儚い命

孫の悠真(仮名)は、入退院を繰り返してはいたが、それは定期検査入院と言う括りで、特に病状に異変を来たしたわけではなく、そのまま入学、ピカピカの一年生になった。

特殊学級に行くのだとばかりおもっていたが、普通学級に行くことになった。

知的障害は無いのだから、当然の成り行きなんだろうが、そこに何某かの操作があったのかどうかは、私には分からない。

学校に行くのが待ち遠しく過ごしていたため、はち切れんばかりの喜び様であったようだ。

毎日が楽しくて仕方がない様子を、娘からのLINEで知らされていたので、このまま行けば心臓の手術もそう遠くないのではないか、と思えた。

病気を持つ子は、動き回り、走り回る事が多いそうだ。

病気だけど、動けるし、走れるよ❗

が、子供の言い分である。

大概は、親が血相を変えて静止するのが常である。

将来は警察官になりたい。と常々口にしていた。

学校では、困っている子を率先して助けたり、好き嫌いなく皆を応援することから、クラスでは人気者であったようだ。

このまま、何事も無く時が流れて行くのだと思えた。

ある日、悠真は授業中に倒れた。
意識不明のまま救急搬送された。隊員には病名や受けている治療情報を全て伝えた。

幸いにも一命は取り留めたのだが、
担当医はてんかんかなぁ～と言って、取り敢えず何も懸念されるモノはないので、少し学校を休ませてください。との事であった。

学校には事情を話し、一週間の休みをもらうことになった。

そして悠真はその日から奇妙な行動を始める。

夜寝る前に、壁に向かって正座をし、何かブツブツ言っているらしいのだ。

近づいて聞いて見ると

『今日もご飯が美味しかった、ありがとう』

『この前、◯◯君が▲▲してくれた、ありがとう』

こんなことを毎晩、お勤めのように始めたのだ。

昼間は昼間で、娘に手紙を書くのだそうだ。 今まで、そんなことは一切無かったらしい。

『ママ大好きだよ』
『ボクが死んだら、悲しい？』

こんな類の手紙を毎日毎日書いていたのだ。

そして、休みに入って3日ほど経った朝、突然、『学校に行きたい❗』と言い出したのである。

普段から、駄々を捏ねたり、我が儘を言う子ではないが、この日だけは折れない。

娘は、どちらかと言うと、父親よりも厳しいのだが、何故かこの日は、行かせてあげよう、と思ったと言う。

１時間だけだよ、と言うと『うん❗』と満面の笑みを浮かべていたと。

学校に着いて、教室に入るなり、クラス全員が走って来て、もう揉みくちゃにされながら、悦に入っていたらしい。

帰りに『これだものみんな大好きになっちゃうよな〜❗』と浮かれまくっていたらしい。

その夜も壁に向かって、寝る前の新しいルーティンを熟し、床に着いた。

朝方、足をモゾモゾして寝苦しいようで『どうした？』と聞くと、『水飲みたい』

それが最後の言葉となった。

娘夫婦はパニック状態で、とにかく救急車を呼び、一番近い某順◯堂病院に搬送、救命措置を施したが、悠真が息を吹き返す事は無かった。

『少しだけさんにんにしてください。』

医者看護師達が退室した。

『悠真頑張ったね、偉かったね』

すると、機械の明かりが点灯して、ピッピッと鳴った。

『生き返った❗』

旦那が、『いや今身体を揺らしたからだよ』

奇蹟など起こらないのである。

昼には遺体を家に移して、好きだったお菓子を山にして、もう最後だから学校のみんなに会っておいで、と娘か耳元で囁いた。

同じ時間、教室でパニックが起きていた。

一人の子が、中庭を指差して『悠真だ❗』

『ホントだ❗』

『悠真帰って来た〜❗』

悠真は中庭からみんなに手を振っていたそうだ。

このとき、悠真が亡くなった事を知っていたのは担任の先生だけであった。

おわり

乱文に加え、誤字脱字ある中、ここまで読んで頂きありがとうございましたm(_ _)m