おばあさんのひみつ

むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんがすんでいました。
おじいさんが山におしごとに行くと、かんじんなおどうぐばこをわすれてきたことに気がつきました。
あわてておうちにもどって、げんかん先で
「おばあさんや、ちょっとどうぐばこをとってくれんかの」
とこえをかけました。
ところが、おうちにいるはずのおばあさんからは、へんじがありません。かわりに、だいどころのおくの方から、なにやらくちゃくちゃ音がきこえます。
ふしぎに思ったおじいさんが、そっとおうちにあがってだいどころをのぞいてみると。。。
なんとまあ、すわりこんだおばあさんのあたまのうしろに、大きな口があいていて、かみのけをうでのようにのばしては、そこらじゅうのたべものをつぎからつぎへとその口にほおりこみ、おとを立てて、たべているではありませんか。
おじいさんはびっくりして、なにもいわずにおうちをとびだしました。
しかし、どうぐばこがなくてはしごとになりません。
しかたがないので、きょうはしごとはあきらめて、まちにあそびに出てみることにしました。
すると、まちのあちこちにたてふだがたっていて、人だかりがしていました。
見ると、たてふだにはこうかいてあります。
「ちかごろ、ようかい くわずにょうぼうがよくあらわれます。おうちのひとといれかわっていることがあるので きをつけてください」
くわずにょうぼうとは、ふだんはほとんどごはんをたべないのに、ひとのみてないところでは、あたまのうしろの大きなお口でなんでもたべてしまうようかいです。
──す、するとうちのばあさんも、くわずにょうぼうにとってかわられてしまったのか!
おじいさんはそうおもい、おてらのえらいおぼうさんにたすけてもらうことにしました。
もう、あそんでいるばあいではありません。
大いそぎでおてらにかけこんで、おぼうさんにわけをはなし、いっしょにおうちにもどって、まどからそっと中のようすをうかがうと。。。
なんと、くわずにょうぼうが、ほかのおばけなかまをいっぱいよんで、どんちゃんさわぎをくりひろげていたのです。
ひとつめこぞうは、おわんやおさらをだいどころじゅうにまきちらして、おはしでちゃんちゃか たたきながら なにやらうたっているし、からかさおばけは、せまいいえの中をぶんぶんとびまわっては、あちこちのとだなやら かべやらに ぶちあたってこわしまくり、あかなめはおふろといわずトイレといわず そこらじゅうをべろべろなめまわし、そのほかいろんなおばけたちがやりたいほうだい、うちの中はえらいことになっています。
「うひゃあ、こりゃたまらん。おぼうさん、どうか はよう、ようかいたいじをおねがいします」
「うむ、あいわかった。なむなむたいしなむたいし、へんじょうこんごうだいこうぼう!」
おぼうさんはそんなじゅもんをとなえると、まどのそとから じゅずをもつ手をおうちにむけて、こぶしをぶんとふりおろしました。
とたんに、おうちの中にぱぁーっとあかるいひかりがみちあふれます。
「うぎゃー、しまった、ふいうちじゃ〜」
ようかいたちのひめいがきこえたかとおもうと、たちまち はいのように こまかいくろいつぶつぶになって、なんだかあたたかいかぜに さーっとまいちってしまいました。
そうして だいどころのゆかには、おばあさんがたおれているのがみえました。おじいさんのおどうぐばこも、すぐそばにありました。
どうやら、おじいさんにおどうぐばこをとどけようとした そのやさきに、くわずにょうぼうに のりうつられてしまっていたようです。
「あっ、ばあさん、だいじょうぶか!?」
おじいさんとおぼうさんが おうちにはいって、おばあさんをたすけおこしました。
「あら、おじいさん。おわすれもの、とりにきたんですか」
ゆりおこされたおばあさんが、のんきなこえで そういったので、おじいさんもおぼうさんも、おもわず大わらいしました。

こうして、ぶじ もとにもどれたおばあさんは、おぼうさんにたっぷりおれいの大ごちそうをふるまって、このあとも おじいさんとなかよく くらしていったということです。
めでたしめでたし。
さ、ねんねしよ。



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