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麻雀戦術書 れびゅー


①はじめに


この記事は自分が読んだ麻雀戦術書の内容と総評をメモとしてつらつら書いてあるだけの記事である。ついでに麻雀戦術書を買おうか迷っている方々への力添えができれば有意義だと思った次第だ。

また本記事では初心者向けの麻雀本は紹介しておらず、あくまで対象は初心者用の麻雀本を終えた人向け、雀魂でいうなら雀傑以上となっている旨、その部分は悪しからずお願いしたい。

さて、本記事の構成は<①はじめに><②麻雀戦術書を読むメリット/デメリット><③麻雀戦術書><④おわりに>という4つの項目に分かれている。
下記より各項目の概要を載せたが、想定していた以上に文章が長くなってしまったので各項目の概要を見て好きな項目から読むのをお勧めする。

<①はじめに>では、[契機]で本記事を書こうと思った理由を、[私にとっての麻雀本の魅力]で麻雀本の虜になった理由を。
要するに私情について扱った項目となっている。
「そんなのどうでもいいわ!」と思った方は飛ばしてくれて構わないが、やはり読んでもらえると書き手冥利に尽きる。

<②麻雀戦術書を読むメリット/デメリット>では、[メリット]で麻雀戦術書を読んでいて気づいた麻雀戦術書のメリットを、[デメリット]で麻雀戦術書を読んでいて気づいたデメリットを、[解決策]では各デメリットに対する解決策と回答を提示している。
これから麻雀戦術書に触れる際の心得として一読してもらうと良いだろう。

<③麻雀戦術書>では、自分が読んだ麻雀戦術書の内容と総評を各本ごとに紹介している項目となっている。ここが読み手にとって一番の要旨だと思われる。
また最後には[雀傑以上におすすめの本][雀豪におすすめの本]を二、三選ほどピックアップしているのでこれを読んでから各本の項目に飛ぶのも良いだろう。

<④おわりに>では、謝辞を述べさせていただいた後に[麻雀戦術書と麻雀戦術動画の違い][麻雀戦術書と麻雀AIの違い][余談]をコラム的に書いている。
筆者がそれらをどう差別化して麻雀戦術書と向き合っているかという態度を著した。差異を区別していない方々に御一考頂けると幸いである。


・契機


つい最近、私事だが雀魂というゲームでサンクチュアリ(聖域)に至った。
もっと上位にいる人間からすれば雀聖なんて大したことは無いのだろうが一段落、休憩期間を置くには良い機会だろう。
ということで前々から常々「自分の読んだ麻雀本のまとめや総評を読み直すときのメモが欲しい」と思っていたところなので、此見がしにどこかに書き置こうと思った次第である。
noteを選んだのは、折角自己都合でも書くのなら「麻雀戦術書を読みたい」「読みたいけどどれを選んだらいいかわからない」と誰しもが一度は脳裏に思い浮かぶ需要をついでに満たす手伝いができるし、なんかnoteって巷でよく目にするからである。

筆者の雀聖到達時の戦績


・私にとっての麻雀本の魅力


私が最初に手に取った麻雀本はprime会員なら無料で読める『ウザク式麻雀学習 牌効率』いわゆる牌効率の本である。
無料だから読んでみようと軽い気持ちで読んでみたのだが、牌効率を学ぶだけで短期間での成績上昇が一気に見られた。自分の実力が目に見えて上がるとやはりめちゃくちゃ嬉しいものである。
いつの間にか実力がインフレしている刃牙のような気持ちになれたのだ。

そうして勢い買った『デジタルに読む麻雀』。
これを読んでその世界に衝撃を覚えた。
今まで完全に運ゲーだと思えていたものでも多少は理屈があって、私はその理屈に馴染んでいない素人にも関わらず、追随する理論と論理に納得、そして感心させられてしまったのだ。

読んでいる方々にこの生の感動は伝わらないだろうが、例えるなら評価は高いが訳の分からない映画を鑑賞し、訳が分からないからと言って解説を検索し読んでみて、改めてその映画の構造の素晴らしさや深さに気づいて体中一挙に鳥肌が立つようなものである。
こうなると同じ監督の違う作品も嗜んでみたいとなるだろう。それと同じ状況が私にとって麻雀本で起きたのだ。(『2001年宇宙の旅』はさすがに理解できなかったが……)

そうして私は次々と麻雀戦術書にハマってしまった。
昔から何かに影響されるとドツボにハマってしまう性格で、ついついのめり込んで何冊も何冊も読んでしまった。
挙句の果てには他の読み物なんて忘れて麻雀戦術書だけを嗜む生活になってしまった。それも同じ本を何周も何周も繰り返し繰り返し。

そして私は気づいた。
麻雀は突き詰めればただの運ゲーだ。いくら理屈や理論をごねても運の前にはほとんど散っていくばかりだが、運の要素を少しでも排していこうとする麻雀理論の挑戦とその精神、態度が好きなのだ。

元々哲学書や思想書にあるようなこじつけかましい理論の、ある意味無常で納得せざるを得ない理屈と対峙する感覚が好きで、数学という不変で一切の反論をも許さない世界がつまらなく嫌いな私は、麻雀という運の不確定要素に抗いながらもなんとか少しでも理詰めしていこうとする麻雀戦術の憐憫さ、不憫さという脆弱な精神性に惹かれてしまったのだ。

答えが最初からあるものに答えを出すのは考える必要もなくおもしろくもなんともないが、答えが無い不確実な無限の可能性に向かって必死になって答えを出そうとする、理論や理屈を重ねて行ってそれっぽい一つの答えを出す、そんな儚さ脆さが好きなのだ。

こうして麻雀本の理論とその精神性に魅入られた私は、月に数冊麻雀本を買い漁り読み漁る生活が続くこととなり今に至る……。



②麻雀戦術書を読むメリット/デメリット


さて、そんなこんなで麻雀本を読んでいて気づいた、得られるメリットとデメリットがあるのだが、みなさんは想像がつくだろうか。
麻雀本を読めば必ずしも簡単に強くなれる!……なんて思いがちなのだが、読むことで得られるのは必ずしも甘い蜜だけとは限らないのだ。
私が気付いた主なメリット/デメリットを以下に紹介していく。
これらのポイントを意識しながら麻雀本を読むことで、より一層のパワーアップが見込めるだろう。


・メリット

1.効率よく強くなれる

なにかゲームをするにしても最速で最も効率よくゲームを進める方法は何だろうか。そう攻略を読んで進めればいいのである。
データ本にしても歴戦の猛者が書いた戦術書にしろ、自分より数千倍麻雀試行回数が行われた結果導き出された一つの解なのだ。これを理解して取り込んでいけば当然、強くなる近道となる。


2.戦術の視野が広がる

当然のことだが、麻雀本を読むことで今まで自分が考えもしなかった思考や新たな発見に出逢うことは往々にしてある。それは自分の麻雀視野が広がる兆し、麻雀脳発達のための栄養なのだ。
これを摂り込んでいくことで実践の中で採れる選択肢が多くなっていく。こういった知識が他と差をつける部分となってくるのだ。


・デメリット


1.強くなった気になる

麻雀本を読んで一番の落とし穴はコレである。麻雀本を読んで強くなるのは確実だが、また同時に強くなった気になれるのも確実なのだ。
攻略本を一度読んでからゲームをすると一番大事なポイントは覚えているが他はあまり覚えていないなんてこと、結構あるのではないだろうか。
例えば、あの宝箱には何が入っていたとか、ボスの弱点は魔法だがじゃあボスはどんな技を使ってくるか、そういうことは一読しただけでは覚えていないことが多いものである。
麻雀本もまた然りで、印象に残っている部分は覚えているものの、自分が本の中で間違えた問題と答えはあまり覚えていなかったりするものだ。


2.完全に信用してしまう

「この本の作者は麻雀プロだし……」「この本はデータ本だし……」と崇拝し、本の内容を完全に信奉するのは辞めた方がいい。
例えば、後に紹介する『「統計学」のマージャン戦術』や『現代麻雀最新セオリー』といったデータ本には「カンチャンでも先制立直が局収支的には良い」ということが書いてあるのだが、個人的な体感としてカンチャン先制立直はそこまで強くないことが多い。むしろカンチャンで先制立直した後の、打点充分追いかけ両面立直での押し返しに負けることの方が多いのだ。

元Mリーガの朝倉プロのツイートを引用させてもらうが

と仰っており、いくら何万局を集めたデータと言えど時代背景や大局観の違いにより打っていて感覚的な矛盾が生じることもある。
また、これも後に紹介する『魔人の読み』では "字牌を一枚抱えて手組をする" ことの重要性が初っ端から大々的に書かれているのだが、私は著者の渋川プロの直近の動画を見て目を丸くしたものだ。

この動画で渋川プロは「字牌を残すな」という旨を言い放っている。これは明らかに自分の読んでいた『魔人の読み』の内容と異なっているのだ。
無論自分が読書していた時の印象が誇張されていてそうなっていたのもあるだろうし、時代やその時の手牌状況に応じて残すか残さないかは変わってくるものだが、これからどうすればいいか後先分からず麻雀戦術書に頼っている以上、誤解や自らの作為があってもそうやって一つでも縋れるものに完全に縋りたくなってしまうものなのだ。いわば麻雀本で新たな見識を必要としている状態は、母親のお乳に頼りきりの赤ん坊と同じ状態なのだ。


3.打牌選択が狂う

麻雀本を読み終えていざ学んだことを実践すると、放銃率ラス率が増えて調子がおかしくなってしまうことが実際の体感として多々あった。
これは成長痛のようなもので、自分の雀風と学んだものが調和している最中なのだから仕方ないことだろう。
しかし、この不調による精神的ダメージと向き合うことは如何せんしんどいものがある。


・解決策


1.強くなった気になる→何周も読み返す、そしてアウトプット

"強くなった気になる" から実際に "強くなる"には、やはり繰り返し読み返しで知識の抜けを克服していくことが重要になってくる。いわば理屈をしっかり復習し、より理解し直すことで記憶を拡張していくのである。
例えば、学校のテストで満点に近い点数をとるにはどうしたらいいか。この問いの答えは簡単で、教科書の内容を何度も読み返し丸暗記してしまえばいいのである。かの三島由紀夫も語彙を身に付ける方法に「辞書にある言葉を丸呑みしてしまえばいい」と言い放った。
無論そこまで極端なことをする必要もないが、麻雀が強くなりたくて麻雀本を読もうとしている、その興味と向上心さえあれば、学校の好きでもない退屈な授業を受けるのと違って、集中して内容に取り組むことができるだろう。そうすると自然と理解がしやすくなって理論の定着も早くなる。
誰しも自分の興味のあることに関しては簡単に深くまで即座に記憶できるものだ。

また何度も全部読み返すのが怠惰で辛いなら、読んでいる最中に自分のあまり記憶できていない苦手な部分に付箋を貼って定期的にその部分だけを復習するのもいいだろう。

そして内容をインプットしたらアウトプットで、実際に麻雀を打ってみてその感覚を手に馴染ませていくことが重要だ。やはり記憶していても使わなければ宝の持ち腐れである。
あなたが今中学の漢字テストをすると、中学生のころと比べてどれほど正答率が落ちているだろうか。
いくら記憶をしても日々アウトプットをしていかなければ使わない記憶はどんどん抜け落ちていく。脳は使わない情報を断捨離していく習性がある。
宝を持ち腐れた上に宝を錆びさせるのは勿体ないこの上ない。


2.完全に信用してしまう→あくまで理屈として消化する

目の前が真っ暗闇の状態では「プロが言っているから……」「データはこうだから……」と、その権威に妄信しやすくなってしまいがちだが、あくまで「○○という理由・理屈だから△△という理論が挙げられている」という風に一つの理屈として自分の中で咀嚼し嚥下することが大事になってくる。
そうすると実践の中で、 "それ" は選択肢の内の一つとして現れることになる。
完全に信用しきってしまうと "それ" しか選択肢に出てこなくなってしまう。

また実際にその理論通り打ってみて自分の感覚との相違を求めていくことも重要になってくる。
いくら理屈が正しけれど、やはり自分の雀風や時代、場所状況によって合う合わないといった適合性の問題が生じてくる。
しっかりと自分の中で使い分けを考えつつ、あくまで理屈として消化することが大切なのだ。


3.打牌選択が狂う→鬼打ち、そして休憩

感覚が理屈と適合するためにはやはりインプットしたものを何度も試行してアウトプットしていくことが重要になってくる。そして精神的に打つのがしんどくなってきたら無理をせずしっかり間をあけて休むことが大切だ。
また睡眠を摂ることで脳が自動的に、それは徐々に徐々に、感覚と理屈を調整整理してくれる。しっかり睡眠を摂ることも忘れずに。

私は『ドラゴンボールZ』のセル編にて休暇の大切さを悟空から学んだ。
地球の存亡を懸けた戦いが一週間後に行われるにも関わらず、一切の修行を辞めてのんびり一日一日を過ごすのだ。
気休めに『ドラゴンボールZ』を鑑賞してみるのも良いだろう。


ちなみに『ドラゴンボールZ』から学べることは何もない(麻雀で)。

地球存亡をかけた戦いが始まるというのに一週間前から修行をサボる孫親子
『ドラゴンボールZ/セル編』より


③麻雀戦術書の紹介


さて、ついにここから筆者が今までに読んだ麻雀戦術書の総評を挙げさせてもらうことにする。
各書籍は番号順に並べているが、この番号順はなるべく書かれている本のテーマごとに分類して並べたつもりだ。

以下、総評を見やすくするため、いくつかの項目を設けさせてもらった。
最初は抽象的に、<テーマ>では主として扱われている主題を、<おすすめ度/密度/難易度/学べる度>にて☆で十段階評価をつけることにした。
次に具体的に、<内容/良い点/難点/個人的感想/どういう人におすすめか>を述べさせてもらった。
この辺りは言葉では説明しづらいため、各書籍の項に飛んで実際に見てもらうとわかりやすいと思う。

注意点として、ここに描かれている内容は "あくまでも" 筆者の主観によるものなので、必ずしも正しいとは限らず最終的にその真贋の有無は自らの目で確かめていただくことをお願いしたい。
本記事の目的は書籍や著者を貶めることではなく、麻雀戦術書選びの参考に使っていただけることにあるので誤解無きようご理解いただきたい。


1.『ウザク式麻雀学習 牌効率 /G・ウザク 著』

テーマ:牌効率
おすすめ度:☆8
密度 :☆9
難易度:☆8
学べる度:☆10


内容
[ブロック/ヘッド/ターツ/複合形]といった牌効率の基本的な形を網羅しており、牌効率に対して密度が濃く描かれている。特にそれは例題問題の牌姿に表れており、 "少しの差異で切る牌がどう違うか" "何故それを切るのか" についての説明が為されている。
また本書の2/3ほどは牌効率の内容となっているが、残り1/3では牌効率に付随して[待ちの探し方と数え方][鳴き効率]が記載されている。

良い点
・prime会員なら無料で読める
・牌効率に関する本はこれ一冊で事足りる
・牌効率本全般に言えることだが学ぶと短期ですぐ結果がついてくる

難点
・説明がかなり省略されている
この本を難しく感じる理由にも直結しているが、少しの差異や何故それを切るのかについて多少の説明はあるものの、具体的な説明理由が省かれていることが多く、解説が投げやりにも受け入れ枚数しか載っていないことが多い。
その辺りを考え想像できる雀力があればいいが、牌効率を初めて学ぶ人にとっては読むだけでもかなりハードルの高い作業になってくる。

個人的感想
牌効率についてかなり密度が濃く書いてあるので、この本を何周も読み返すだけで何を切ればいいか、切った後の牌姿がどういった形になるのか、受け入れ牌が何かというイメージが自然と湧くようになってくる。
初めて読んだ時は何故それを切るのか何も理解できず難しく感じる状態で、説明を読んでなんとか理解できるものは理解して、理解できないものは流し読みして根気強く読んでいった。
一周読み終えただけでも基本的な牌効率の考え方が身についており、牌効率の思考で早めに聴牌することができるようになった。
現在この本を3周しているが、まだまだこの本の内容の完全な理解には追い付かない状態である。

どういう人におすすめか
牌効率を詳しく知りたい人
・牌効率を初めて学ぶ人
(できれば【牌効率を詳しく知りたい人>牌効率を初めて学ぶ人】とした方が適切だろう)


2.『スーパーデジタル麻雀 /小林剛 著』

テーマ:全般と思考
おすすめ度:☆2
密度 :☆1
難易度:☆1
学べる度:☆4


内容
[手順/麻雀はどういうゲームか/副露/立直/読み/迷彩/順位点/フリテン]といった麻雀技術の基本に当たる部分をわかりやすく平易な文章で展開している。
またしっかりと現代麻雀のデジタル的な観点から理屈を説明してくれており、現代麻雀がどういう方針で手組を思考しているのかが描かれている。

良い点
・わかりやすい
全般的に広く浅く書かれているので、麻雀戦術にはどういう技術があるのかがポイントポイントでわかりやすい。

・小林プロの考え方がわかる
所々に小林プロおすすめの打牌や思考が載っており、小林プロがどういう指針で打っているかが学べる。

難点
・内容はそこまで深くない
全般的に広く浅く書かれているので、もっと専門的な知識や思考、データを知りたい人にはどうにも物足りない。

個人的感想
知り合いに借りた本。
麻雀のルールを覚えてこれから何をすればいいかわからない人や、そこまで深く麻雀を勉強しようと思っていない人向けの本。
デジタル的な観点から現代麻雀の全般的な基礎をわかりやすく平易な文章で教えてくれる。またその中には小林プロ自身の考え方も入り混じっており、小林プロの麻雀思考を知りたい人にとっても有意義な内容になっている。

どういう人におすすめか
麻雀を学ぼうとしている人
・小林プロの思考を学びたい人


3.『 読むだけで上級者!麻雀が強くなる即戦力講義/ ゆうせー 著』

テーマ:手組
おすすめ度:☆3
密度 :☆6
難易度:☆3
学べる度:☆7


内容
全体的に手組の見方・考え方・捌き方について書かれている。
また麻雀AIのNAGAを使いながら手牌進行中によくある疑問の浮かびやすいブロック(1335など)の捌き方や、その中でどれを切るのが期待値的に得なのかを提示してくれている。主にブロックの話が展開されている。

良い点
・迷いやすいブロックで何を切るのが得かわかる
迷いやすく疑問に思いやすいブロックに対してNAGAを使いながらデジタルな値を出してくれている。

・解説が満足
言葉での理屈や理論解説が主だっていて、データが補足的に差し込まれているのでデータだけをインプットする読み方に陥りにくく、理論として納得のいくわかりやすい説明がされている。

難点
・細かすぎて冗長に感じる
内容として全体的に、一つのブロックのどれを切るかという細かい話の連続なので読んでいて飽きが襲ってくる。

個人的感想
Amazonなどで評価が高いので購入し読んでみたが、個人的にはそこまで得られるものがなかった。というのも迷いやすく疑問に思いやすい形、例えば1335でどれを切るかという牌姿問題に対して、感覚的にどれを切ればいいのか、何故それを切るのかを自分は理解しており、この本によってその理解がデジタル的に裏付けされたに過ぎないからである。
またその迷いやすく疑問に思いやすい形は、実戦で打っていてよく出てくる形でもあるので、その形に慣れている方が何か新しいものを得ようと読んでもそこまで有意義なモノにはなりにくい。
とはいえ手組の仕方、考え方がまだまだわからない方にとってはかなり満足のいく内容になっていると思う。

どういう人におすすめか
細かいターツの話を詳しく知りたい人


4.『現代麻雀押し引きの教科書/ 福地誠 著』

テーマ:押し引き
おすすめ度:☆9
密度 :☆7
難易度:☆3
学べる度:☆9


内容
第一章から第四章まで全て押し引きが取り扱われている。
構成としては1ページごとに問題の牌姿があって、次ページに解答とセオリーが簡潔にまとめられて載っている。また章の末尾には各問題に対して、村上淳プロとネマタ氏二人の回答と意見が載っており、一つの視点だけではなく多角的な視点で押し引きが学べるようになっている。
第一章では現代麻雀的な思考、いわばデジタルに基づいた基本的な押し引きを学ぶことができ、第二章第三章では第一章から少し難易度が跳ね上がってより実践的な押し引きを学ぶことができる。第四章では著者の福地誠氏が自身の実践譜を用いながら「この牌姿なら私はこう打ってきた」という押し引きについて学ぶことができる。

良い点
・数少ない押し引きの本
麻雀の押し引きについて書かれた本は非常に少なく、押し引きを学ぶ本といったらコレが定番となっており、一時期は絶版状態で最近再出版された人気本。

・押し引きの基礎が学べる
第一章はほとんどの麻雀強者がそう答える、一般的、デジタル的な押し引きが載っており、押し引きの基礎をしっかりと身に着けることができる。

・正解が一つだけではない
押し引きの是非は人によって感覚的に違ってくるものもあるので、それに対して一つの解答だけではなく、強者他2人の回答意見も記載されている。

難点
・もう一方の回答が見辛い
強者二人の各問題に対する回答意見が章の終わりごとに載っており、問題を解くごとに見るにはおおよそ100頁は渡らないと見ることができず不便。

個人的感想
麻雀で一番重要な技術は "押し引き" だと思うので、この本でその基礎を鍛えることが大切。
当たり前に正当できる部分は飛ばして、間違えた個所は付箋を貼ってたまに復習として履修するようにしている。
また不調やスランプ時に一番狂っていることが多いのが感覚に依る "押し引き" なので、この本を見返して基本からしっかりと自分の中の押し引きをチューニングし見直すことができる。

どういう人におすすめか
押し引きを一から学びたい人
・押し引きがわからない人


5.『麻雀・鉄押しの条件/ 平澤元気 著』

テーマ:押し引き
おすすめ度:☆6
密度 :☆5
難易度:☆5
学べる度:☆5


内容
全体的に内容は一貫しており、一つ一つの「押すか引くか」の局面図を元に天鳳位経験者の3人(独歩、かにマジン、しゅかつ)が対談調で、自分ならどうするかを根拠と共に言いあいつつ、そのまとめを平澤氏がnisi氏のデータを用いながら結論付けている。

良い点
・答えは一つじゃない
まとめの部分に「押すか引くか」のデータ的な基準は提示されているものの、対談調で3人各々の「押すか引くか」が述べられており一概に答えを同定していないことが多い。そのため自分の雀風にあった選択を思考する余地がある。

・ルールごとの押し引きが学べる
「収支戦」や「ラス回避」ならどうするかという思考も載っており、ルールごとに押すべきか引くべきかを学ぶことができる。

難点
・人によっては読んでいて退屈になる
あるルールにおいて感覚的に理解できている押し引きを、ただただ言語でなぞって展開していくだけなので、例えば雀魂でラス回避ルールに慣れている聖以上の打ち手にとっては当然のことをおしなべて説かれているだけなので怠惰になりやすい。

個人的感想
自分は読んでいて退屈だったし、ずっと眠いだけだった。
難点に書いた通り押し引きをしっかりマスターしている人間にとっては当然のことを当然のように広げられているだけなのでこれといって得るものがほとんどない。
逆にラス回避ルールの基準が曖昧になりがちだったり、ラス回避ルールなら押し引きをどう考えていけばいいか迷っている人にとってはかなりおすすめの内容となっている。

どういう人におすすめか
ルールごとの押し引きが分かっていない人
・押し引きを理解したつもりではあるがまだ曖昧な部分が多い人
(押し引きを一から学ぶ人にはおすすめできない)


6.『「統計学」のマージャン戦術/ みーにん 著』

テーマ:データ
おすすめ度:☆10
密度 :☆8
難易度:☆5
学べる度:☆2


内容
[先制立直/押し引き/ベタオリと当たり牌]の三章からなり、天鳳100万試合の牌譜を用いてそれぞれの局収支を詳細にグラフ化しデータとしてまとめてある。
[先制立直]では、カンチャン立直やドラを含むカンチャン立直、聴牌外しなど、そういった差異による局収支の違いが載っている。
[押し引き]では、「押したほうが得か引いた方が得か」という選択を各場面ごとに局収支を使って違いを載せている。
[ベタオリと当たり牌]では、例えば他家に立直をかけられたとき、各牌はどれほど当たるのか、また壁牌、スジと分岐して、どれだけ安全なのかをデータを使って確率を導き出している。

良い点
・局収支を使って指針を表してくれる
やはり天鳳100万試合のデータを使って求めた局収支なので、迷いやすい判断に対してデジタルで一つの解を正確に示してくれている。

・グラフやデータがかなり事細かい
1巡経つごとに局収支がどう変化するかがかなり細かく記載されており、これを全て頭に入れるだけで確実に強くなれる。

・しっかりと結論を書いてくれている
データ本だからと言ってただただデータだけが載っている訳ではなく、まずは結論から言い切って文章を始めてくれているので何が肝要なのかがわかりやすい。

難点
・ただただ読んでいて退屈
完全なデータ本なので難しいというよりかは、ページのほとんどに数字が羅列されていることが多く読んでいて退屈になってくる。

個人的感想
辞書を直接的に読書しているような感覚があり、一度軽く目を通した後は辞書的な使い方をするのが良さそう。
書いてあるデータと局収支全てを暗記するのはプロでも目指さない限りはかなりしんどい作業で、自戦の牌譜を振り返った時の「ここはどうしたらよかったのか」という判断の迷いがある時に、このデータ本の該当するところを振り返りながら眺めるのが一番効果的だと思われる。
あくまでこの局収支が正しいからと言って、それが特定の場面において必ずしも正解な訳ではなく "デジタル的に局収支では得" という観点から、一つの理論として接するようにしている。

どういう人におすすめか
・データ本が欲しい人
・デジタル的な麻雀を打ちたい人
・万人(辞書として)


7.『現代麻雀最新セオリー/ 雀ゴロK 著』

テーマ:データ
おすすめ度:☆8
密度 :☆5
難易度:☆3
学べる度:☆8


内容
[手組/待ち取り/鳴き/押し引き]の4章からなり、どの章も雀ゴロK氏が疑問をもった牌姿を挙げ、それに麻雀研究家nisi氏のシミュレーションデータを用いながら局収支を出し、デジタル的に何故こうなるのか理由を導き、一つのセオリーとして指針を簡潔にまとめてくれている。

良い点
・読み易い
データ本だがデータがズラッと無機質に羅列されている訳ではなく、しっかり理由を示し文章をまとめた後にデータと理論のまとめを簡潔に出してくれているので読み物としてとても見やすい構成になっている。
また問題の答えは見えないように次のページに配置されているのも配慮に適っていてストレスが無い。

・目から鱗の内容が多い
麻雀強者である雀ゴロK氏が驚愕したデータと理論や、当人でさえ迷った牌姿が出てくるので、読んでいてこちらも驚嘆する内容が多く新鮮な気持ちで読み進められる。

難点
・単調でボリュームが無い
構成が "牌姿の問題があって次の2ページに簡潔な文章とデータのまとめがある" という内容の連続で、読み物としてすごく単調になり疲れやすい。
また単調であるが故にボリュームを感じにくくあっさり読み終わる。

個人的感想
一章で、 "完全一向聴はどの巡目から安牌を持つべきか" ということが局収支的に表されており、この辺りの情報は今まで読んだどの本にも載っておらず目から鱗であった。
データだけが載っているわけではなく、その局収支になった理由をしっかり推測して納得できるような理屈で書いてくれているので、自分の中に理論として落とし込みやすく記憶しやすい。
有意義な内容が多く大半は文章でまとめてあるので見易いが、やはりデータ本であることに変わりはないので、データを読む/覚える観点から読むと少々しんどいものがある。また単調なので早々に読み返す気が起きない。

どういう人におすすめか
・データ本を読みたいけど読むのが辛い人
・文字を読むのが辛い人
・データを駆使した実践的な思考を知りたい人


8.『麻雀IQ220の選択/ 勝又健志 著』

テーマ:思考
おすすめ度:☆1
密度 :☆6
難易度:☆6
学べる度:☆3


内容
勝又プロがMリーグの自戦譜を振り返りつつ、意見の分かれるような牌姿が問題に出され、解答として「なぜ勝又プロはこう打つのか」という回答がひたすら載っている。またその中で普段の麻雀にも通ずる重要なセオリーが一つ一つ書き抜かれている。

良い点
・勝又プロの打牌が学べる
勝又プロが何を思考しその打牌をしたのかが詳細に学べるようになっている。

難点
・あくまで勝又プロの思考
あくまで勝又プロならこう考えてこういう打牌をするという思考が学べる内容となっており、局収支的な正解や多角的な思考を学べるものではない。

個人的感想
「なぜ勝又プロはこう打つのか」が学べるだけで、一般的な麻雀に通じる、もしくはデジタル的な思考が学べるわけではない。あくまで「なぜ勝又プロはこう打つのか」について学べる内容となっている。
麻雀が単に強くなりたい人にはあまりおすすめはできないが、麻雀の一つの思考・見方を学びたい人には有意義な内容となっている。

どういう人におすすめか
・勝又プロの思考が知りたい人
・選択の視野を広げたい人
(どちらかというと【勝又プロの思考が知りたい人>>>>選択の視野を広げたい人】である)


9.『魔術の麻雀/ 園田賢 著』

テーマ:盤面思考の仕方
おすすめ度:☆8
密度 :☆8
難易度:☆3
学べる度:☆10


内容
麻雀というゲームがどういうゲームをしており、牌効率をどう捉えるかから、まず麻雀を打つに当たっての根本的な思考とアプローチが紹介されている。次に園田プロの魔術と呼ばれるような仕掛けや、様々な鳴きの効果を自戦譜を使って解説しつつ、和了する目的以外での鳴きのテクニックを教示してくれる。
最後にポイントと着順に対する考え方が載っており、全体的に麻雀の骨子を育む内容となっている。

良い点
・平易な文章で書かれている
内容自体は密度が濃く難しいものにも関わらず、おそらくどの層が読んでも理解しやすいように平易な文章と明快な理論で解説が為されており、打牌の意図がすんなりと理解できるようになっている。

・様々な鳴きのテクニックが知れる
和了する目的以外の鳴きの使い方が解説されており、麻雀というゲーム性の視野を広げることができる。できる技術の選択肢が増える。

・園田プロの麻雀の考え方が知れる
園田プロのよくいう期待値とは何か、園田プロが何を考えてその打牌をしているか、園田プロの麻雀に対する思考を学ぶことができる。

難点
・なし

個人的感想
麻雀というゲームに対する根本的な思考、哲学的な部分をもう一度考え直すことができた。
和了が目的ではない鳴きのテクニックは今まで読んできた他の麻雀本にも載っていなかったし非常に勉強になった。
なぜか二周目を読もうとは思わない。

どういう人におすすめか
・細かい鳴きのテクニックを知りたい人
・園田プロの打牌思考を知りたい人



10.『現代麻雀の神ワザ / 鳳南研究所 著』

テーマ:思考と手組
おすすめ度:☆7
密度 :☆8
難易度:☆6
学べる度:☆9


内容
天鳳を戦っている強者や天鳳位の牌譜・牌姿を元に彼らの放った巧妙でおもしろい一打を1ページから2ページにかけて解説していく。
第一章は[手組]、第二章は[仕掛け]、第三章は[押し引き]、第四章は[精密技術]という構成で、それぞれに基づいた一打一打を紹介している。

良い点
・天鳳強者の思考を知ることができる
各天鳳プレイヤーの牌効率からは一線を画す一打が紹介されており、どういう思考でその打牌が為されたかの詳細が述べられている。またそれによって対局観や思考の幅を広げることができる。

難点
・単純に読み辛い
局面と牌姿図の解説が、その図の載っている1ページ前や2ページ前から展開されていることが多々あり物理的な読みにくさがある。

・基本がわかっていないと理解し辛い
読者が基本的な牌効率や押し引き、読みを理解している前提で話が進められるので、そういった基本ができているか、ある程度麻雀に精通した実力が無いと内容が理解できず読むのに苦労する。

個人的感想
デジタルとは趣が違いアナログ的な部分に焦点が当てられ、その人の雀風や個性によっての一打一打と思考が説明されており、自分の対局観と思考の視野を広げることができる。
単純に牌効率や和了を目指した打ち方とは真逆の打牌が紹介されているため、麻雀の打牌には答えが無いことを改めて理解できた。
ただそれは牌効率と打牌の損得を理解した上での思考と選択なので、そういった思考さえあれば、たとえどんな奇怪で非効率な打牌でも許容しなければいけないことを学べる。それがマジョリティに拒絶されようとも。
mortal信者や「ここはこの一打しかない!」と固定観念が固まってしまっている人たち(雀魂でいうと主に雀聖)に是非とも読んでもらいたい一冊。

どういう人におすすめか
・雀聖や雀聖以上で伸び悩んでいる人
・mortal信者やデジタル論者


11.『 天鳳位の麻雀メカニズム/ お知らせ 著』

テーマ:全体的
おすすめ度:☆9
密度 :☆10
難易度:☆9
学べる度:☆10

内容
主に麻雀の基本となる[手組/ベタオリ/副露読み/点数状況判断]の4つから構成されている。
問題とポイント解説(本書では「システム」と呼ぶ)があってからより詳細な解答と理屈が展開される。

良い点
・情報量が多く読了後の満足感がある
差別化された数多の問題群とそれに対する理由説明が明晰的に載っており、何故その解答になるのかがはっきりと理解できる。また内容の一つ一つが全てそのような状態で進んでいくので、読了した後の満足感は半端ない。

・強者の打ち方考え方がわかる
著書のお知らせ氏(14代天鳳位)が何を考えているか、強者がどう志向して麻雀を打っていくのかを追体験することができ、この一冊で麻雀の考え方を刷新することができる。

難点
・問題と答えが離れていて読み辛い
1ページに問題が数問載っており、その解答と理由が数ページにわたり散らされているので問題と解答が再確認しづらい。

・密度が濃すぎて読むのに疲れる
大事なことがかなり詰め込まれており、一度読んで理解するには説明や理論が少々難しく、読んでいて疲弊してくる。

個人的感想
個人的にはこの本が読んでいて一番骨が折れたが、一番素晴らしい麻雀本だった。思考と情報量が横溢しているのもそうだが、この本一冊でまるまる一局の対局観を養うことができるのが非常に素晴らしい。
その他の内容も素晴らしいが特にテーマ1の[手組]の項は目から鱗で非常に勉強になり、自分の麻雀にかなりの影響を与えた。
どちらかと言えばデジタルというより著者の圧倒的鬼打ちの経験値に基づいた判断方法が載っており、強者のラス回避麻雀の思考を生感覚で味わうことができる。
この本の内容を丸々身に着けることができれば雀力はかなり上がっていることだろう。
現在二周目を終えたところ。

どういう人におすすめか
・麻雀が強くなりたい人
・麻雀の実力が停滞している人


12.『魔人の読み/ 渋川難波 著』

テーマ:全体的
おすすめ度:☆6
密度 :☆5
難易度:☆4
学べる度:☆3


内容
第一章では手組の仕方から点数状況のことまで多岐に渡って記載されており、第二章では鳴き読み山読みを、第三章では第一章第二章の実践編として問題と解答がズラッと載せられている。

良い点
・平易な文章とわかりやすい理屈
なぜその打牌をするのか、わかりやすい文章で理屈がしっかりと書かれており理解がしやすい。

難点
・なし

個人的感想
全般的に広く中々にしっかりと理屈が書かれていたが、思い返してみると書かれていた内容の記憶があまり無い。今読み返してみても魅力的な部分をあまり抜粋できない。故に<良い点>と<難点>が全然挙げられない状態である。
おそらく出版された当時は、経験値によるデジタルの先駆け的な立ち位置の本で、今の時代では書かれている内容が "データ" としてしっかりデジタル化され可視化、システム化されており、逆にアナログ的で目新しい情報が載っていなかったせいだと思われる。
かといってこの本が今の時代、他の麻雀戦術書と比べて無意義かと言われれば決してそういう訳でもなく、全般的に広く中々にしっかりと理屈が書かれているので、その中で自分の知らない情報と理屈は学ぶことができた。

どういう人におすすめか
・半荘の打ち方がいまいちわかっていない人
・大まかな対局観を掴みたい人


13.『世界最強麻雀AI Suphxの衝撃/ お知らせ 著』

テーマ:全体的・思考
おすすめ度:☆8
密度 :☆8
難易度:☆6
学べる度:☆9


内容
天鳳で十段に到達した麻雀AI・Suphxの打牌を、局面図を抜きとりつつ14代目天鳳位のお知らせ氏が解説するという内容になっている。
第一章では前提として麻雀AIのアルゴリズムが紹介されており、第二章~第四章では麻雀AI・Suphxの打牌を[押し引き][スリム化][手組]という項目ごとに取り扱っている。

良い点
・suphxの打ち筋を学ぶことができる
全体的にsuphxがどういう徴候をしており、どのような打牌を選びやすいのかといったsuphxの特徴や性質を掴むことができ、この本を読了した後にはsuphxを知った気になれる。

・ボリューム感がある
ページ見開きごとに異なる局面図と打牌理由が載っているため、多くの情報が取り込めて読み終わった後にはかなりの満足度が得られる。

難点
・suphxの打牌理由ではない
この本を読み進めるにつれ違和感が生じてくるのだが、この打牌理由を解説しているのはあくまでお知らせ氏の恣意が全てであり、suphxの打牌理由を説明している訳ではない。

・情報量が多い
お知らせ本の特徴としてよく挙がって来るが、情報量のつめこみが多い。
特に本著に至ってはページ見開きごとに異なる局面図と解説が詰め込まれていることもあり、十分に内容を咀嚼できるレベルの実力が無いと読んでいてかなりのエネルギーを消費することになってくる。また[まえがき]はかなりの情報量と文字が詰め込まれており骨を折ること間違いなし。

個人的感想
個人的には最初に[あとがき]から読むことをお勧めする。
というのも本著は「suphxの打牌理由」ではなく、あくまで「suphxの打牌をお知らせ氏が説明する」内容となっているため、suphx主体の内容を期待して読むと骨折り損になりやすい。
[あとがき]ではそのことについて本人が詳しく弁明しており、[あとがき]から読むとよりストレスなく読み進めることができるだろう。
本の感想としては、suphxがどのような打牌を選択し、またどのような傾向があるか特徴を掴むことができたし、人間の考え方とは全く違う思考で為された打牌選択なので、個人的にはかなり選択の視野を広める一端となった。ある程度基本的なことをマスターした後に読むことをお勧めする。

どういう人におすすめか
・麻雀の基本をある程度マスターした人
・suphxの打牌を勉強したい人


14.『 デジタルに読む麻雀/ 平澤元気 著』

テーマ:読み
おすすめ度:☆10
密度 :☆5
難易度:☆2
学べる度:☆10


内容
[危険牌とセオリー/待ち読み/山読み/副露読み/速度読み]と、安全度の考え方から麻雀の "読み" 全般に対する基本的なことが網羅的に書かれている。
各項目ごとにしっかりとわかりやすい解説が為された後、章末に選択問題が数問載っており学んだ内容を復習することができる。

良い点
・読みのことについて網羅的に書いてある
読み全般についてまるまる一冊扱った本はかなり珍しく、見易い教科書のようなわかりやすい解説が記載されている。

・問題と答えが見やすい
問題と解答の位置関係がしっかり読者に配慮されておりストレスなく読み進めることができる。

難点
・なし

個人的感想
おそらく今まで読んできた麻雀本の中で一番衝撃を受けた本。
読みの指南書、教科書と言っていいほど内容は簡潔にわかりやすくまとめられており、 "読み" の理論を基礎から学ぼうとする人にはもってこいの本。
自分は色々理屈建てて推測するのが好きなので "読み" との相性が非常に良く、この本を読んでいてとても面白かった。現在三周目を終えている。
ただしやはり相手も牌効率通り打ってこないと "読み" が通じにくく、この本で "読み" を学んだからと言ってすべての "読み" ができる訳でも理解できる訳でもないので、この本で基礎を学んだ後に実戦や牌譜検討で "読み" を拡張し馴らしていく必要がある。

どういう人におすすめか
・読みを一から学びたい人
・麻雀の読みの入門書を探している人


15.『 鳴き読みドリル/ 平澤元気 著 』

テーマ:手牌読み
おすすめ度:☆3
密度 :☆3
難易度:☆3
学べる度:☆6


内容
総合的な鳴き読みの問題集。基本的な読みから応用的な "読み" から実践的な "読み" までの問題が載っている。
著者の前著『麻雀鳴き読みの極意』で教科書的な解説が為されており、本書はその問題集的な立ち位置となっている(おそらく『デジタルに読む麻雀』も似た立ち位置)。
見開き左1ページに牌姿と問題が載っており、隣のページに解答と理屈が記されている。

良い点
・前著を読まなくても十分に内容を理解し学べる
前著の『麻雀鳴き読みの極意』(あるいは『デジタルに読む麻雀』)を読み、理屈を学んでから問題を解かなくても、問題を解きつつ解説をしっかり読むことで実質的にはそれを読んだ時と同じような理解が得られるようになっている。

難点
・問題集である必要性
問題集でわざわざ問題を解いて内容を覚えるよりも『麻雀鳴き読みの極意』または『デジタルに読む麻雀』を一冊読めば事足りるので、脳トレとして問題を解きたい人向けの内容となっている。

個人的感想
本書で記載されている "読み" を、実戦で使うために眼を馴らす目的でこの問題集を使うのならあまりおすすめはできない。というのも個人的な体感だが、こういう本で学ぶ "読み" の問題はちゃんとセオリー通りの牌姿をしており理論的に「何故それが危険牌か」は理解できるのだけれど、実践での "読み" はそう簡単なものではなく、河や自分の手牌などあらゆる情報を立体的に考え、なおかつそれらにタスクを削いでいるので、考える余裕をあまり持てず学んだ "読み" を活かせる場面はかなり少ない。
それよりは『麻雀鳴き読みの極意』あるいは『デジタルに読む麻雀』でしっかり理屈を学んで、実際に牌譜検討をしながら該当する場面を見て行くほうがより効率的に "読み" の技術が定着してくると思う。
自分は本書の間違えた問題にだけ付箋を貼って(間違えるということは理論が定着していないという事なので)たまに確認できるようにしている。

どういう人におすすめか
・読みを一から学びたい人
・実践的な読みの思考を練習したい人
・問題を解いたり考えたりするのが好きな人


16.『麻雀「読み」の神髄/ 村上淳 著』

テーマ:読み
おすすめ度:☆4
密度 :☆10
難易度:☆9
学べる度:☆8


内容
[手牌読み/待ち読み/速度読み]について、村上プロが自身の自戦譜を元に、「何を切るか」問題形式でとある牌姿と一場面を提示する。
その後は対談形式で「何故それを切るのか」「何故そう読むのか」を説明していき、それに対する対話相手の反証や疑問にしっかり理屈付いた回答をしていく構成になっている。

良い点
・より踏み込んだ "読み" を知れる
問題で提示されるのは、全て村上プロ自身の自戦譜で、さらに当人がその状況でどう考えていたかや、応用的で実践的な "読み" を追体験して学ぶことができる。

・対談形式なので読み易い
対談形式なので晦渋な文章や、説明を過度に省略した理屈などが無く、基本的な "読み" の話を理解しているならかなり読み易い内容となっている。

・非常に見やすい構図と構成
重要な転換点を迎えるごとに局面図が挟まれており、またツモ切手出しの情報が丁寧に載せられているため、 "読み" のその後の思考とまた村上プロが都度どう考えていたかを知ることができる。

難点
・読みの基礎ができていないと内容がかなり難しい
対談形式なのであくまで言っていることはわかっても、麻雀プロの目線からの "読み" が載っているので、そもそもの基礎ができていないと話の本質的な部分についていくことすら難しい。

・問題の答えが見える位置に載っている
問題の答えが問題からすぐ見える位置に配置されており、読者に問題を考える間隙を与えない。

個人的感想
『デジタルに読む麻雀』を読んでから本書に移ると、少し苦戦はするもののしっかりと理解しながら話の本筋についていくことができた。
基本的な "読み" を体得している方にとっては、実戦的で応用的な "読み" が披露されているこの本はかなりおすすめの内容となっている。
初見や、村上プロに関心がある、またはそこまで "読み" に興味が無い方がこの本を手に取ると、ひたすら難解で退屈極まりない時間となってしまうので、麻雀を深く知る目的でなければ手に取る必要は全くない。

どういう人におすすめか
・基本的な読みを理解している人
・より高度な読みを知りたい人
(内容がかなり難しいので村上プロのファンで買おうとしている方にはあまりおすすめできません)


17.『超メンゼン主義麻雀/ リツミサン 著』

テーマ:読み
おすすめ度:☆7
密度 :☆6
難易度:☆5
学べる度:☆5


内容
副露率2割の門前派雀士で天鳳配信者として有名なリツミサンが、門前派の思考がどういうものかを解剖する内容となっている。
第1章では[メンゼン派の思考とはどのようなものか]がテーマとして扱われ、ページごとに局面図が載っており、どういう手牌では鳴くか、どういう手牌では門前進行なのかが語られる。
第2章では[読み]がテーマとして扱われ、また同じく局面図に合わせてどう読んでいくかという思考が展開されている。
第3章では[ミスとの向き合い方]がテーマとして扱われ、麻雀本では珍しくどう麻雀に取り組んでいけば強くなるかなどの精神面の部分について触れている。
第四章では[押し引き]がテーマとして扱われ、他家の手と打点を読んだ上で押し引きをどう立ち回るかが描かれている。

良い点
・実践的な読みを学ぶことができる
この本の80%ほどは読みについて取り扱われており、単純な手牌と山の読みから、ある点数状況下での読みを使った押し引きまで、幅広く実践的な読みの使い方を学ぶことができる。

・ミスとの向き合い方についての記述がある
麻雀本では珍しく自身のミスとの向き合い方や改善方法が載っており、精神面のアプローチまでの助言がある。

難点
・門前派の思考はそこまで学べない
第一章で門前派の「鳴く/鳴かない」の局面図が紹介されているが、 "何故鳴かないのか" はそこまで深く書いておらず門前派の思考を学べるとは言い難い。また全体の20%ほどしか記述がないのが残念。

個人的感想
全体的に語り口調で投げかけてくるような記述形式をとっており、局面図の打牌の回答に対しては絶対的な正解じゃないと曖昧に濁す部分が多かった。
この段階で麻雀をある程度熟練した人じゃないと学べることは多くなく、また熟練した人にとっては視野の広まる内容となっている。
リツミサン自身、[まえがき]にてこの本のコンセプトをそう公言しているので局面図の回答を見て悩んで格闘できるような、雀魂でいうと豪や聖以上でないと読む必要のない本だと思う。
また個人的には読みと点数状況、押し引きをかけ合わせて考える部分が新鮮で、実践で活かせる生々しい感覚を育むことができた。
読みだけを学んだ人には「読みはこういう風な感じでも使うことができるのか」というような視野の広まる内容になっていると思う。

どういう人におすすめか
・基本的な読みを理解している人
・もう一歩踏み込んだ読みを使いたい人
(門前派の思考を学びたい方にはおすすめできません)


18.『天才雀士3人に麻雀のことを聞いたらバカ勝ちできた。/ 朝倉康心 著』

テーマ:主戦場ごとの違い
おすすめ度:☆2
密度 :☆3
難易度:☆1
学べる度:☆7


内容
ネット麻雀/リアル麻雀/競技麻雀に精通する朝倉プロがその道の猛者(天鳳位 就活生氏/雀ゴロ 青柳氏/最強位 鈴木たろう氏)達と判断が別れやすい問題に対して、対談形式で、各主戦場ならどういった判断を下すかが論理的に展開されている。

良い点
・要点がまとめられており、かつ読み易い
対談形式で進んでいくので何を言っているかがわかりやすく、最後には要点がまとめられているので大事部部分が把握しやすい。

・各形式ごとの違いが相対的に知れる
テーマの章末ごとに各形式での判断の違いとその結論、理由が載っているので、ネット麻雀/リアル麻雀/競技麻雀の違いが相対的に理解しやすい。

難点
・理論を説くような内容ではない
主にネット麻雀/リアル麻雀/競技麻雀の考え方の違いを描くことがこの本の核となっており、麻雀の理論や技術、戦法を知りたい方にとってはかなり物足りない内容になっている。

個人的感想
知り合いに借りた本。
例えば競技麻雀ではよく安牌を一枚抱えた状態で手組をするのだが、この本を読むことで、何故牌効率上は非効率なのに安牌を一枚抱えた状態で進行していくのかが明瞭になってくる。
各戦場の強者の生の思考が垣間見えるので、各形式での麻雀の指向性打ち方を構築する参考書になる。ネット麻雀とリアル麻雀の双方を打つ人間にとってはかなり有意義な内容となっているだろう。

どういう人におすすめか
・各戦場ごとの戦い方を知りたい人


雀傑以上におすすめの本


金の間を勝ち抜くには、誰よりもいち早く聴牌する技術、より手組を理解する能力、基本的な押し引きの技術が必要になってくる。
この3冊を読んで基礎の鍛錬に励めば次第に実力が伴ってくるものだ。

1.『ウザク式麻雀学習 牌効率 /G・ウザク 著』
3.『 読むだけで上級者!麻雀が強くなる即戦力講義/ ゆうせー 著』
4.『現代麻雀押し引きの教科書/ 福地誠 著』


雀豪におすすめの本


玉の間を勝ち抜くには、よりデータに裏付けされたデジタル的な思考を身に着ける必要があり、また牌効率から外れた打点も考慮した手組、ベタオリの精度も上げていかなければならない。
辞書として『「統計学」のマージャン戦術』を手元に持っておくと役立つことが多いだろう。
また『 天鳳位の麻雀メカニズム/ お知らせ 著』は、難解ながらもこの一冊を読破するだけで、十分玉の間を勝てるだけの基本的な強者の技術を身に着けることができる。

6.『「統計学」のマージャン戦術/ みーにん 著』
11.『 天鳳位の麻雀メカニズム/ お知らせ 著』


④おわりに


以上が私の読了してきた麻雀戦術書達だ。

無論、私より多くの麻雀戦術書に触れたり、どれか一つの著書を目に針の穴を通すが如く愛読し周回している方々にとってはとてもチンケなものに思えるかもしれないが、極論そんな方々はどうでもよくて、麻雀戦術書との邂逅を求めている渇いた方々の喉を、砂漠に降る雨の様に少しでも潤すことができたなら幸いだ。
なんせ所詮は私の読書メモが原点にあるのだから、自己本位が人の役に立つほどおもしろいことはないだろう。

今後は『新 科学する麻雀』『麻雀勝ち組の鳴きテクニック』を読もうと思っているので、またそれらを読破してから総評を更新しようと思っている。
忘れて欲しくないが、これはそもそも私の読書メモから始まった書き物なので更新も勿論当たり前にしていく。
またこれを読んでくれた方の中から「この本は雀力におすすめだよ」というのがあれば魅力などを含めてご教授いただきたい。

そして私の拙劣であろう文章を、ここまで読んでくださった方々に感謝の意を表明する。



……と、締めの言葉を吐いた後で申し訳ないのだが、まだ私にとっては終わり足らず書き足らず、最後に "私が麻雀戦術書を他の麻雀学習媒体と比べてどう考えているか" を吐露させていただきたい。
麻雀戦術書が麻雀戦術動画や麻雀AIとどう違うのか、差異がわからない、差別化できていない方々に閲覧していただくと効果的であるように思う。



・麻雀戦術書と麻雀戦術動画の違い



麻雀動画の影響

昨今は麻雀プロのYoutube参入も増え、麻雀プロのネット麻雀配信やMリーガーの牌譜検討配信などを目にしたことのある人も多いだろう。
また神域リーグという、Vtuberと麻雀プロがチームを組んだ麻雀のリーグ戦がYoutube上で手軽に見られることもあり、盛り上がりを見せていることも記憶に新しい。
そして私たちはそういった配信や動画を見ることで、気軽にのんびりと麻雀の勉強をすることができるようになった。もはや麻雀プレイヤーたちの中で動画で麻雀の勉強をしたことが無い人はいないのではないかというほどに。
そこではその一局を打ったプロ自ら打牌の意図を説明してくれていたり、素晴らしい読みを披露してくれていたりすれば、麻雀のブロックや形、手組の何切る解説動画が出ていたり、実際にプロの手牌進行を見ることができたりもする。

今の時代、麻雀の勉強を一々書籍で行って多大な時間を浪費しなくても、スマホ一つあれば、だらりと寝っ転がりながらあるいは料理や洗い物をしながら気軽にYoutubeの麻雀動画を見るだけで麻雀の勉強ができる時代になった(それもたった5分足らずの動画で!)。
麻雀の勉強をするために一々本を買わなくても、スマホさえあれば無料で、しかも短時間で勉強できるのだ。
こうして色んなところでタイムパフォーマンス(いわゆるタイパ)を耳にする現代。

では一体麻雀戦術書の存在意義とは何なのだろうか。
どうして数時間もかけて知識を読まなければいけないのか。果たしてそんなことに意味はあるのだろうか。

そんな疑問に対して、それぞれにどういう利点と欠点があるかを比較しつつ、筆者がどういう態度で麻雀戦術書と麻雀戦術動画を差別化しそれぞれと向き合っているかを整理しまとめてみた。

今このnoteを読んでいるあなたは昨日も麻雀配信や動画を見ていたのではないか。あなたにとっても改めて麻雀戦術書と麻雀戦術動画の差異を再考するきっかけになってほしい。



麻雀戦術書と比べた時の麻雀戦術動画の利点



1.短時間で多くの知識を嗜むことができる

最も目に見えてわかる相違点としてまず挙げられるのが、それに費やす時間の違いだ。
麻雀戦術書を読破するには数時間の時間を要するが、麻雀戦術動画をみようとすれば30分にも満たない動画を見れば事足りる。
しかも動画の場合は隙間時間や暇な時間に限らず、気軽に別の作業をこなす際のお供にもなる。
わざわざ活字を見る労力を割くこともなく、目をつむって寝転んでさえいて耳だけ開けていれば、それは田舎の夜に鳴り響くカエルの合唱の様に、自然と耳に入りこんでくる。
食事の相棒にも、本であれば本を持つのに片手がふさがって行儀が悪くなってしまうが、動画であれば左手でご飯の入った御茶碗を抱えつつ右手に持った箸でホカホカの白飯を掻き込みながら学習することだってできてしまう。
動画というのは、このように本と違ってタイムパフォーマンスが非常に優れており、本に費やすお金さえなくても無料で見ることができてしまう。
まさにフードコートで飲める水の様に、我々の渇きをいとも簡単に潤してしまうのだ。

また動画であれば  "何切る" "牌譜検討" "技術" "昇段方法" など多くのコンテンツを広く渡り歩いて学ぶことができるので、短時間で一気に多くの知識と交わる機会を作れる。
麻雀戦術本ではどっさりとページが用意されており内容も濃く読むにも多大な時間と体力を消尽してしまうが、そういった動画であれば30分足らずで嗜めて、気軽に次から次の動画へと飛ぶことができる。



2.プロや強者の思考を生に学ぶことができる

さっきまで戦っていた姿をabemaTVで見せていた麻雀プロが、実際にそのリーグ戦が終わった直後にYoutubeで牌譜検討をしている、またYoutubeのおすすめに、その生配信や動画が並んでいるのを見かけたことは無いだろうか。
麻雀プロや天鳳位の麻雀強者が実際に雀魂で対戦している様子を配信で垂れ流している、なんていうのもよく目にするだろう。

麻雀戦術動画の一番の魅力はこういうところに表れているのだ。
つまり、「なぜこの打牌をしたのか」「どう読んでいたのか」といった、さっきまで戦っていたプロや強者の思考を "生" で垣間見ることができる。
さらにスパチャやコメントを送って知りたい部分や質問を投げかけることで、麻雀プロと我々何も知らない一麻雀アマチュア視聴者との垣根を越えた学びのやり取りを交わすこともできる。
これにより誰にも麻雀の悩みが聞けない人や、聞く人が居ない人にとっては、プロというライセンスの元信頼できる人に麻雀の悩みを尋ね、アドバイスや答えがもらえるのだ。
その様子はまるで現代版麻雀『論語』といったところか。

また幾人かの麻雀プロや麻雀強者自らが麻雀の講座動画をYoutube上で公開しており、しかもその内容を "無料" で好きなときに好きなだけ学ぶことができる。まさに高級食材のビュッフェやバイキングのようなものだ。

今の時代わざわざプロや強者が書いた麻雀戦術書に時間やお金を浪費しなくても、麻雀戦術動画さえ見ていれば学習方法として十分満足できるのだ。



麻雀戦術書と比べた時の麻雀戦術動画の欠点



1.タイムパフォーマンスが悪い

動画を見るよりも実際に文字を読んだ方がタイムパフォーマンスにとって良い可能性が高い。

というのも動画で話されている内容を耳で聞くより、動画で話されている内容を文章に起こして目で見た方が、幾文自分に合った速度で処理することができ、また目で読んだ方が耳で聞くよりも時間的に早く処理し終えることが可能だ。
加えて、動画に限らず配信の場合でも麻雀という本筋とは関係ない余談が挟まれていることが多く(麻雀戦術書でも多少の閑話休題はあるがその比ではない)、麻雀戦術だけを学ぼうとする人にとって実は無駄な時間が多い。

またここで「でも本より動画の方がタイムパフォーマンスが悪くてもかかる費用を鑑みればコストパフォーマンスはいいじゃないか」と憤懣を訴える方も多いかもしれない。
確かにタイムパフォーマンスを除けてコストパーフォーマンスの面で比較して見れば、本を買うよりかは動画を見る方がそれにかかる費用も抑えられるし何分気軽かもしれないが、ではここでApple設立者スティーブ・ジョブズの言葉を引用させてもらうことにする。

「水道からはいくらでもタダの水が出るけど、みんな金を出してミネラルウォーターを買っているじゃないか。」

これはジョブズがiPodやiTunesを手掛け「いざ音楽業界へ進出するぞ」という時に放った名言として知られている。
当時のネット上の音楽業界やミュージックストアでは、膨大な数の曲が違法にダウンロードされ、音楽業界にはいっさいの対価が支払われないという状況が蔓延っていた。
そんな時に荒廃したこの状況を一変させた文句がこの言葉なのだ。
実際にジョブズはストアの品揃えを一流にし、価格も使いやすさも備え、多くの音楽ファンが正当な対価を払って楽しむ状況を作り出した。

なにも麻雀戦術書がここまで素晴らしいものだというつもりも毛頭ないが、あなたたちは『いろはす』やジュースくらい対価をはたいて買ったことがあるだろうし、それに満足した経験もあるだろう。
やはり対価を払うということは、それなりの質がしっかり保証されているということに結び付くのだ。


2.内容を理解した気になる

<②麻雀戦術書を読むメリット/デメリット>の項で述懐した「強くなった気になる」とも似ているが、麻雀戦術動画は動画という性質上、惰性で見ることが多く、能動的ではなく受動的な態度で学習に臨むため、内容があまり頭に入っていないことが多い。
それは例えるなら学校の授業を受けているようなものだ。
教壇に立つ教師が話している内容をぼーっと聞いている状態に相違ない。
そのような受動的な態度では内容が頭に入ることも少なく、能動的に自らワークを解いて初めて学習した内容が身についてくるのである。

これが麻雀戦術書の場合であれば、明確に読書の意志を持ち、読む態勢に入って自分でページをめくり目を動かす。
そうした都合上読書というのは能動的な態度になりやすく、それはまるでワークを解いているかのように内容が頭に沁み込んでくる。
また文章を目で追うことによって、同時に脳が内容を処理し、その内容理屈を理解したものが頭に入ってくるので、内容の理解が長期的にも留まりやすいのだ。
故に麻雀戦術動画は一度見ただけでは頭に定着しにくく、麻雀戦術書の方が動画よりも頭に定着しやすい。
動画では内容を理解し記憶しているというよりかは、内容の大半を理解し記憶できた気になって満足してしまうのだ。鶏の様に三歩歩けば忘れてしまうという事実にも気づかずに。


まとめ


以上より下記2点が麻雀戦術動画を麻雀戦術書の使い分けとして挙げられる。

麻雀戦術動画を麻雀戦術書への糸口に

Youtubeでは麻雀の内容に触れようとするとき、 "何切る" "牌譜検討" "技術" "昇段方法" など多くのコンテンツを目にすることができる。
まずはそういったコンテンツから自分の興味のある、学びたい内容を動画で見聞きし広く接していくのが良いだろう。消費する時間も『ドラえもん』をまるまる一本見るに満たない短さでもって触れることができる。

そこから、もっと深い内容が知りたくなったり、もっと専門的な内容を知りたい学びたいと思ったときに初めて麻雀戦術本に触れるのが良さそうだ。
自分で検索して探すのはもちろんのこと、例えば<③麻雀戦術書の紹介>でテーマ別に紹介されている書籍を参考にするのもおすすめだ。

動画はやはり短時間の性質上内容が浅くなりやすく、また動画の特性上内容の理解がしたつもりになりがちで記憶に定着しづらいので、しっかり麻雀戦術本を読んでより深い知識と理屈で補強していく作業が大切だ。
それは動画で得た知識というハリボテから、建築専門書を読んで柱を立て床を敷き本格的な家を作っていく工程と似たようなものだ。


・配信/動画は応用知識として勉強する

麻雀プロや強者の配信/動画では「牌効率では〇〇がいいのに何故それを切ったのか」「どういう読みなのか」といった技術の思考、「手出しツモ切の覚え方」「ランクの上げ方」などの応用的実戦的な知識を学ぶのが良いだろう。

基本的な技術や知識は配信/動画で学べても、所詮短時間の内に結論を言うだけで内容が薄いので、そういった理屈や理論の深いところは本という情報量の多いものでしっかり学ぶことが適切だ。

そこで理屈や理論をしっかり基礎固めして、そこから疑問に思ったことや、基礎から離れて実践や応用で使えるより高度な技術を質問したり見聞きして学んでいく。
本で詳しく学べることを配信で質問しても、本で一層詳しく学べるし質問の回答で学んだ気になって終着してしまうのでそういった蒙昧に閉じ込められないようにしよう。

また繰り返し動画を見返したり、自分の衝撃を受けた部分スクショで撮っておいて復習したりするのが記憶の定着によい。



・麻雀戦術書と麻雀AIの違い


麻雀AIでの牌譜検討


最近は麻雀AIの興隆が盛んで、朝倉プロのお兄さんのゆうせー氏も麻雀AIのNAGAを活用したデータを参照に本を著述していたり、NAGAを用いたYoutube配信を展開していたりもする。
直近ではLuckyJという麻雀AIが天鳳十段位に到達しており、一時期はかなり話題になったものだ。
またTwitterでは有名どころのNAGAや、無料で使えるmortalといった麻雀AIでの牌譜検討により麻雀を勉強している方々を目にする機会も多くなった。

このように昨今の麻雀AIが我々に与える影響は日々肥大化しており、場所は変わるが将棋の世界でも将棋AIを使った研究を行っていないプロはもう存在しないほどで、麻雀界でも麻雀AIを使った勉強が当たり前になる日が音を立てて刻々と近づいてきている。

そんな渦中、では麻雀戦術書から学べることはまだあるのだろうか。
これからの勉強の一切を麻雀AIに取って変えてしまっていいのだろうか。

そんな疑問に対し今現在において、それぞれにどういう利点と欠点があるかを比較しつつ、筆者がどういう態度で麻雀戦術書と麻雀AIを差別化しそれぞれと向き合っているかを整理しまとめてみた。

麻雀戦術書と麻雀AIのどちらか一方だけを使っている方々や、麻雀戦術書と麻雀AIの差異がわからない方などは一考として必見していただきたい。


麻雀戦術書と比べた時の麻雀AIの利点



1.麻雀戦術書では序盤が勉強できない

麻雀戦術書には一巡目の序盤から手作りを教えてくれる、将棋で言う所の定跡書というものが存在せず(自分の見たところによると)、ある程度中盤や好形になるまでは自分で試行錯誤しながら手組の方法を模索していくしかない。
しかし麻雀AIでは一巡目の序盤の打牌から "何を切ればいいのか" を期待値と共に提示してくれ、序盤の手組方法から学ぶことができる。
序盤の早い段階で白と撥のどちらかを切る場合、麻雀AIは裏ドラ効率で打撥を推奨してくれるが、麻雀戦術書では序盤から何を切ればいいかを教えてくれることは無い。


2.逐一の打牌候補を知ることができる

麻雀戦術書からはある場面において通ずる構造的な法則を学ぶことができるが、麻雀AIではある場面に関わらずこういう場合には何を打牌すればいいか、その状況では何を切ればいいか、逐一の状況に応じた打牌を学ぶことができ、それも複数の打牌候補を交えて提示してくれる。

参考に以下の局面図を見てもらいたい。

まさかの親からダブル立直

この局面は親のダブル立直を受けて切る牌に悩んでいるところだ。
無論ここで放銃するわけにはいかないが、詰まるところ安牌が一つもない。

麻雀戦術書ではこういう場合には「単騎とシャンポンにしか当たることのない字牌を切る」という法則を学べるが、ではどの字牌を切るのがいいかは教えてくれない。
こういった微細な局面で真摯に耳を傾けてくれるのが麻雀AIの良いところなのだ。

以下が麻雀AImortalによる打牌候補になる。

mortalは裏ドラの乗りにくい中を推奨



3.自分の牌譜を添削することができる

これは麻雀戦術書が唯一と言っていいほどに扱えない敵わない麻雀AIの長所で、麻雀AIでは自分の打った一局をまるまる牌譜検討し、自分の打牌とAIの打牌を照らし合わせることができる。
そして自分の行った打牌より、一層高い期待値の打牌候補を学ぶことができる。つまり正着を知ることができる。

ではここで麻雀AIの打牌がどれほど正確で確実性があるのかを懐疑的に思った方もいるかもしれないので、最近私が拝見した以下のグラフを参考に見てもらうと良いだろう。

Mortalで見る雀魂のプレイヤーレベルまとめ』より参照


このグラフは麻雀AIのmortalを検証に使い作られたグラフなのだが、ランク別によるmortalとの打牌一致率に眼を通してもらいたい。
そう、相関関係としてmortalとの一致率が高くなればなるほど相対的にランクもどんどん上がってくるのだ。
無論統計データの少なさに問題はあるかもしれないが、 "自分の打牌とAIの打牌を照らし合わせる" 雀力向上の効果として、一つの参考に提示するには十分なグラフであろう。


麻雀戦術書と比べた時の麻雀AIの欠点


1.麻雀AIは知識を与えてくれない

麻雀AIは打牌候補として多くの選択肢と期待値を与えてくれるが、知識や技術を教えてくれることは少ない。

例えば、スジがより安全であること、壁牌がより安全であること、もっと高度な例を挙げるならばアシスト打牌や、ツモ番飛ばしの鳴きであったり、親連荘継続のための鳴かせ打牌であったり、そういった技術や知識をもたらしてくれることはあまりない。

もちろん打牌候補を学ぶことで切る牌の選択肢が広がり手組の視野が広がるのはいいことだが、逆に知識を疎かにすることで局全体のゲームメイクの伸展を考えることができなくなってしまう。



2.麻雀AIは法則を教えてくれない

麻雀戦術書では特定のブロックや形、ある所定の場面で「○○のときには△△」や「○○でないときには□□」のように構造的に法則を、また例外や反証を挙げて理論と理屈を説明してくれるが、麻雀AIはそこまで丁寧なものでなく打牌候補をひたすら列挙するだけで、法則を学ぼうとするにそう容易いものではない。
もちろん何十回と牌譜検討して学んでいけば "感覚的" な法則として身につけることはできるが、その理論を理屈として "論理的" に身につけていないために反証やささいな違いへの対処が覚束ないことが多い。

また理論として身についていればブレが起きても該当する著書を読み返したり、少しの休憩と反省で立て直せることが多いが、感覚的に身につけているとブレが起きた時の弾みは大きく調子が一気に崩れやすい。所謂スランプと呼ばれる現象が起きる。

なぜなら確固とした理論や法則として "論理的に" 自分の中で定着しておらず、それは例えるなら一本の紐のようで、千切れたときにどのように修復すれば元に戻るのか、また元に戻せるのかが分かっていない状態に陥ってるからである。

そこで麻雀戦術書は脳の中では紐の補強材として、物質的には見本教本として位置することができる。


3.麻雀AIは理屈を教えてくれない

麻雀AIは期待値と打牌候補を教えてくれるが、ではなぜその打牌がいいのかを教えてくれることは決してない。
打牌理由は自分の脳で補完しなければならないのだ。
もちろんこの作業が自分の麻雀を理詰めにしてくれて雀力向上の一端を担ってくれるのだが、その時の己の雀力と圧倒的に不足している打数の下では、絞り切っても答えが出ないことや、自分より強者から見ればその答えが誤謬であること、より正しい答えにたどり着けないことが多い。

例として以下の局面図を見て欲しい。
あなたなら何を切るだろうか。

Twitterで話題になった局面図

麻雀AIのmortalではここで打6萬が一番に推奨されている。

さて、ではなぜここで6萬を切るのだろうか。
なぜ10巡目にして聴牌速度優先で受け入れ枚数を最大に取れる打南ではないのだろうか。

この局面図は自分が見た時はかなり話題になっており、リプライや引用RTでその打牌理由を推測する声がそれなりに多かったように見受けられる。

しかし、誰一人として明確な打牌理由を答えられるものがおらず、また納得させるような回答に出くわすこともなかった。

ではなぜここで6萬を切るのが良いか、この解答は実に単純で "局収支的" に6萬を切った方がいいからである。

私はこの理論と理屈を事前に『現代麻雀最新セオリー』で学んでいた。
それも一番最初のページで取り扱われており、中盤での完全一向聴は6萬のような中頃の牌は先切りして安牌を抱えておいた方が自分の放銃率を下げながら和了率を上げることに繋がるからだ。
これは十万局と試行してデータを集計し局収支を求めた結果から導き出された理屈となっている。

以上はmortalの例だが、このように麻雀AIは打牌理由を考える、思考力を養う余地を与えてくれるものの決して私たちに理屈を与えてくれるわけではない。
しかし、麻雀戦術書では打牌に理屈が先じてその思考を習うことができる。自分では思いつかない新たな思考と論理を展望させてくれるのだ。


まとめ


以上より下記3点が麻雀戦術書と麻雀AIの差異として挙げられる。

・序盤の打牌勉強をするには麻雀戦術書よりも麻雀AIがもってこい

・麻雀戦術書では法則や定理を学べる
・麻雀AIからは打牌選択肢と期待値の、麻雀戦術書からは理屈と知識の幅を広げることができる

また麻雀AIの一番の強みはやはり牌譜検討をすることによる自分の雀力の向上なので、それを有効活用することが麻雀AIを使う時の大事なポイントとなってくる。
もちろん麻雀戦術書と麻雀AIではそれぞれ異なる役割があるので、それぞれの強みを活かし両立して麻雀の勉強に勤しむことが強くなる一番の近道には変わりない。
望むべくは麻雀AIで実践的な打牌選択を学ぶだけでなく麻雀戦術書でその打牌の理論的な部分を学ぶ、こういった相乗効果こそが目指すべき勉強法の理想なのだ。

無論これから先の未来、麻雀AIが麻雀戦術書の役割すらも担ってしまうことがあるかもしれない。
しかし、そういう時にこそ麻雀戦術書が自ずから進化する、要するに麻雀AIと明確に差別化された内容を孕んで刷新されることだろう。

そして今現在においては、それぞれを相対的に測ることで両方の良さと悪さに気づくことができ、そのどちらも相互補完をしながらうまく有効活用できる時代にある。
どちらか片一方だけを偏重することなく、うまく両方のいい部分を取り入れ勉強していくことが、この瞬間においてベストな見方でベストな勉強法なのだ。


*余談


麻雀AIは役満ロマンの夢を見るか

麻雀AIは役満なんて夢を見ない。
伝説効率とはよく言ったもので、麻雀AIにとって役満は出現率の低い、コスパの見合っていない役であり、それ相応の手牌と点数状況でなければ役満を目指すことはまずない。

例えばこの手牌の最終形を小四喜だと言ったら、いくらなんでも麻雀AIはブチ切れて全打牌を悪手と言い放つだろう。

しかし、現実は麻雀AIが思っていたよりも残酷で……。

小四喜を仕上げ、しかも和了さえしてしまうのだ。

これには麻雀AIすら台パンで自らサ終を迫らざるを得ない。

……というのは冗談だが、麻雀AIは人間にとってのロマンというのをまだ理解していない。そんなロマンは現実主義的に非効率と言って切り捨ててしまうだろう。
しかし、麻雀と言うのは畢竟確率のゲームでそんな不確定要素に左右されては何が起こるかは誰にも麻雀AIにも想像がつかない。
ロマンを追い求める態度と、確率というものは麻雀AIですら破壊してしまうほどの輝きを持っている。その眼前では麻雀AIの打牌選択なぞかえって悪手に臥せてしまう。

麻雀AIは役満ロマンの夢を見るか

これは麻雀AIの打牌選択が必ずしも全て正解であるとは限らない一つの好(抗)例なのだ。
時には最善の選択を裏切り、オカルトに身を委ねてしまうことが局面を大転換させることのきっかけにも成りうる。



2023/8/19 更新

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