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わたぼうしのとぶころに 四章

四章 広がる世界 狭まる現実

 芸大の写真部に入学し教師になるという夢にも破れ、もう写真を頑張ってやろうと思ってスタートした大学生活。サークルの探検部に夢中になり旅とかが好きなった。バイトをしてお金を貯めては旅をして、バイクも好きだったから海外でバイクツーリングをしたりしていた。探検部の本村は、はじめて二人でオーストラリアにも行った相棒で精神世界のことが詳しくて影響を受けていた。おなじ探検部の女性の先輩の相田にいたっては、かなりディープな精神世界に詳しい人で、心理学や精神分析、あと瞑想の話を聞かせてもらい影響を受けた。そういう中で社会というか、その頃の日本というのを外側から見るようになったり、社会に対して人というのを一歩引いた目で見るようになって、すごく違和感があった。
 その時に考えたことや、その時に撮った写真で「救世主入門」っていう名前の自費出版の本を卒業制作として作った。そんな過ごし方をしていたからか、その当時の同世代の若者が楽しんでいたことや興味持っていたような事を全くオレは知らなくて、常にそういうものを離れた場所でというかそっぽむいて、「世界のこと」や「人って」みたいなことばかり考えていた。
 芸大に通いはじめて最初に出会った友人の沢口は建築学科で、全国的に有名な建築家の朱美先生のゼミ生だった。沢口を通じて朱美先生と出会い、オレが作った卒業制作の写真集を気に入ってくれた。「私が代わりに売って上げるわよ。」と何冊も買ってくれて、なくなるとまた追加で購入をしてくれた。
就職活動のタイミングにさしかかり自分にできることが写真しかなかったので、いろいろ出版社など受けようかと思ってはみたけど、もう少し卒業してから考える時間が必要に思い、しばらく写真とは関係ないバイク屋のバイトなどをして過ごしていた。その時の選択肢には教師の「き」の字も存在しなかった。


五章へつづく


※このお話は少しだけフィクションです!お聞きしたお話に基づいての物語ですが、客観性はないかもなので事実かどうかはわかりません。登場人物は仮名です。

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