伝説或いは神話と化物の夜
月が今雲に隠れて、うっすらとした光が雲に残る。酷く寒い10月末の夜だ。チェ・ブラックの煙が宙に溶けて消えていくように溶けて消えた幾つもの思い出を、燃やしながら呼吸をして、呼吸を辞めない事がもう難しい所まで、俺は来た。雲が晴れ、月が全き姿を現して煌々と輝いている。闇の中の月。俺の汚い魂を星座にしてくれ。
「勇敢な彗星とは言いませんよね?」と奴が言った時、俺は「勇敢な彗星とは言うよ」と言った。今日、あいつは命を燃やして歌ったんだ。拳を握り締めていた。伝説に、神話になりたいんだ。あいつと伝説に、神話になりたいんだ。俺一人生きるなら、飯食って寝てクソしてたまにシコってそれでいいんだ。毎日人間のコスプレをして、ハロウィンだけ化け物に戻っても良かったんだ。背負った業と恩の為に、俺は化け物のままで世界一獲ったってノーベル賞なんか獲ったって、全然足りねえ。何も償う事は出来ないし、恩を返す事は出来ない。全然足りねえんだよ。こんなもんじゃない。こんなもんじゃない、こんなもんじゃない、こんなもんじゃない、こんなもんじゃねえ!!
文字通り血反吐吐きながら戦って来たよ。鬱になって、家族の涙や、クラスメイトの手紙や涙や、担任が責任取って剃った髪や、師匠の心の激痛を啜って生きて来たよ。発狂して頭おかしくなって、人の心を殺してまで仮初めの夢の中で夢遊病を演じて来たよ。
月が輝いている。暗夜を照らしている。幻覚で俺の時空が歪んだって、原子爆弾1万5000発炸裂したって滅びないものがある。あの瞬間俺は「戦いたいな」と言ったんだ。思えばいつ死んでもおかしくないんだ。それでも生きたいと思う理由があるんだよ。黎明を迎えた時に、黎明を迎えた時に、この月の光と星座は搔き消える。それで良いから、俺の汚れた命を、暗夜を照らす星座に、してくれよ。
written by 業 from 色狂(iRoKichiGai)