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義母が大木凡人 vol.2

凡人(義母)が神奈川の僕らの家に転がり込んできて、3ヶ月くらい経過した。

一向に働きに出る気配がない凡人に業を煮やした僕は、ついに嫁に「お義母さんっていつになったら働くの?」と聞いてみた。

すると嫁は「そろそろ働くと思うよ」と軽い返事で、不思議とその後くらいから凡人は職安に通うようになった。

職安に通い始めて1ヶ月もしないうちに、歩いて10分のスーパーの鮮魚売り場で採用が決まった。

凡人は中国地方のスーパーで働いていたときも鮮魚コーナーでせっせと巻き寿司を巻いていたらしく、年齢的にもまだまだ若いこともあって、スーパーの鮮魚コーナーの期待のエースとして迎え入れられたのだ。

凡人が明日からスーパー勤務という日。凡人に「お義母さん、明日からお仕事なんですね」と声をかけたら、「そうなんですよ!!」と何故か少し怒った口調で返事がきた。

僕はその時、その意味を計りかねたけど、今振り返ると「あなたが養ってくれないから!」という意味が込められていたように思う。

とは言え、明日からお仕事頑張ってと、夜はささやかながら凡人の好きなレストランで乾杯をした。

次の日から凡人は朝は7時に出て夕方は3時頃帰ってくるパート生活を頑張っていて、僕も一安心していた。

夕食時にその日にパートで起きた話を聞くのが日課になって、「店長から早朝勤務を打診されたが断った」とか「忙しくて残業をお願いされたけど断って帰ってきた」とか「昼食食べながらあー早く帰りたい」などボヤいた話を聞き、そんな消極的な勤務態度で大丈夫か心配になったのだが、嫌な予感は的中し、1ヶ月後に凡人はパートを辞めて帰ってきた。

凡人によると、バイトリーダーならぬパートリーダー的なおばちゃんと馬が合わなかった、と言っていた。

確かに、早番や残業を断る人がシフトにいたら他の人に負担が行くので、パートリーダーのおばちゃんが凡人に冷たくするのも納得できる。

凡人がなんでそんな消極的な勤務態度だったかだけど、凡人にとってパートは体裁的に最低限こなしていれば良かったからだと思う。

お金を稼いで僕らに迷惑をかけないように老後資金を稼ぐ事が目的ではなかったのだ。

また凡人の見栄っ張りな性格も災いしていたのではないだろうか。

エルメスやシャネルが好きで、食べ物だってとらやの羊羹や今半のすき焼き、千疋屋のフルーツ、とにかく有名店やブランド物なら美味しいし素敵と言う。お金ないのに。

そんな見栄っ張りな性格だから、パートで一生懸命働くというスタンスを取れずに「お金にも困ってなくて悠々自適だけど、時間があるからパートしてます」みたいな演出をし反感を買ったのだろう。

とにかく、それから凡人は1年間無職。

夕飯だけは作ってくれているけど、正直凡人のご飯は美味しくない。

夕飯を作るだけって言うと、世間のお母さんから怒られるかもしれないけど、でもそれで衣食住与えられ、毎晩お酒を飲み、食後にすぐ寝て、ブクブク太って、起きたら録画しておいたバラエティを見て、今日が何曜日か忘れる生活をしている凡人に助けられているのは夕食を作らなくていい嫁だけで、少なくとも僕は日々ストレスを感じている。


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