義母が大木凡人 vol.4
凡人(義母)が転がり込んできた初日の事。この時はずっと働きにも出ず同居させられるなんて誰が想像できただろう。
僕は張り切って凡人の為にパーティの準備をしていた。
凡人は軽の車を持っていたので、それを神奈川に持ってくる必要があって、引っ越しのタイミングで凡人が住んでいた中部地方に嫁が新幹線で向かい、二人で交代交代の運転で2日かけて我が家のある神奈川に到着した。
パーティと言っても、子供の幼稚園の送迎や家事をしながら、仕事もやりつつだったのでほとんど準備は出来ず、外食の予約と、ちょっといいお酒をネットで注文しておいた。
お酒は東洋美人というもので、凡人が過去に美味しいと聞いていたのを思い出し、その東洋美人の一番纏というものを冷しておいた。
夕方、ラインで連絡があった予定時刻に、嫁と凡人が無事帰ってきたことに安堵し、子供も2日ぶりのママに甘えて、僕も凡人に極力気を使わせないようつとめて明るく迎え入れた。
凡人の荷物を空き部屋に運び込み、少し一服してご飯を食べに行き、ご飯から帰ってきて東洋美人を出した。
凡人はこの東洋美人を大層喜んでくれて、おいっしいわーとガンガン飲んでて僕もお酌に忙しかった。
うちはご飯が早めで5時とか6時に夕食を取っているのだが、なのでこの日も飲み直しとは言ってもまだ8時だった。
ちょうどその時間は池上彰のニュース解説番組なんかをやっていて、凡人が時事ニュースについてアレコレ意見を述べており、僕と嫁ではそういう時事系の会話はしないので新鮮で、「お義母さんがいてくれてこういうお話聞けて楽しいです」みたいな事を伝えた。
東洋美人も空になってワインを開けて、嫁がチーズを出してくれて、更にお酒が進み、テレビも次の番組に移った頃だった。
ダイニングチェアに座った凡人がおもむろに片方のお尻を浮かし、こちらに向かって
ぶぶうっ!!!
と放屁をしたのだ。
僕は唐突の出来事に、脳のCPUが完全にオーバーフローした。
「義母がでっかいおならをした」
「お尻をこっちに向けて」
「でも今日は初日・・」
僕の脳内では行き場を失ったこの3行だけがグルグルし虚空を見つめていた。
ハッと我に返り、まずい!ここで動きを止めたり不自然なリアクションは駄目だ!
と自らを律し、ただどう振る舞うのが正解なのかわからず、今思うと一番正解から遠いリアクションをしてしまったように思う。
ぎこちない笑顔を凡人に向けながら「お、お、お元気ですね」
凡人はパーッと顔が赤らみ、そして僕もしまった!と思いパーッと顔が赤らみ、二人で下を向いてしまった。
流石に横で子供をあやしながら梅酒を飲んでいた嫁も「お母さん!娘の旦那さんの前でおならする?」と呆れていたが、凡人は「ウヒヒ」だか「ゲヘヘ」だとか、とにかくなんとも卑しい笑い顔を浮かべていた。
僕は実は7年間も一緒にいるというのに嫁のおならを聞いたことが無いのだが、嫁よりも先に義母の放屁音を聞くと思わなかったし、しかも片ケツを浮かしてこちらにブッ!としたあの感じは確実に確信犯であって、ある種「私同居させてもらうけど、家主に気負わずここまでイッちゃいます!」的なメッセージにも思え、この義母との同居の将来を思い畏怖した。
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