梅の花の色 向日あさ 朝おきると、暦がめくられていた。 暦におどるあざやかな色。 お母さん、これはなんの色? それは、梅の花の色よ。 梅…?梅はちがう。 梅はもっとしわがれたすっぱい色。 そのくらい、わたし知ってる。 朝ごはんはちゃんと起きて食べているもの。 春になると梅は花を咲かせるのよ。 春がきたの? 冷えた窓ガラスにおでこをつけて外を見る。 世界は白に閉ざされたまま。 色はまだ眠っている。 わたし、ちゃんと知ってる。 色たちが眠りから目覚めるのは皐月よ。
わたしたち 向日あさ おひさまをみにいかない? わたしたち、いつもは夜ばかりだから。 たしかに。 おひさまの下でも一緒にいられたらすてきね。 わたし、みずうみに光るおひさまが見たいわ。 ああ、そうね、わすれてた。 わたし、みずうみはきれいと思うものね。 もし、わたしの気がゆるすなら、手をつないでいこう。 車なんかいらないからさ。 うん、わたしたち手をつないで空をとんでいこう。 帰りにはベーグルサンドとか食べようか。 いいとおもう。 きっとわたし元気がでるわ。
雪のこみち 向日あさ 雪の中にひとり。 体育座りのなかに顔をうずめてうごかない。 線路のわきの小さなみち。 人びとが踏み固めてできたみち。 !!! さわらないで。 彼女は待っている。 たのしませようなんてしてはいけない。 わたしたちはただ祈るだけ。 春がきたらいいよねって。