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フレンチブルに轢き殺されたい

ズボンの裾を踏んで歩いていると路上のそこら中が部屋なんじゃないかと思い始める。雨に裾を濡らしたとしても。
夜勤が終わりそのまま、自分の中に籠ったまま、私は新幹線に乗りました。

始めれば始まるが、始めるための力がない。精神論で言えば、「それがお前の実力だ」と自分に突きつけた。
周りと比べず、何にも変えられない自分を生きたい。そんな気持ちが湧いて出て、失望と希望入り混じった気持ちで年相応を自覚する。

失望はいつもそばにいる。
いつのまにか人生のプラトニックは私の手で粉々にしてしまった。仕方ないからとズボンの裾を切り、この途方のない道をこの足で歩くと決断。
いつまでも部屋にいてはいけない。自分の歩幅に気づいて、ちょうどいい頃合いには出て行かなければいけない。
21歳を若いと思えば私はうさぎになってしまう。
というか、今、うさぎ。いや、獣である。
私の肩に噛みついた犬は皮膚にあざを残した。
弱い獣だ。弱肉強食の弱を常に生きている。
怠けるこの心を自覚して、私はいつも俯瞰なんてしていなかったんだと喉も張り裂けそうに叫んでいる。
でも泣かない。泣いてもどうにもならない。
何者になるつもりもないが、何かをしなければと思ってしまうのだ。この気持ちを否定する術もなく、またこのままを受け入れることにした。

手に汗を握った4時間ほどの移動。何をそんなに焦るのだと誰かに聞かれたら、私だってそう聞きたいと答えるだろう。
確立しないことは苦しいが、確立せずもがくことは美しい。
私の愛するもの全て綺麗とは言えないけど、すごく美しいと思ってる。もちろん私も美しい。

東京では店頭のメニューをみてひとりにやにやしている友達に会った。
好きなことが見つけられるってすごいことだよ?見つけらんないと深めらんないじゃん。寝て布団の中でそれが好きって言ってるわけじゃないんでしょ笑
それって進んでるってことだと思うよ。

よく聞く言葉も、この子が言うと的を得る。
気づいてないのか、別に気づいてもどうも思わないのか、後者な気がする。
友達よ、それって紛れもなく超能力かなんか別のものかでも特別なものだと思うんだよ私。

人間がコンパクトに完結しようとしている東京という町のぐずぐずはうまく消化できない。そこで足をつけて暮らすあなたよ、裸のままで生きてゆけ。とても気持ちのいい生き方するようになったね。できればもう少し丁寧に抱きしめたい。

東京から帰って来て、また何も言えず今日が終わる。笑われるように幕が閉じる。
でも確実に、少しだけ、私の根っこは向く先を変えている。
朝5時半漠然と轢かれてしまいたいと思うだけの心に、以前とは違う含みが生まれていることに私はちゃんと気づいている。
そうして今、コンクリートの地面を歩いている。

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