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大人になってからみえた魔女の宅急便の世界(前編)


もうすぐ3歳になる娘に魔女の宅急便のDVDを買いました。その日から我が家は「魔女宅無限再生」の世界へ突入します。
朝起きたら🧒🏻「キキみる」
朝食はさんでお着替えしたら🧒🏻「キキみる」
保育園から帰ってきたら🧒🏻「キキみる」
お風呂の前にちょっくら🧒🏻「キキみる」

こうして地獄の「キキみる」1日4セット×5日間が経過し流石に飽きると思いきや普通にみれる…何なら毎回違った発見がある。あれだけ幼少期から観てる作品なのに気づいていなかったことが多すぎて私は今まで何を観てたのかとさえ思い、noteに気づきをまとめたくなりました。

魔女宅の主人公キキは感情の起伏がある女の子です。さっきまでウキウキでお話ししてたのに急に素っ気ない態度を取る。私はなぜキキが急に不機嫌になるのか理解できないまま作品を観てきました。
しかしこの無限再生トレーニングによってキキが不機嫌な態度を取る理由が自分なりに見えてきました。

長年の謎だった「なぜキキはトンボと海に飛行船を見に行って急に機嫌を悪くしたのか」

子どものときはこれが本当に分からなかった。さっきまであんなに爆笑して、海を見ながらいい雰囲気でチルってたのに急に「私は行かない。仕事があるの。」突然帰る。どうしたどうしたトンボなんか言った?

しかしこの無限再生地獄の中で気づいた描写がありました。トンボのヤンキー(?)仲間が車で海岸に乗りつけてきた時です。キキはトンボがお友達の元へ駆け寄って行く時に「あること」に気づいて表情がサッと怪訝になります。

車に「あの子」が乗ってたんです。
そう!

「ずぶ濡れじゃない。あたしこのパイ嫌いなのよね。」

時を戻してこのパイを届けるくだり。キキはこの日、生まれて初めてパーティーに招待され、ドキドキしながら仕事をこなし青い屋根のおばあさんの家で薪で火を起こしてパイを焼いた。おばあさんが孫のパーティーのために作った自慢のお料理。オーブンの故障で諦めて欲しくなくて時間ギリギリまでお手伝いして慌てて飛び立った。温かいまま届けたくてきっと喜んでもらえると思って。そしてお届け先に到着、高級車が並ぶ豪邸から素敵なドレスの女の子が出てきてキキに言いました。

「ずぶ濡れじゃない」

もう泣くしかない。キキはこの服しか持ってない。修行中の魔女だから。帰り道、自分を迎えに来たトンボを見かけますが声をかけられない。
「ずぶ濡れじゃない」あいつの言葉がブッ刺さってしまったんです。それでキキはオソノさんに言います。「もういいの。こんななりじゃ行けないもの‥‥」

時を戻して再び海岸。
ヤン車(?)の助手席に座っている彼女が言います。「私あの子知ってる。お届け物やってる子よ。」
キキも気づいたはずです。おばあちゃんのパイが嫌いなあの子。ずぶ濡れじゃないと言ったあの子。私はあのときのパーティーに招かれてたのか。後ろに乗ってる子たちも街で見かけたことある。さっきはトンボに心を開くことができたけど私やっぱり「あの中」に入るのむりだわ。そして

「私は帰る。仕事があるの。」

そしてさらに感じたこと。子どものころは思わなかったけど、あの街の人たち基本的にお金持ちだと思います。
トンボのお家もパイ嫌いガールのお家も立派なお庭があってガレージとかあって。青い屋根のおばあさんなんて完全に人を使う立場のお方。なんかすごい肖像画飾ってあった。
そもそも飛行クラブ?鳥人間コンテストを有志でやってるなんてもう金持ちんとこの子じゃん。
トンボが夏休みの間に自転車をどーのと言ってたので学校はどうやらお休み。金持ちなのにバカンスでどこか行ってないってことはこの街自体がリゾート地?なんかパラソルの下で優雅にお茶してる人たちもいます。

キキのお家だって田舎だけど相当立派です。綺麗にお手入れされたお庭があってキキもお友達もドレス着てました。

こんな立派なお家のお嬢様が13歳で自活をするのです。魔女の決まりだから。毎日毎日まーいにちホットケーキだったらどうしようって心配しながら必死に生きてます。日本人ならついこないだまでランドセル背負ってるでしょうに。

ショーウィンドウに飾られた素敵な靴。よく見たら値下げ札が付いてました(地獄の無限再生の成果)
値下げされててもキキには手が出ない。お届け物のお客さんもなかなかつかないしパン屋のバイトしても部屋代と電話代と朝ごはんのみ。そもそもパン屋やりに来たんじゃない。
トンボたち「この街の同じ世代の子」とキキには圧倒的な経済格差がある。
だからキキは、大人にはとても感じよく対応できるのに同世代の子とはうまくやれないのかなと感じました。
比べちゃうよね、トンボのお仲間のギャル達と自分。

そして考えが巡ってしまう。魔女の家に生まれてなかったら私もあんな風に暮してるかな…ね、ジジ
🐈‍⬛「にゃー」

!!!!!!!魔法が弱くなってる!!!!!!
そして心も箒もバキバキに折れる

…お父さんが言ってた。うまくいかなかったら帰ってきていいんだよって

帰るのか田舎に。魔女の道を捨てて普通の人として生きて行くのか。いやまだ魔法が戻るかもしれない。もう少しパン屋にいさせてもらわなきゃここで終わりだ…
オソノさんにそんな辛い話をしているときに空に飛行船が現る。
トンボが飛行船から手を振ってる。自分より高いところから。トンボは飛行船に乗せてもらえるツテがあって運良く空を飛んでる。
一方キキは物心つかぬうちに飛ぶことを教えられて練習してきた。初めて飛んだ時のこと覚えてない、小さかったからってトンボに海で語っている。きっと何度も何度も実家の周りの木にブチ当たっては鈴を鳴らしご近所の皆さんから「まーたキキちゃん朝からチリンチリンやってるねぇ」なんて言われてたのかな。
旅立ちのとき「あの鈴の音も当分聞けないな」って言われてましたから。


キキは独り立ちした今でも両手でガチガチに箒掴んでないと飛べないくらいだから落ちたりぶつかったりめちゃくちゃケガもしてきたんだろな。
そんな血汗涙の日々と空を飛ぶという稀有な才能の誇りがバキバキに折れたんだよ。…あれ電話だ
「もしもし?トンボ!今日飛行船から手を振ったの見えたー??船長がね、キミに会いたいってー!!」
私に会いたいのは私が魔女で空を飛べるからでしょう。いま飛べないんです。魔法が消えちゃって普通の人なんです。これまでの努力とこれからの道が消えたんですって説明できるかよ。精一杯の返事が

「もう電話しないで」

そうだよね…トンボなにも悪くないけどキキの置かれてる境遇への想像力が皆無なんだわ。ボンボンだから仕方ないのか。


絶望のキキ、とにかくとばっちりのトンボ
そしてキキを癒すあのお姉さん登場の後編へ続きます

画像は「常識の範囲内でご自由にお使いください」
スタジオジブリ公式HPよりお借りしました

https://www.ghibli.jp/info/013409/

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