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フロ読 vol.31 A・ビアス 『悪魔の辞典』 角川文庫
パロディはできるだけ真面目なものを茶化すのが面白い。中でも辞書はからかいがいとしては最大のものだろう。
本書のタイトルは、読者に過剰な期待を持たしめるものではあるが、読みだしてすぐにぶつかるのが文化の壁。英語圏はもちろんのこと、キリスト教圏で生活していないと分からないことが多い。引用してある詩の大半には“?”がつくし、パロディは、生活上の実感から離れてしまえば、すぐに成立しなくなるものなのだ。
それを承知の上で、敢えてピンと来るものを拾ってみると…
MONEY,n. 【お金】 手放すとき以外何の役にも立たぬ恩恵物。教養の証拠であり、上流社会への入場券。支持できる財産。
POLICE,n. 【警察】 騒ぎを防いだり、騒ぎに加わったりする軍隊。
なるほど、なるほど…
COMFORT,n. 【気楽】 隣人の不安がる様子をじっくり眺めることから醸し出される精神状態。
HANDKERCHIEF,n. 【ハンカチ】 絹やリンネルの小さい四角い布切れで、顔に関してさまざまな恥ずべき役割を演ずるのに用いられるが、葬式の際には、出ぬ涙をかくすのに特に便利なもの。
PICTURE,n. 【絵】 三次元の世界の退屈な物の、二次元の世界での描写。
これはひどい(笑)
ADDER,n. 【マムシ】 蛇の一種。葬儀費用を他の生活費に加算するその習性からかくのごとく呼ばれる。
この手のものは原書を英語で読むしかあるまい。
楽しく語彙を増やしていけるのが辞書のあるべき姿。本質は却ってパロディが浮上させてくれるもの。受験勉強などには間に合うまいが、期限もなく語学を楽しむ人にはオススメの一冊。
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