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【小説】終焉。僕は君らとこの物語を変えられるの、かな?

開幕章:夜に輝き空亡そらなきの悪夢


光が瞼の裏まで届く。僕はその光で目を覚ます。
だが、今は朝ではない。夜だ。
誰しもこの光を目にした瞬間冷や汗が出るだろう。
いや、それ以上か?
何故かって?
僕が目にした光は太陽でも月でもない絶望が放つ輝きだからだ。
遠方には街が見える。
その絶望は紅くゆらゆらと煌めきながら、街全体を照らし堕ちていく。
人々が逃げ出す。
その街の人々を百鬼夜行ひゃっきやこうの妖怪としたら…百鬼夜行の最後。
太陽から逃げる妖怪のようだ。
太陽。それは陽光の元生きる。生きとし生けるモノにとって祝福の輝き。
神に例えるなら慈愛に満ちたヘスティアー様だな。
でも、この輝きは違う。神にしたら…悪神アぺプだろうか?
「隊長報告があります。」
後ろから声が響いた。
後方にはテントらしき建物が複数展開されている。
その中にある一際大きいテント。
そのテントは中のランプの光で外から様子が見える。
中にはたくさんのコンピューターなどが設置してある。
「先程の攻撃により…街の奪還に向かった精鋭・通常部隊が全滅です。少数精鋭第零部隊は派遣されていないので被害はありません。」
「あぁ…そーか」低い声が響く
「いくらこちら側の戦力を潰したいからと…街に居る自国の兵と捕虜までも犠牲にするなど…狂ってる…クソッ!」
隊長の怒りのこもった声と机を叩く音が響く。
「隊長大変ですよ!一度本国に連絡を…!」
一人の隊員が無線を手に取り繋げた。
「馬鹿者!今すぐ無線を切らんか!」
途端、隊長が大声を上げた。
「無線を使えば敵国にマークされる…」
無線を手に取った隊員が顔を真っ青にした。
「あぁ…申し訳ございません!」
すごい勢いで額を床に付けている様子が見えた。
「みなよく聞け。撤収だ。それも早急にだ…」
隊長は脱力したような声で話した。
僕も急ぎで武器の片づけをすることにした。
ふと気付いた。
周りが少し明るくなってることに。
「おかしいな、まだ夜明けじゃないはずなのに…変…いや、片付けしてるからそのランプの光漏れか…」僕はそう思った。
ガチャンッ!
横で木箱らしきものが壊れる音が聞こえた。
僕は振り向いた。
木箱が壊れ、中に入っていた銃弾が散乱しているのが目に入った。
ある隊員が手にしていた箱を落としていたのだ。
僕はその隊員になにをしてるんだと言いに近づいた。
しかし、その隊員は動かない。
弾を拾おうともしない。ただ硬直していた。
しかも、隊員は体が震えていたのだ。
「おい、お前なにやってんだ。大丈…」
僕は不意に上をみた。いや、見てしまった…
目に入ったのは夜に輝く星なんかじゃない。
       絶望だ。
ただ人々の命を奪うために作られた物。
その場にある生命を全てを殺す兵器。
それが僕らの居る場所に落ちてくる。
僕もその隊員と同じように硬直し思う。
「はは…ここだけの為に2発目を放つとはな…」
そして僕は…いや、僕らは絶望と共に光に包まれ…まぶたを閉じた。


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