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青春18切符なんて知らんくてさ

年末

早起きをしたら、早く家を出ちまいたくなったので、電車でのこのこ帰ることにしました。
目指すは兵庫。

まずは東京駅まで。
白い靴を履いて帰ります。
ふと、私の白い靴が白い事に驚いていた人を思い出しました。その人は、私が人生で初めてマッサージを受けに行った先の、ハワイアンなお店の店員さんでした。

東京駅に着いて、天むすを買おうかと思ったけれど、レジには長〜い列が出来ていて、
まあ、お腹も空いていなかったので、天むすはパスしました。

小田原まで来ると、富士山が見えました。
景色にもだいぶん山が増え、扉が開くたび感じる外の空気は、ピンとしていました。

根府川に向かう途中に、海が見えました
外はすっかり海の街でした。
そして、今日はやっぱり天気の良い日でした。
見下ろす海は、見えなくなる向こうまで青く
細やかにキラキラと太陽を照り返して
言わずもがな、期待していた 心待ちにしていた
その
そういう景色でした。
あたたかい、磯の香る空気

振り返れば、奥行きのある山と、
ひな壇の上、日中の殆どは日を浴びて過す家達


湯河原の駅看板には「ようこそ」と書いてあって、ここが観光地である事が一目で分かりました。

熱海に着いたら乗り換えます
金のピクシーカットに、毛皮のロングコート、黒いブーツにバッチリ囲みアイメイク
背筋がスッと伸びた、私よりも背の高いお婆様と一緒に降りました。

熱海から長い目で見て静岡を目指す
熱海を出てすぐ、長いトンネルの中で携帯は圏外になります。
高校へ通っていた時も、そんなトンネルがあった事を思い出しました。
古い洋画のドアベルの様ないびきをかいているお爺ちゃんも居ました。

沢山知り合いの名前の駅を通り過ぎて
うつらうつらとしている所
何故か、あいみょんの「満月の夜なら」が離れなくなった頃、静岡に着くと乗り換えの駅のホームに17アイスの自販機が。
数字の間にゆとりのある時刻表の前で、バニラアイスを食べました。

静岡から浜松の電車
なんかちょっと良いやつでした。
乗ったらわかる。
なんかちょっと良いやつでした。旅のお供にボタンアメが丁度良い、赤みがかったそんな車内でした。

黄色い5センチヒールのパンプスを履いて、暑さ3センチの帰国戦という本を読む女性は、ふらつく度にドンドンドンと、音を鳴らして足踏みをしました。
焼津で乗客が半分くらい降りた時、彼女は遠くに空きを見つけたのか、5円玉の様な金色のピアスを揺らしながら、車内後方へ歩いて行きました。

と、そんな事を文章にしていると
私のトランクもスルスルと揺られ後方へ
どうにも止められず「うわはぁ」と、間抜けな声を出して立ち上がると、先にいたシャカシャカ運動着の高校生が捕まえてくれました。


あとは、有り触れた田舎の風景に混じる、豊かな茶畑を眺めていました。

浜松について、舞阪へ向かう途中
少し離れた所を、新幹線がものすごい勢いで追い越していきました。
あんなに早いんだなあと思いました。

豊橋に着いたところで少し時間があったので
構内の藤田屋というお店で知立名物の「あんまき」を買いました。
綺麗に焼かれたモッチり生地に、あんことチーズが巻かれたのを選びました。チーズというよりバターな感じの、駅旅を感じる良さでした
陽が傾いてき始め、冬の畑に、電車の影が延びてきました。
新幹線形式の座席だったので、少し小部屋が出来た気持ちで、素焼きのおかきをつまみます。
結局、海老こんぶあおさの、ほんのりと香る素焼きが1番美味しいと感じるこの頃です。

がまごおり
がまごおり

矢作川
あぜ道を散歩する小さな犬と飼い主
軽トラ
腰を下ろそうとする一日に、良く似合う風景

安城
線路沿いのアパートの洗濯物もオレンジ
このいつも通りは、
初めて見る土地のいつもであるのに
私のいつもと、さして変わらない

どこに居ても懐かしい国

刈谷
3列になって自転車をこぐ男の子達
会社の車庫の入口で談笑する作業着姿の大人達

名古屋からうつらうつらしている間に
岐阜、太陽は夕陽に変わって半目くらい

大垣に着く頃
薄水色と薄オレンジが半ぶんこ
日が沈むにつれて、建物の上の方だけが照らされるようになる
その姿がまさに、まぶた半分


大垣を出ると、あかい夕焼けが見えました。
外気との気温差に少し窓が曇ります
遠くに雲の傘を被った雪山も見えました

垂井を過ぎたので、
岐阜の子にたるい駅の看板を撮って送る

今日はつくづく電車日和だった
電車って、ずっと空の下なんだなぁ、
なんていうか。

ちなみに時計を見る度ずっとゾロ目で、なんだか凄く良い旅でした。

そして不思議なことに体感的には、新幹線に乗っている時間と疲れも何もかんも、あんまし変わらないという事。

日本地図の単位で移動していく、私の現在地が痛快でした。

年を迎える前に
ガタンゴトンと色んなもの落として身軽になった様な、そんな様な一日でした。

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