【神になるための入門講座06】宇宙の神には、明確なルールがある。


 人である僕たち私たちが「神」になろうとする、なんとも恐れ多い連載も中盤になってきました。

 最初からお約束しているとおり、最終回にはあなたにも「神になって」もらうわけですが、連載を重ねるごとに「なりたい神の姿」がはっきりしてきたのではないでしょうか?

 前回は、特に日本における「神のなりたち」を歴史的に振り返りながら、そうした「日本の神々」のようになりたいかどうかを確かめたところです。

 しかし、「アニミズム=精霊のような神」も「自然神」も、僕たち私たちが願うようなものではなさそうです。


 というのも、僕たち私たちは、現実世界では、どうしようもなく不幸のズンドコにあるようなドンづまりの小さな人間であって、そのため「チート術」として

「神になってやる!神になって周囲を見返してやる!」

と思っているわけですから、もっともっと巨大なパワーを必要としているのです。気に入らない者を蹴散らしてしまい、バカにするものを滅ぼしてしまうような、強烈なエネルギーを持った神になりたいのです。

 そんな時に、やはりお手本にしたいのは、神話の神々ではなく、

「宇宙の創造神」

なのではないでしょうか?

 もはや宇宙の外側にあって、このセカイすべてを作ってしまったような、そういう

「そいつ、つええのか?」

と悟空も驚くような存在になりたいものです。


 宇宙を創造した神というのは、一般的には聖書の神が有名です。7日間をかけて宇宙を創造して作り上げ、最後に人間を生み出しました。

 とはいえ、聖書も神話のひとつですから、「このセカイを生み出した神」がいることは事実かもしれませんが、「それがすなわち聖書の神」であるかどうかはわかりません。

 ちょっとわかりにくいかもしれませんが、「宇宙の創造者」がいると認めても、それが聖書に書かれた神(エホバやヤハウェ)とおなじものかは、証明しづらいということです。


 それでも、”宇宙を作ったつええ奴がいる”、とまずは認めてみましょう。そいつは何を考えているのか。そいつはどんな奴なのか。そうしたことはじっくり観察していると、ある程度は見えてきます。


 まず、セカイの創造神は「回す」のがとても好きです。宇宙では銀河が回っていて、星々も回っています。公転もするし、自転もします。

 原子や分子も回っているそうですから、どうもこの神は

「モノを回しながら形作っている」

ことは確かなようです。

 別にモノを回さなくても、セカイは成立すると思うので、この「回っている」というのは、創造神の趣味なのかもしれません。

 また、回っているがゆえに「丸いもの」「丸くなる」ことも、この神は好きなようです。天体も分子も四角でも構わないのに、なぜか「丸」くなるようになっています。細胞ですら、丸っこい形になりがちです。


 この神が定めたルールは明確です。

■ なにか小さな粒つぶを造り、それがあつまってモノができるようになっている。

■ 粒つぶ同士が関係性をもって、それによってモノの性質が生まれるようになっている。

■ 粒つぶは回る。回って動いている。今のところ「止まる」ということは個体では生じているけれど、全体では起きていない。

■ 粒つぶ同士が関わったり、反応しあったり、くっついたり離れたりして変化することを大事だと思っている。そのままでずっとあることは認めない。


 もちろん、他にもたくさんありますが、「粒つぶが動いている、回っている」ということろは意外と重要です。宇宙のすべてが止まってしまうことは今のところなさそうなので、止まるとどうなるのかわかりませんが、神は今は「回す」ということを意図しているらしいことはわかります。


 たとえば、理論的には絶対零度になると、原子の運動が止まります。つまり、粒つぶの回転が止まるわけですね。粒つぶが回らなくなると、互いの関わりや反応も止まりますから、セカイは停止します。

 宇宙全体が停止するときは、すべての回転が止まる、ということなのだと予測できます。

 ということは、神が人間や地上のあらゆるものを動かしているエネルギーのみなもとは、ひとつには「熱」が関係あると思われます。

 太陽があるから、熱がずっと地球に降り注いでいるので、粒つぶたちは回転することができて、すべては成り立っている、ということが言えるかもしれません。


 太陽はいつか膨張して爆発するそうです。ということは、神は「地球やその上で生きているすべての生命に対して、終わりの時」を設定していることがわかります。

 あるいは、宇宙もどんどん膨張していて、最初は膨張していない「点」があっただろうと予測されているので、その膨張を「ビッグバン」と科学者は呼んでいます。

 つまり、神は「はじまりの時」も設定していることがわかるのです。


 宇宙の創造神は、明確に「スタート」と「ストップ」を設計しており、私たちはその中間地点にいるので、たまたま動いているということがわかります。

 僕たち私たちが神になるとすれば、セカイのすべてを「おしまいにする」こともできるし「再スタートさせる」こともできるのじゃないか?と推測することができるわけです。そして、その内部でいろいろなものを回転させて、ものごとを作り上げることもできそうです。


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 さて、ここで全然関係ないですが、ニンテンドーの話をしましょう。宮本茂さんという方がいて、スーパーマリオの生みの親として有名です。

 この人、実際のプログラミング以外の作業を一人でやってのけ、まず「ドンキーコング」を完成させました。そこから「マリオ」や「ゼルダ」などのヒット作を創造してゆくことになるのです。

 コンピュータの世界の「内部」を人類は創造することに成功しました。マリオやドラクエの世界の内部では、プレイヤーは自由に動き回ったり、生きて動くことができます。

 そして、その外側には、マリオの世界からみたら「神であり、創造者である」宮本さんなどの開発者がいるということです。

 コンピュータは、0と1の電気信号で動きます。0と1の粒つぶというとわかりやすいでしょう。その粒つぶがどんどん組み合わさって、ゲームの世界が出来ています。0と1の関係性が無限に増殖して、ゲームの中のセカイが出来上がるのです。

 私たちの住むセカイは、「止まった」ことがないので意識できませんが、コンピュータのセカイは「止める」ことができます。「動かす」ことも可能です。

 その仕組みは簡単で、「電気を流すかどうか」です。電気を流すと、電子が回ります。コンピュータの回路の中をぐるぐる回って、電子がうろつきます。それによってプラスからマイナスへ電流が回り、あるいはマイナスからプラスへ電子が回って「マリオ」が動くわけです。

 電子の動きを遮断してやるとマリオは止まります。私たちも同じで、太陽からの熱を遮断してやると、たぶんセカイは止まるでしょう。


 こんなふうに、コンピュータの世界から「外側」を見ると、私たちのセカイの外側で神がなにをやっているかがわかります。

 コンピュータのプログラムを組み立てることは、宇宙の創造と似ているのです。


 もしマリオがいつか高度なプログラムに進化して、神を意識するようになったら、宮本さんやその他のプログラマたちを「創造神」として崇拝するようになるかもしれません。

 逆に宮本さんたちやその後輩は、新しいマリオをどんどん改造して、もっともっと自由に好きなように変更することだってできます。プログラマは、自在にキャラクターを動かし、支配することができるのです。もちろん、生み出すことも滅ぼすことも自由です。

 勝手に進化するようにプログラムしたデータが、暴走するようになったら、電源を落としてリセットすることも可能です。

 ハルマゲドン=最後の審判ですね。


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 あなたが宇宙の創造神になった時には、これと同じことができます。宇宙の外から人類を見て、(その中には宇宙人とか宇宙虫とかもいますが)好きなように操ることができます。

 かわいいあの子のシャワーシーンを覗き見することだって自由です。けれど、それがうれしいこと、欲望を満たせる行為かどうかは、よくわかりません。

 なぜなら私が神になったとして、ピーチ姫の入浴シーンに欲情するかは、なんとも言えないからです。

 マリオに抱えきれないほどのコインを持たせることだってできるし、マリオの城を大豪邸にだってできますが、それで神であるあなたやわたしがうれしいかどうかはよくわかりません。

 せいぜい、「無限アップ」の裏技を見つけたくらいには喜ぶかもしれませんが、だからといって人間だった頃にドンづまりだった僕たち私たちが悔しい思いを晴らせるかどうかは、なんとも言えないのです。


 人生がドンづまりの引きこもりの青年がいるとして、彼がどれだけゲームで高得点を出しても幸せになれそうにないのは、こういうことなのです。


 それでも、あなたは神になりたいですか?それとも、そろそろ「早く人間になりたーい!」でしょうか?

 ベム!ベラ!ベロ!

(つづく)






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