見出し画像

まな板の上のなんとやら

赤いパンツにビニール製のベスト。小柄だが腕っぷしは強そうだ。促されて中に入る。
彼女はビニール製のベッドをシャワーで洗い流す。
「どうぞ〜、上向きで〜」
アタシは、お気に入りのパンダの手ぬぐいを彼女に渡し、ベッドに仰向けになる。彼女は、アタシのお股にパンダの手ぬぐいを乗せる。かなり無造作に。目に冷たいタオルを乗せ、目の周りの筋肉をぐいぐい指圧。その指圧の絶妙な強さと上手さに、もう身を委ねることを決めた。
         
それは予告なしに突然始まった。結構痛い。次にどこを擦られるか予想がつかない。両手でグワシ!グワシ!ぐるぐるシャーッ!
もはや、まな板に乗せられたマグロの気分だ。鱗をこそげ取られているかのような。
彼女の寡黙さは嫌いじゃない。マッサージなどを受けるとき、アタシ自身も寡黙でいたいほうだから。
         
右半身を終えた頃ようやく「いたく、ないで〜すかぁ」と聞いてくれた。
元来、痛みには強いほうだ。マッサージの類はいつも強めでお願いしている。どんとこい!である。
とはいうものの、蕁麻疹持ちのアタシ。医者から「肌を刺激するのはやめようね」と言われたことを今更ながら思い出す。(大丈夫か?アタシ)
       
太ももの内側などは痛さで声が出そうになる。わき腹は少しくすぐったい。手の指、足の指を一本ずつガシッと掴んでゴシゴシされたあたりで、彼女への信頼度がかなり上がる。足の裏は至福のときだ。
         
目の上にタオルを乗せられているため、“垢”情報が得られない。うつ伏せになった瞬間にチェック。グレーっぽい、消しゴムのカスのような感じに見える。
         
ひと通り全身をくまなく擦ったら一旦シャワーで流してくれる。そのあと柑橘系の石けんでカラダを洗ってくれるのだが、これがもう、ほんと気持ちいい。仰向けで寝ているアタシの首をちょいと上げ、手を潜り込ませたかと思うと肩甲骨周辺をゴリゴリ。かなり力強い。首や耳の後ろもくまなくマッサージしてくれる。つぎはオプションの洗髪もお願いしよう。うん、そうしよう。
         
座った状態で肩や背中をパン!パン!と叩いて「はい!終了で〜す。またきてくださ〜い」
浴場へ戻り、じぶんで洗髪。最後、保湿が期待できる炭酸泉に10分ほど浸かって、冷水でシメる。
こうして初めてのアカスリ体験を終えた。
         
一皮むけてカラダも軽やか。肌がしっとりトゥルントゥルン。蕁麻疹の素もこそげ落としてもらえたかのよう。これは病みつきになりそうだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?