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story その続き

ユウは読みかけの本を
膝の上で閉じた
小説だと分かっているのに
他人の人生に
一喜一憂することもないのに
意地の悪い作者だ…
結末が読めてしまえば
もう頁をめくる意味もない
やるせないじゃないか
なんだよ…
主人公に
肩入れする気はないけれど
やるせないじゃないか
ばかみたいに
一生懸命になって
最後がこれかよ
そこまで思って
ユウはまた
その続きが気になった
その続きは…
想像なんて
たかが知れてる
素人の空想なんて
簡単に裏切られてしまえばいい
その先を
もう少し…
例え分かりきった話の結末でも
頁をめくる意味はある
最後の一文字が語り終えるまで
ストーリーは続いているんだ

ことばはこころ。枝先の葉や花は移り変わってゆくけれど、その幹は空へ向かい、その根は大地に深く伸びてゆく。水が巡り風が吹く。陰と光の中で様々ないのちが共に生き始める。移ろいと安らぎのことばの世界。その記録。