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ふるさと思出昔語り『きぴちょ』

 おらのおふぐろこごさ嫁いで来だ時の話す。

 もうずうっと前さ亡くなったんだきともその当時は明治生まれのおっぴさん生きでだの。

 そんで『"きぴちょ"どごさいったべ』って言ったんだど。

 んでもおらのおふぐろ分がんねくてなんだべなぁど思っていだんだど。

 おらのおふぐろも昔気質のおずんつぁんど暮らすてきたすとだがら、こごらの言葉は分かるんだきとも、そんでもしゃねがったんだね。

 こないだ家族でこの話になったんだきともこいづはもう死語だなっておらのおやずも言ったぐれぇ使わねぐなった言葉なの。

 なんとなぐさびすい気するっちゃね。

 "きぴちょ"つのはお茶っこ飲む時使うやづさ。毎朝お仏様さお茶っこあげで拝む時さも使うがらおっぴさん探すてだのね。

 さぁて、もう分かりすたべ。"きぴちょ"っのは急須のこどっしゃ。今語っても分がんねすとのほ多いがもしゃねげっとも、使ってみだら懐かすがらいでちょっすた話題さなっかもしゃねね。

 おらのおふぐろは今でも若げ頃のごど思い出すどこの話すすて懐かすいどって笑うのっしゃ。

 まんず今日はこごまで。体さ気つけで過ごさいんよ。んでね。

ことばはこころ。枝先の葉や花は移り変わってゆくけれど、その幹は空へ向かい、その根は大地に深く伸びてゆく。水が巡り風が吹く。陰と光の中で様々ないのちが共に生き始める。移ろいと安らぎのことばの世界。その記録。