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フロ読 vol.15 松岡正剛『多読術』 ちくまプリマ―新書

ある意味では「フロ読」の生まれたきっかけと言える一冊。
 
知の巨人、松岡正剛が「『読書は大変な行為だ』とか『崇高な営みだ』などと思い過ぎないことです」と語るところから本書は始まる。
 
読書はファッション、着脱の繰り返し。1冊を集中して読み続けることができない気質の私には大変ありがたい指針。読了したのは10年以上前だが、今でも私の「読みの楽しみ」の根本はこの書によって組成されている。
 
大人気のウェブサイト「千夜千冊」は様々な縛りをつけて楽しんで(苦しんで?)継続してきたそうだが、私にはそんな高度なことはできない。それよりも同サイトの旧バージョンには、「電子の選ぶ自由をあなたに…」というようなタイトルのクリックボタンがあって、そこをクリックすることでランダムに千夜千冊のページに飛んでくれるシステムだった。その偶然性が大好きだったものだが、私の「フロ読」は、そのランダムネス、「フロに行くのに何持ってく?」という遊び心が肝心だ。縛りは何にもなく、自分でも「おいおい、それを持っていくの?」とツッコミを入れたりしているくらいの遊びだからこそ、私でも継続できているというわけだ。
 
初読の時の感想とか購入した時の雰囲気、著者との思い出なんかも読書の一部…なるほど、参考になります。思い出や回想はフロの雰囲気と相性がいい。「注意のカーソルのエクササイズ」は本当に言い得て妙。このカーソルの動きが部屋や電車とフロではやはり異なるようだ。
 
本書のタイトルは『多読術』だけど、これは寧ろ「多読の楽しみ方の指南書」とでも言うべき書。本をあまり読まない人にこそオススメしたい。
 
逆に本のカッチリした読み方を知りたい人には、同じ著者の『知の編集工学』を推したい。私も「ガチ読」の際には何度も手を伸ばす良書です。


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