可愛い鳩

最近、鳩を可愛いと思うことがよくある。

通勤で駅に向かうまでの道のりで鳩をよく見かけるのだが、鳩は何か食べられるものは無いかと、自分の足元をキョロキョロ見回しながらいつも忙しそうに歩いている。出勤に急ぐ人が鳩のそばを通ると、鳩は一瞬歩く速度を上げて、さっと道を空けてくれる。(ただ警戒しているだけだろうが、その姿が可愛いと思う)

そんな警戒心の強い鳩がいる一方で、信号待ちをしている人込みの中をお構いなく縫って歩く鳩も見かける。車の通りが多い道路なのに、あえてギリギリ道路沿いを歩くような、そんな肝の据わった鳩もいる。

最近はあまり見かけないが、冬の寒い朝なんかだと首をすくめて、できるだけ体を小さく丸くしている鳩を見かけることもある。「君たちはそんなフォルムにもなれるのか、鳩も寒いのは苦手なのか」と何故だか親近感さえ覚える。街路樹が埋められている道路沿いの縁石に何羽かの鳩がみんな首をすくめて暖を取ろうとしている光景に出くわした時は思わず目が釘付けになった。それ以来、通勤途中に鳩を見ることが少し楽しみになっている。

通勤途中ではないが、この間は野良猫に恐る恐る近づこうと試みる3匹の鳩を散歩中に見かけた。鳩の目的は、恐らくその野良猫に与えられたであろうキャットフードだ。猫も近所の人から可愛がられて穏やかな性格だからなのか、鳩に対して警戒するでもなくただ無感情な表情でジーッと鳩を見つめているだけだった。3匹の鳩の間で「お前が先に行けよ」「いやお前が…」みたいな会話が交わされていたら面白いのになと思った。

人間社会が複雑なように、鳩社会にも色々あるのだろうと思うことがある。

私は鳩に詳しいわけでは全くないが、彼らはよくグループで行動しているような気がする。ある程度の距離を保ちながら一緒に歩く鳩たちを見かけることもあれば、どう見てもある1羽がもう1羽を執拗に追いかけ回しているだけのような光景にも遭遇する。

鳩の中にも、体が大きな子もいれば小さな子もいるようで、体が大きい方が小さい方を威嚇するように追い払って歩き回り、食料を奪おうとしている光景も見た。

今から仕事に行かないといけないのかと鬱屈とした気持ちで歩いていた私は、そんな光景を見て「お互い大変ですね」と心の中で思う。

またある時は、すでに街灯の上に何羽かの鳩がたたずんでいるところに後から別の鳩が合流してくる。その時に、それを嫌だと思ってか街灯から飛び立つ鳩もいれば、何も気にせずそのまま街灯に立ち止まり続ける鳩もいる。そんな光景を見ていると鳩にも性格があるのだろうと更に親しみを感じてしまう。

忙しく道端を歩き回っていたかと思えば、思い立ったら彼らはすぐにどこかへ飛んでいく。人が多くなってきたら、人間の手には届かない高い場所へ避難して、上から様子を伺うこともできる。正直、その能力がうらやましいなと思う。実際、カフェの2階席の窓際から外の待ち行く人たちを眺めるのは楽しいし、そんな感覚に似ているのかなあなんてことを思う。

もう少しすれば季節が変わる。暖かくなってきたら鳩は一体どんな姿を見せてくれるのか、ぜひ観察したい。

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