story 農耕
梅が散り始めると
桜が一斉に満開になった
数日前に堆肥を施した畑に
畝を立てる
等間隔に穴を掘り
種芋を入れ土を被せる
鶯にひばり
向こうの方では
やまばとが鳴いている
風に揺れる菜の花
雪解けの山肌に
もうすぐ残雪の描く
白馬が駆ける
それまでに
田おこしをして
苗を育てる
掘り払いを済ませた用水路に
水が引かれると代掻きが始まる
田んぼは一面湖になり
空を映し出す
そうして田植えを終える頃には
夜風に乗ってカエルの
大合唱が聴こえてくる
初夏である
ことばはこころ。枝先の葉や花は移り変わってゆくけれど、その幹は空へ向かい、その根は大地に深く伸びてゆく。水が巡り風が吹く。陰と光の中で様々ないのちが共に生き始める。移ろいと安らぎのことばの世界。その記録。