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「平造夫妻3」 仮面の忍者赤影(青影陽炎の両親の話) 二次小説 4029文字

 
寝静まった夜の山に、白く上がる湯気が見える


そこは、熊や山の動物達が入りに来る秘湯
地元の者も寄り付かない山の奥、男女が着物を脱ぐ音に、湯に入る音がする


「ここの湯は、やはりよいな。気持ちがいい。身体の疲れが取れる」


「帰りは寄れると、楽しみにしていましたから、嬉しいですわ。初夏に入る前の梅雨、連日寒くもありましたし」


「星灯りに、湯は良いのう」

湯は、白湯でゆったりした男女の声に、女がすいっと湯の中央に泳ぐように移動する、2人には十分に広い、広さ


「山奥ですから、誰も来ません。来ても、山賊か同業でしょう」と、ふふふと笑う


「ぬかるでないぞ、まあ、そんな心配はあるまいが」男の方は、岩を背に一息つき


「ホント、ゆっくりできます」

機嫌の良い静の声に、嬉しそうな平造
お役目終えての道中、身体がほぐれて、ゆったりする平造に、話かける静

「あともう少しで街に入ります。平造様、次の街で三人の女房とおねんねです。もう、お話しもついております」意気揚々と、切り出す静


「静よ。先程の村でも四人とだぞ。わしとしては、そんなにおなごとおねんねしたいとも思わぬ。わしは、静一人で十分ぞ」
んー、まあなぁと、この茶屋で団子でも食べような感で言う平造にあった
二人の会話は、ほのぼのとのんびりした調子であった。命乞いする相手を殺してきたと思えぬ程に


「なにを言われます、平造様。忍者と言うものは、人事を尽くすものでございます。その人事は、殿以外の方々にもお手伝いもするべきです。なぜ女房達が、村や町の男達と楽しまないのか、わかりますか?
うっかりおねんねして、亭主面されるのもいやですし、ややこができても困るのです
ちょっと気にいっただけで、慕いたい相手でもない男の子なぞ、欲しくないのですよ」


・・・まあ、それはそうだろうが、そうだよなぁの顔をする平造に、お気になさらずで続ける静


「いいですか?
もう一度言いますが、少し付き合った位で亭主面されるのは、願い下げなんです。そこを、お助けするのですよ、平造様は。また、ちゃんとお手当も頂きます。ただ働きしろとは言っていないのですよ、私は」最後をぴしっと言う静

普通、威張って言う事でないし、静に慣れている平造でも、えぇーと心の内で声を出していた


「しかしな静、毎回そう頑張らずともな。お役目の帰りによる村や街の女房達を、わしが相手にせずともじゃ。私は、静だけで十分なのじゃよ。わしは、静を大切に思うとる。静も、わしの事好きじゃろ」


「ええ、好きですからこそ私のお相手は、平造様お一人」


「ならば、わしの相手も静一人でよかろうかと」平造の心に、ピカッ、ゴロゴロゴロと雷鳴がなった


「平造様」
静は、すいっと平造の前に迄来た
白い湯の中、音もさせずに

「女房達は、もう子供は十分ですし、亭主面されるのがイヤなのです
平造様なら、そこはしっかりしておられます
私も平造様になら、女房達を安心してお任せができるのです。わかっておりますね、平造様
接して漏らさずですよ。いいですね」


言い合いにならないのは、平造のおかげなのか、静の物言いなのか、忍者として親方様からのどんなお役目もこなす事で得た物なのか?


           (一旦引いてみるか)
「まあ、それなら金子を貰わなくても良いのでは、女房達も生活がある。銭等払いたくもなかろうに」
(昔は、わしがイヤイヤすると静の影舞で女房達を抱かされた。まったく苦い思い出だ。わしも静に見られるのは遠慮願いたい、まあ若い時は面白さもあったが。みずから抱くようにはなったものの、なんとか静の影舞を解きたかったのもあって、無駄な挑戦をしたものよ。無惨惨敗連敗のまま、もう勝とうとも思わねーーーーーーよ

亭主面と言うのもわかるが、わしももう歳
せめて1人にしてもらえんかな。一人でいい。一人でいい。一人でいい。他のおなごと何回も何回も、何回も、そんな事はもういい!!)
平蔵の、静への不満であった
静に普通に言えばいいのであるが、連戦連敗敗北がなのか、言った事のない平造


「わしらは、十分に生活もできるし。わしを女房達にあてがうのは、女房達の相手を逃す事になろうぞ」


「わからない方ですね」きっと、平造を見る静

静の眼に、トクンと意中の人でも見たかのように胸が鳴る、平造

「それだったら!殿から偵察費、もっと引き出してください!半蔵様にお会いした時や殿に直接お会いになられた時、もっと偵察費を出してやろうと思えるような、派手な技、信頼や期待できるような技をご披露し、殿の心を鷲掴みにしてくださいな」

静の身体が湯に少し沈み、静の右の白い足が
平造の左肩をつく。湯が揺れ、静の冷たい目に(この冷たい目が堪らぬ。まるで唾棄すべき物を見るような、虫ケラを見るようなあの目、敵や仇なす者を虫ケラのように殺める時の静の目と同じ、心臓が早鐘を打つ平蔵)


「ねぇ、ねぇ」声の度に、平造の左肩を突く静

「お芝居して下さいな、ねぇ
ああでも、殿のお前にて赤影、青影空を飛んだそうですが(※1)、両名派手な技されたましたのに、変わらぬ偵察費の額。渋すぎ。ほんと、まったくだしやらぬ、殿は。おかげで、路銀の工面大変なのは、平蔵様もわかっておいででしょう。もう少し、あっても」


「殿は、百姓の出であるし。そこは、まあ渋いかもだが。道中の木の子や山菜、山の実が売れるではないか」

「命の危険を晒したお役目の後、少し位贅沢なお宿やご馳走を頂いたって、よろしいではないですか」

「わしに女房達をあてがうのは、違うのではないか」トクンとする気持ちはあれど、ゴロゴロ、ゴロゴロピカッと平造の内で鳴っていた


静は、平造の肩から足を元に戻し、にっこりと首を横に少し傾げ、天を仰いでいった


「嗚〜呼、いいですわね平造様は」


「えぇ?」
静の嫌味な目がトクントクンで堪らなくとも、声が出る平造


「殿のお前に出られまして、私には
その機会はありません。だから、わからない方と言ったんです」静は、少し平造の横に移動し平造の左肩に右足をかけた


「急に、なにを言う静?」と、頓狂な顔をする、平造。言われた事には驚くが、足癖の悪い静の行動には、さして気にならない


「平造様は殿方ですから、殿に呼ばれてお城に赴き、殿のお前でお役目の報告やお褒めの言葉も貰う事もあります
あの豪華な城の中に、堂々と入れるのです
私も忍び、城に忍び入る事は簡単ですが、堂々と城の中に入り、殿の前に姿を現し、報告も褒められる事もありません
どんなに、お役に立ちましても、私では殿に御目通りは、今後もないでしょう
平蔵様は男ですから、簡単な事でしょうけれど」肩にかけた右足をずらして膝裏を乗せる
静の左足の裏は湯の中で、平蔵の腹を押している


「平造様は殿の前に出られて、豪華な気分におなりでしょうけれど、私にはそんな機会もなく楽しみもなく、平造様や赤影、白影、他のお目通りした忍者達の報告聞くか、天井裏から見るしかありません

だからその変わりに、豪華なお宿で、たまには綺麗な着物でも着て、白拍子や芸妓に長けてる者達を呼び、豪華な気分に浸りたいのです
彼女達の身につけた芸をみたいのです

平蔵様には、贅沢のように思いでしょうけれど、でも、それは殿のお役に立てば、殿からのねぎらいの言葉や賞賛の言葉をかけられるからです」
そう言葉を切りじっと平造を見る、静


窮する、平造

「私には、それはありません」

んーって、顔をする平造

「だから、このような気持ちがわからないのです」

ンンーの顔の平造

「平造様は、私が男遊びされる事を望みます?」

「い、いや、それは望まぬなぁ」

平造から、やっと出た言葉であった


「第一、贅沢をしようにもたりませぬ
へそくりでは、とてもとても
殿が気前よく、探査の資金を出したくなるように、殿の前で派手な演技してください
別に、口上でもいいんです。ガマの油のような
楽しく、つい聞いてしまうような
もう少し余裕があってもと思います」


平造の胸には、静の尻がつきもう左膝は、平造の右肩に乗り、浮いている静の身体を、つい両腕で受け止めていた


「平造様は、殿からお褒めの言葉が頂け誇らしさもございましょう。能力も存分に褒めて頂いて、でも私は....。それを埋める分を豪華な食事や宿、遊びを代わりにと言ってるのです。私だって、殿のお前に出られるのでしたら、豪華なお宿や食事等とは言いまぬ。褒美も銭も

平造様、殿の御前に出られた時、こやつらにださんとイカンなと思われる術を、バンバンに殿の御前でご披露して頂きたいです。赤影、青影の飛ぶ姿見ても、変化無しでは、お難しいとは思いますが。でも、そう言う事をされないから、毎年里への報酬が同じなのではないでしょうか

いいですか、村や街の女房達も、お金出す事で安心できるんです。これっきりって。一石二鳥三鳥のお話なんです、これは」


両肩に乗った、静の足が自分に平造を寄せる
蟷螂の手のように動き、平造の頬に内腿が触れる


「そうじゃな、静はわしより能力があり、影舞も里一、次点のわしよりもはるかに技量のある忍び。静と一緒のお役目は、わしも安心できる
殿のお前に出られないのは、そうじゃな悲しいよな。本来なら、静が殿のもらう言葉をわしが頂いているようなものだ
今迄、その事に気が付かずに胡座をかいておったな。そうじゃな、わしは静に甘えておったののだな。その事に気づいても良さそうなのに、今迄なにも言う事なく、おってくれて」

一気に静かに口にした静。鬼が待ち構えているような顔を隠し、淡々とにこやかな顔の静(目が笑ってないけどね)に平造はそう言い、


「まあ、そうじゃな。えっと今度の街で三人。次の村で4人?」

静は平造から離れ、また脚で肩を突き、また膝裏を肩に乗せる。この時静は湯の岩場に背をつけ、岩場に腰掛け、肩の上に乗せていた足は、平造の頭の後ろでクロスさせ、平造の頭を自分に寄せてていた


「ええ、村には良い温泉がありますので旅路のの疲れも取れますわよ。羽根を伸ばして頂きとうございます、ねぇ、平造様」

end

※1
TV「仮面の忍者赤影」第一話 城の殿の前に赤影、青影姿を現し、任を受け城から飛ぶ赤影青影のシーンがあります


殿と半蔵の前に姿を現す赤影、青影達のシーンです


赤影参上
青影
青影参上
任を受け飛び出す青影


後を追う殿、半蔵
驚く殿
空飛ぶ赤影、青影


空飛ぶ親カッパ、子カッパを見てるようでした(笑)


https://note.com/preview/n1d473638b04d?prev_access_key=ac12bc40518f1054f093b725eb47f4bd


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