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フロ読 vol.29 金谷治 『淮南子の思想』 講談社学術文庫 

淮南王劉安。漢の高祖の孫にして淮南の地に文士を集め、『淮南子』を纂してその文才を誇ったが、後に謀反の疑いをかけられて…という漠然とした記憶しかなかった。
 
その思想は老荘の影響を受け、かなり該博な内容であるらしい…というのも、まだ『淮南子』を読み終えていないので、ごくごく表層的なことしか知らないからだ。
 
今日のフロでは、第一章「淮南王とその時代』を読んだだけだが、これだけでもぐっと惹きこまれる。著者劉安の父、劉長は、高祖劉邦にその子であることをほぼ意識されず、やむなく母親は皇后の呂后にすがるしかなかった。呂后の半ば愛人にも近かった辟陽侯審食其を通じてすがるも、スルーされたために母は自殺。そのことによってようやく劉邦にその存在を認知され、劉安は呂后に育てられる。
 
これだけでも波乱の生い立ちだが、武侠の徒、劉邦の血を継いだ劉長は、呂氏一族の誅滅によって位に即いた文帝に憚ることなく審食其への報復を果たし、その罪を自ら詫びることで文帝には許されたが、後に謀反して失敗。一介の王たる身を帝になぞらえたふるまいが指摘されて、再び帝の勅命により死刑を宣告される。それを辛うじて免れるも平民に落とされ、それを恥じて自死。
 
この強烈な父の生き様が、さすがに文帝の同情を引いて息子の劉安は少しずつ立場を回復して淮南王に到る…と。もはやここまでだけで映画でも観るような、波乱の流れである。
 
ここから思想がどのように展開していくのか充分楽しみではあるが、フロの中ではこれが限界。しばらくは原文をつまみながら味読したい。
 
ここのところ天候も淮南王なみの波乱。また風が強くなってきたようだ。

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