花束コンサルタント

 新しい街にすむようになると、とりあえずに私のすることは素敵な花屋さんを見つけることである
 二千四年のハーバード大学では、教会の側の小さな花屋が気に入った。
そこに見つけた芍薬の蕾が気に入った。
「このつぼみは開くだろうか?」
「大丈夫、開きますよ、これは輸入ものだよ」
イタリア系らしい店主は陽気に請け合ってくれた、そして、彼の言葉通りに、どの蕾も、日を追うごとに薄緑からうす紅へと蕾の色を変え、ふくらんでいった。そして、ある朝、紅の翼を広げた七人の天使のように、艶やかな姿で咲き揃ったのだ。
 近頃の日本の花屋では、こういう芍薬のつぼみはいつまでも固く、いつまでたっても、開くことがなくやがて、萎れてしまう。
まるで、浄土についていながら、それを信じることが出来なくて、蓮の蕾の中に九年も籠っている人を思わせる
 四月は卒業シーズン。卒業のパーテイの相手のために、普段は花屋には、縁のない若者たちで賑わっていた。
花に関する限り(?)、お節介な私は、たまたま、側で悩んでいる青年のために、お相手の目と髪の色、当日,着るドレスの色を聞いて,それに合った洒落た花束を作り上げたら、それを見た別の一人にアドヴァイスを求められる。
次々と、私がアレンジした小さなブーケをラッピングをしながら、オーナーが、「ここで働いてくれない?」とウインクする
「もう、働いているじゃない」
彼の言葉通り、芍薬の蕾が全部開いたので、ご機嫌な私は答えた

春寒く幼女のまどろむ一つ間に牡丹の花の香やや重きかな
まかがやく牡丹の白さみぎひだり淋しき王者の身のめぐりなる
銀百枚白光帯びて流したるこは芍薬の帰依の意志なる


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