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手術といえば……アタシ、全身麻酔経験者でした【声帯ポリープ除去手術】

今回は、アタシが38~39歳頃(2008年)のお話。
スイミングインストラクターを始めてからというもの声がドンドン擦れていき、夏場のレッスンが多くなる時期には電話で話せないほどにまで悪化していた。(大きな声は出せるんだけど電話で喋るぐらいの声を出すことが難しい)
喉ぼとけの辺りを手で押さえるとなんとなく喋りやすかったりして。ひどいときには呼吸困難なほど喉が詰まる感覚が日に日に強くなっていた。
何回か耳鼻咽喉科へ行ってみたが、結局は「安静に」要は声を出すなってことしか言われない。

Mujaki703


手術を決める


声帯結節
がある。それも両方に。(普通は片方にできるらしい)両方にあるがゆえに呼吸困難を起こしていると。一番手っ取り早いのは手術してポリープを取り除くこと。手術後、1週間程度は声を出してはいけない。インストラクターとして復帰するなら1ヶ月程度は休んだほうがいいだろうと言われていた。

「1ヶ月仕事を休む」

考えるだけで恐ろしかった。そのときアタシはようやくインストラクターとして“イイ線いってるな”と思えてきた頃だったし、後進の育成も任されるようになった矢先だった。人間関係では色々あったけれどスピ系ツール(のちにスピリチュアル迷子と化すのだが)と出会ったので何とか乗り越えられると感じていた。

さて、月に一度の診察日(大きな病院を紹介されていたのだった)、担当医に「手術します」と告げた。明日にでも!と鼻息荒いアタシだったがそうは問屋が卸さない。一番早くて11月7日だと言われた(2か月後)。「あ~もう何でもいいです!善は急げ、です!」その場で即答。

「手術したら声は出るようになるけれど同じ仕事するんだったら、ほぼほぼ再発するよ」by担当医

ああ、辞めたほうがいいのか。
辞める時期なのか。
どうしよう。
天職じゃなかったのか。

手術日が決まり職場には「手術後の体調をみて辞めるか復帰するか返事したい」旨を伝え了承いただいた。

手術までに何回か検査を受けるため通院。口腔外科の受診も促された。(手術の時パイプを口にくわえるらしいんだけど、全身麻酔とはいえ、すんごいチカラが入るので歯が欠けたり抜けたりすることもあるらしい)

そして、主治医と執刀医は違うと知らされる。そういうものなのね。いちばん心細かったのが全身麻酔の承諾書にサインしろと迫られたとき(いや、別に迫られたわけではないが笑)
「目覚めないかもしれない」みたいな文言にかな~りビビる。救急隊員の研修で気管挿管させてもらっていいかどうかの質問には真剣に悩み「か、家族と相談します」などと弱気な発言。(いや~、隊員の成長のため、お役に立ちたい気持ちと、やはりここはベテラン様にお任せしたいという気持ちの板挟み)実際には麻酔で意識ないので誰がやったかなんて皆目わからないというのに。

さて、いざ入院となると色々と準備が必要なのである。愛犬♡どんちゃん(ゴールデンレトリバー♂当時8歳)の散歩はお義父さんが、(当時の)旦那さんの夕食はお義母さんが担当してくれることとなった。

術後は喋ってはいけないらしいので本も大量に準備(もっぱら精神世界系)。ヒーリング系の音楽を聴くためのCDラジカセを購入。筆談用のスケッチブックと色ペン。パジャマも新調。


いざ手術!


渡された手術衣の下は全裸。それなのに、ああそれなのに。なんか小さめのサイズ。タテもヨコも。(メンズのほうがよくね?)

(当時の)旦那さん・義父・義母・実母が見守る中アタシは笑顔で手を振り徒歩で手術室へ。そう!徒歩で。ストレッチャーとかで迎えに来てくれると思いきや、徒歩で。手術室へ入る前に左手首のバーコードをピッ。名前と何の手術を受けるのかを述べ、いざ手術台へ。

え?手術台ってこんなにスリム系なん?カラダの幅ぐらいしかないやん?お相撲さんには無理やん?(お相撲さんほどではないが、アタシ肩幅けっこうあるんよ)それに、結構高さあるのね?手術衣がパツンパツンだから、お尻出さずにうまく登れるかしら。「よっこいショーイチ」心の中で念じてベッドに乗る。落ちないように気をつけて仰向けになるやいなや両手両足を固定される。「なんのプレイだっ!」(手術、だね)天井にはドラマでよく見るシャンデリア、いえ、眩しすぎるばかりの照明。

「酒飲みは麻酔効きにくいってホンマですかぁ?だいぶ心配なんですけど」この期に及んで弱気なアタシに看護師さんはクスッと笑って(答えてはくれなかった)手の甲を少しばかり消毒してくれる。「は~い、〇〇さんゆ~っくりと“30”数えてくださいね~」ぷすっと注射される。ん?この注射が麻酔?手の甲なん?と脳裏をよぎりながらも言われたとおりに(根が真面目なもんで)

イ~~~~~~~~~~チ
ニ~~~~~~~~~~イ
サ~~~~~~~~~~・・・・・・

”3”の途中ぐらいから記憶がない笑

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気がつくとガチャガチャガチャと物音が聴こえる。

目は開けられない
カラダは動かない
けれど耳だけは正常に機能していた


あ、手術、終わったんだ…
アタシ、生きてるんだ…

「〇〇さん、お肌ツルツル~」「アタシもプール行こうかな~」看護師さんたちがキャピキャピお話している。顔がニヤけそうになるが顔面は動かない。執刀医もなんか楽しそうに喋っている(手術と関係ないことを)。

なんだよ~
みんな、真面目にしろよ~
ぜんぶ、聞こえてるんだぞ~
(根が真面目なもんで)

どうやら手術台からストレッチャーにカラダを移すらしい。アタシはそのタイミングで反射的にグッと力を入れたようで「〇〇さん、賢~い!めっちゃ、協力的~っ」結果、看護師さんたちから高評価をいただくことに。脳味噌で笑いながらまた、記憶が薄れていく。

目覚める・笑える


麻酔で動けないなか意識を取り戻したアタシ。耳の機能っていっちゃん最初に戻るのね。なんとな~く死ぬ直前ってこんな感じなのかな?なんて思ったよ。結構、ぜ~んぶ聞こえてるんだろうね(意識ないように見えても)。

さて手術当日の夜中、麻酔が切れて目が覚めた。

ジリジリ
ジリジリ
ジリジリ


喉が焼けるように痛い。なんだか息苦しい。右手の甲には点滴針が刺さっている。全身麻酔ではあるが、おしっこの管は入れなくてもよかった。(手術前に聞いて胸を撫で下ろした)撫で下ろしたが、ああ、なんということでしょう。なんか尿意をもよおしてきたんですけど。じぶんで歩いて行けと?起き上がれない。立てない。歩くって、どんな感じでしたっけ。いや、これマヂで。ようやくカラダをコントロールし点滴棒とともに

よろよろ
よろよろ
よろよろ


よしもと新喜劇のたつ爺のように歩みを進める。やっとの思いでトイレに到着するが、あれれ?この点滴棒とともに個室に入れないことに気づく。気づくがもう間に合わない。

ええい、ままよっ

扉を開けたまま片手でなんとかパンツを下ろしどうにかして用を足す。

笑える

笑えるが、笑えない。
この面白さを声を大にして伝えたい。
伝えたいが声が出せない。
(ああ、もどかしや)

あとで看護師さんに「呼んでくれればよかったのに~」と言われたが、呼んだらどうなっていたのだろう。ジェスチャーで「おしっこしたい」と伝えているじぶんを思い浮かべてこれまた笑えるのであった。

筆談


手術の翌朝の朝食は「牛乳・バナナ・食パン」だった。え?嘘?流動食とかじゃないの?唾飲み込むのも恐る恐るだってのに。(大袈裟じゃなく)泣きながら口の中に食パンと牛乳を同時に入れてみる。飲み込むと牛乳と血の味。血液オーレ、的な?苦行ですか?これ。

苦行かっ?!の痛みは日を追うごとに、というか時間を追うごとに和らいでいった。喋ってはいけない日々はとても新鮮。喋らなくてもいい状況ってのも悪くないな。しかしながら声を発しなければ何も伝わらない。声に変わる何かで伝えなけらばならない。そのために事前に用意していたのがスケッチブック&カラフル色ペン。絵心のないことで有名なアタシだがPOPには定評がある。とりあえず定番の挨拶4種を書き上げた。

おはようございます
ありがとうございます
大丈夫
おやすみなさ~い


お見舞いに来てくれた方々へまず挨拶。
そして筆談。まるでチャットでもするかのようにチャチャチャッと筆談。

定番の挨拶4種。一番見せたのは超☆可愛い研修の看護師さん。退院するときには可愛らしい手書きで正しいうがいの方法プリントをプレゼントしてくれたっけ。

白い巨塔


ようやくお風呂の許可がおりた頃、名誉院長のご回診なるものがあった。ご回診というからには大名行列のように並んでくるのかとワクワクして待っていたが、それは重病の方の病棟の話でアタシたちの病棟は決められた時間に診察室に来るように、とのことだった。決められた時間まで余裕があったので先にお風呂に入ることにした。ふう~っ!スッキリ~!浴室から出ると「〇〇さ~ん!〇〇さ~ん!!」怒りモードの看護師さんがアタシの名前をフルネームで叫んでいる。「も~、困りますよ!ちゃんと並んでてくれないと~」(え?まだ時間前ですけど)言いたいけれど喋っちゃ駄目だから仕方なく「ごめんなさい」ジェスチャーで伝えそのまま名誉院長の前で口をあんぐり開ける。

「声帯結節ね、術後の経過は?」
「は、はい、良好です」執刀医が緊張気味に答える。
(ふふふ、先生、緊張してるな)
しっかし、ものの3秒で終わったし。な~んや、それ。チラ見しただけやん。


幸せとは


お隣のベッドの女性はたびたびブザーを鳴らしては夜中であろうが早朝であろうが看護師さんを呼びつけ「ウ○コが出ない」と訴えていた(要は、下剤をくれという申出)。

量が決まっているからそうそう出せないらしいのだ。
その女性と看護師さんの会話は「どう?出た?」「出ないんよ…しんどいんよ…お薬ちょうだいよ…」がエンドレス。

ウ〇コが出るって幸せなことなんだな、としみじみ思う。確か、整形外科で入院していたはずなんだけどね、この女性。しかし主訴はウ○コだったというお話。


退院


退院前日、執刀医が現れた。「〇〇さ~ん、”あ~”って言ってみて」声を出そうとするが、ん?あれれれれ?どうやったら声って出るんだっけ?(いやこれ、マヂで)「○△□…」
イメージ通りに声が出ない。

なんだよ~
手術したら治るって言ったじゃないか~
なんも変わってないじゃんか~
ハスキーなまんまじゃんよ~
(心の声)

それでも明日退院だという。大丈夫なん?ホンマにホンマ?一抹の不安がよぎる。結局、執刀医は手術直前と手術翌日と退院前しか姿を現さなかった。そんなもんなのね。家族は、術後瓶詰されたアタシのポリープを執刀医に見せてもらったらしい。ああ~今なら絶対写真撮ってるのにな(ちなみにポリープは良性)


おまけ


あれから16年ほど経つ。ハスキーではなくなったが、カラオケ行くのは気が進まない。(ポリープできる前みたいに聖子ちゃんとかMy Little Loverとか歌えないから)日常生活を送るのは全く支障ないけれど。もう、歌手は目指せないかな(目指してたんかいっ笑)

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