活動・参加に対する偏見について
「機能訓練型の介護予防は間違っていた。これからは活動・参加型が重要だ。」
このことについて、概ね異論ありません。
ただ、少し偏った考え方をする人もでてきています。
個人的には「目標(活動・参加)のない機能訓練による介護予防は間違っていた。機能訓練をおこなう場合は、目標(活動・参加)を明確にして行う必要がある。可逆性のない機能低下にはこだわらず、活動・参加の促進を。」と言いたいです。
介護予防において、機能訓練に辺重した関わりでは成果が出なかったという経緯がありました。
そこで、社会参加こそが介護予防になるという考え方のシフトが起きているのが現在です。
「活動・参加」を標語として、いかに社会参加させるかということが重要視されています。
このことについては、私も大賛成です。
一方で、考え方が活動・参加に偏りすぎて、健康状態や心身機能を軽んじて考えてしまう風潮も感じます。
人の生活を構成する歯車は健康状態・生活機能(心身機能・活動・参加)・背景因子(個人因子・環境因子)があります。
これらは相互に影響する関係性にあります。
生活を促進する場合、「どの歯車から回すのが望ましいか」ということは人それぞれです。
例えば、介護予防をおこなううえで、慢性・進行性疾患を有する方や高齢者に対して心身機能に偏ったアプローチをこなっても、その歯車はなかなか回りにくいです。
こういった場合は、活動・参加を中心に歯車を回していくのが良いでしょう。
では、心身機能を中心に歯車を回すケースはないのか?というと、そうでもありません。
健康で動ける体は活動・参加を促進するとても重要な因子なので、改善の可能性がある場合はアプローチが必要です。
この場合、改善の可能性の有無を見極めることは、重要なポイントになります。
活動・参加に焦点を当てた場合、手段ではなく目的を重要視することになります。歩くのが不安定になったら歩行器を使えばいい、歩けなくなったら車椅子を使えばいい、車椅子をこげなくなったら近所の方に押してもらえばいいなど。
しかし、「自分らしく生きる」ためには手段も大切な要素になります。
単に社会参加することだけではなく「どのように(例:歩いて)」社会参加するかということです。
こういったケースにおいては、心身機能の歯車から回すことが必要な場合もあります。
十把一絡げに「活動・参加」から入るのではなく、個人因子や生活機能の予後予測をふまえて、機能訓練を積極的におこなうべきケースもあることは忘れてはいけません。
そもそも目的のない機能訓練が横行しています。機能訓練が悪いのではなく目的のない機能訓練が悪いというところは、活動・参加云々の前におさえておきたいですね。
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