水を活ける六月

 今年はドクダミが俄然元気が良くて、庭のあっちにも、こっちにもスペード型の葉を所せましとばかり広げている。
十薬と呼ばれるほどに薬用効果もあるらしく、そのかたまりの一角に立つと、薬種問屋みたいな気分で、あの独特の匂いを嗅いでみる。
鉢から零れたのか、新来の八重のドクダミも、伸び伸びと領地を広げて、冴え冴えとした微笑を浮かべている。
 備前焼の花瓶二つを並べて、茶花風に活けてみる。一重のドクダミと八重のドクダミ
 一重は生硬な女学生(流行りの形容で行けば、昭和風の、、)のすまし顔。
八重は眼差しに物語てきな翳りを秘めた、ちょっと見過ごしできない風情のの薄幸美人風。(これも昭和風の形容か、、)
六月に花を活けると、手元から水の香りが匂い立つ
かすかに、水のせせらぎも聞こえてくるような。
花を活けたのではなく、水を活けたような錯覚にとらわれる。
六月になると、森はみなぎる水の光りに染まる
 森の住人の私も、せっせとお茶三昧の毎日をする。
朝、お抹茶を一服。新茶を二服、昼下がりには、中国茶で哲学的な思索の時間を過ごす。美味しいお菓子があると、マリアージュフレールの紅茶の香りにパリ心地 。
夕方には庭に出て、ミントとレモンバーム、カーモミールなどを摘む。ハーブ茶はたっぷりとポットに一杯。
夜に、(つい、引き込まれて)人間の悪意を描いたミステリーを読んだ後、少し苦しい胸のこわばりを解くときは、神秘的な黒文字茶を飲む。
 森の住人の私の六月のお茶風景である。

ものの影濃くなりゆくたそがれに水田ものぐるひのあかりをともせり
六月を寒々ととして青あぢさゐ微罪もつごとゆるく呼吸する
ホトトギスしきりに鳴きてその午後はナプキンに包む夕焼けの色






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