太陽の娘

母は完璧だった
美しい顔を持っていた

私は手足が生えていて
バタバタと空気を煽った

母のようになりたかった

ある日
火の粉の欠片を盗んだ
それは神様になる覚悟

けれども

光は乱反射で私を焦がし
皮膚には灰が付き纏う

這い出た私は
撚り合う糸を
指先で受けとった

いつしか穏やかな歩みを覚え
棘を優しく撫でさする

それでも

止まりかけた心臓を
この足で蹴って目覚めさせ
一瞬で崩れる王冠を
何度も何度もこの手で掲げる

引き千切る、藻掻く、踏み締める、駆け出す、

手足 手足 手足手足手足手足手足手足手足
顔はない

だけどなお

いつかあの日に帰りたかった

火の粉は今も燃えている

不意に欠片に手を伸ばす
指先が触れた瞬間に
結び止めていた熱さではなく

暖かさが私を抱いた

その時はじめて振り返り
私は手足の向こう側に
色のない太陽を見た

新しい神様

母はいない

笑えない私の歓喜の歌を
私だけが聞いている











奥村万琵 舞踏 「朝日」より
イメージテキスト
映像URL https://youtu.be/sfRyF_wB9fU

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