにノウハウもできてAAEEのみんなと理論化も進めている。そっちに目が行き過ぎて初心を忘れてしまっていたね。僕がなんでこの活動を長く続けているかと言えば、僕自身が得た感動を皆と共有したかったから。それを思い出したよ。数年ぶりに。

大瀬:確かに、先生は一歩身を引いてみんなの行動を観察している感じがありますね。でも、大学教授としてそれが自然なのではないでしょうか。

関:大学教授という立場ではそうした方が自然に見えるのかもしれないけど、交流の場では、その空間にいる人々が「嬉しい!」「楽しい!」とか「悲しい!」とか気持ちを共有することの方が「立場を明確にすること」よりずっと大事だと思う。認識が違っていたら申し訳ないのだけど今回、僕が学生たちと一緒に同じように活動に取り組んで「いやだな」と思った人はたぶん誰もいないと思うよ。心が繋がっていたから。

大瀬:先生の仰ることは「言われてみれば確かに」なのですが、しかし、先生、学生と同じように活動をするなど体力的にも精神的にも厳しい部分があったりしませんか。お体には気を付けてくださいね。

関:確かに気を付けなければいけないね。でも、感情表現を素直にできる場があるってすごくいいことなので、できるだけ続けていきたい。

大瀬:お話しを聞いていて、私も参加したくなってきました。学生に戻りたいきもちです。

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